従業員が悩みなどを相談する代表的な相手に「上司」が挙げられます。「上司」の対応次第で問題が解決できることもあれば、それとは反対に何も解決せずに終わることも考えられます。だからこそ「上司」が最初にどのような対応するのかが、とても重要になります。今回は、部下から「介護の悩み」を打ち明けられた上司が、話を聞く上で大切にしたい3つのポイント(3箇条)を解説します。
上司が部下から「介護の悩み」を聞く上での “3箇条”とは。2025年4月「育児・介護休業法」が改正

その1:何よりも “部下への謝意・誠意” を伝える

部下にとってみれば「介護の悩み」を打ち明けるのは、とても勇気がいることです。会社にも迷惑を掛けてしまうのではないか……そのような思いを持って「介護の悩み」を部下が伝えたのであれば、まずは上司から謝意の言葉を伝えることが大切です。その謝意の言葉が、何よりも部下の気持ちを楽にさせます。

一方で「仕事が忙しすぎるから、介護ができない」など、部下が不満を表現する形で伝えることもあるかもしれません。そのような際にも、誠意を持って対応することが大切です。部下が上司へ不満などを伝えることはとても勇気がいることですが、その勇気が問題を解決する糸口にもつながっていくからです。

その2:キャッチボールを意識した “部下との確実なコミュニケーション” を実践する

例えば、部下に対して「介護休業をとっても、あなたのキャリアへの悪影響はありません」と伝えたとします。上司としてこのような言葉を伝えることは、とても大切なことです。

一方で部下の立場に立った時に「介護の悩み」は、さまざまなものが考えられます。例えば、次の(1)~(5)のようなそれぞれの悩みがあったとします。

(1)介護休業をとると、自らのキャリアへ悪影響を及ぼすのではないか。
(2)介護休業をとると、同僚の仕事が増えて迷惑を掛けてしまうのではないか。
(3)介護休業をとる必要はないが、介護の疲労感が残るので勤務時間を短縮したい。
(4)親を介護することになったが、介護保険についてどこへ相談したらよいかが分からない。
(5)介護をしているとストレスが溜まり、自らの気持ちが行き詰ってしまう。

部下の「介護の悩み」が具体的にどのようなことなのかを、上司は確実なコミュニケーションにより、把握することが大切です。

例えば「(1)介護休業をとると、自らのキャリアへ悪影響を及ぼすのではないか」であれば、上司が「介護休業をとっても、あなたのキャリアへの悪影響はありません」と伝えることで、会話のキャッチボールが生まれていきます。

一方で「(2)介護休業をとると、同僚の仕事が増えて迷惑を掛けてしまうのではないか」の場合に、上司が終始その部下のキャリアのことを話したら、部下はより一層罪悪感を抱くかもしれません。上司がボールを投げてばかりで、部下はボールを受けることもできなければ、投げることもできません。その場合には、上司はキャリアの話から切り替えて、部下が安心できるようなコミュニケーション(休業時の業務体制、心配をしてくれたことへの謝意など)をとることが大切です。

その3: “部下とともに伴走する” 意図の言動を表す

介護は、終わりが明確でないことに、その特徴があります。だからこそ、上司が “部下とともに伴走する” という意図の言動がとても大切になります。

先ほどの「(3)介護休業をとる必要はないが、介護の疲労感が残るので、勤務時間を短縮したい」であれば、短時間勤務制度などを勧めるとともに、上司が部下の体調を常に留意するといったことが必要です。

その他「(4)親を介護することになったが、介護保険についてどこへ相談したらよいか分からない」であれば、社内の相談窓口担当者へ伝える・地域包括支援センターの情報を伝えるなどとともに、その手続きのために日単位の介護休暇をとることなどを勧めた上で、その後の様子などを聞いてみることが考えられます。

また「(5)介護をしているとストレスが溜まり、自らの気持ちが行き詰ってしまう」であれば、すぐに何かの制度を紹介するよりも、まずは部下の辛い気持ちに共感できるように話を聴くことが必要かもしれません。その後に、部下へ寄り添い続ける関わりが大切になっていきます。

上司の発言例で出した「介護休業をとっても、あなたのキャリアへの悪影響はありません」も、部下とともに伴走する意図を表現したものです。特に「(1)介護休業をとると、自らのキャリアへ悪影響を及ぼすのではないか」の部下の悩みに伴走した言葉です。大切なことは “キャリア” など一つの概念だけに固執することなく、どのような “伴走の形” が良いのかを整理し、柔軟な対応を心掛けることでしょう。
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