会社として、「ハラスメントを許さない」という姿勢を示すことは必要です。しかし、従業員からすれば“ハラスメントをしないための明確な方法”があるわけではありません。特に、部下と向き合う機会が多い上司の方は、「ハラスメントの加害者となるリスク」と隣り合わせかもしれません。今回は、上司が部下の『サイン』に気づき、ハラスメントのリスクを最小限に留めるためのポイントをお伝えします。
ハラスメントの早期防止に必要な、「上司が部下の『サイン』を見逃さないためのポイント」とは

部下に「嫌だ」と言われたら、それはハラスメント改善の機会

上司の方は、部下から「〜と言われたことが嫌でした」、「〜をされたことで、やる気を失いました」などと言われた経験があるかもしれません。さらには、「それはハラスメントです!」とはっきりと言われることがある人もいるでしょう。上司も人間ですので、部下からそのように言われると、落ち込んだり、言い返したくなったりするものです。

しかし、肯定的に捉えれば、部下は上司をどこかで信頼しているからこそ、「嫌」と言えるのかもしれません。「嫌だと伝えれば、上司が改善してくれるのではないか」という希望がなければ、そのようなことは言わないでしょう。つまり、部下が上司に自らの『意思』を明確に伝えたのであれば、それは互いの信頼関係を深めていくための機会として肯定的に捉えることができるとも言えます。

部下が傷ついたり、やる気を失ったりした現実は、変えることができません。しかし、その現実を糧に“より良い未来”をつくることはできるのです。

「自分はハラスメントをするはずがない!」と考えている上司は要注意

しかし、部下は上司や周りの環境などに配慮することが多いため、部下自らが嫌なことの『意思』を明確に示すことは少ないかもしれません。部下の立場としては「嫌だということを察してください」という『サイン』を出すのが精一杯なことが多いでしょう。『サイン』は、部下が“上司に察してもらえるような表現”を遠回しにすることだけではありません。部下の表情・発言内容・声のトーン・仕事のパフォーマンスなどが普段とは何か違う、といった変化も含みます。

部下の『サイン』を早い段階で読み取れば、問題を早期に解決できますが、その『サイン』を見逃し続ければ、懲戒処分が必要な、さらには会社の経営に関わるようなハラスメントにまで発展することにもなりかねません。

それでは、どのようなタイプの上司が『サイン』を見逃すことになるのでしょうか。――それは、「自分はハラスメントをするはずがない!」という強い思いを持つ方かもしれません。

例えば、ハラスメントに関する法律や判例などを勉強し、十分に理解を深めたと自信を持っている方。また、「ハラスメントは絶対にしてはいけない」と過剰に警戒をしている方も、無意識にそのような思考になることが考えられます。そのような思考に陥ると、部下の『サイン』を見逃すことにつながるのです。

「自分はハラスメントをしているかもしれない」という思いが、部下のサインを見逃さない

生きてきた環境や時代なども違う中で、一人ひとりの価値観はそれぞれです。そのため、仕事を通じて互いがコミュニケーションを取れば、無意識に相手を傷つけてしまうことは誰にでも起こり得えます。ですから、むしろ「私は、相手を傷つけるようなことは一切言いません」と思っているほうが、無意識に相手を傷つけているリスクがあると言えるでしょう。

ハラスメントにも同じことが言えます。「あの時は感情的だったかもしれない」、「あの時の一言は余計だったかもしれない」といった心配をされる方は、気が休まる場面がないかもしれません。ですが、「自分はハラスメントをしているかもしれない……」と思えることは、大きな問題となるリスクを回避できることであるとも言えます。なぜなら、その思いがあれば、“部下がどのような反応をしていたのか”という『サイン』を見つけようとするからです。さらには、自らの言動が適切でなかったと気づけば、部下に対して気持ちを素直に伝えることができるのではないでしょうか。

会社として「ハラスメント防止」を推進するためのポイント

会社としては、管理職をはじめとした従業員に対し、研修などを通じて「このような場合はハラスメントに該当する」といった最低限の理解をしてもらうこと、そして就業規則などを通じて「ハラスメントを許さない」という姿勢を伝えることは、当然必要です。しかし、そのことばかりに固執してしまうと、従業員が「ハラスメントをしないこと」を必要以上に警戒することにもなりかねません。

会社の本来の目的は、「従業員一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮させ、生産性を高めること」です。その目的を目指す過程で、当然ながらハラスメントが起こるリスクも生まれるため、特に管理者の方は細心の注意を払って部下と向き合っていると思います。

人事労務担当者の方は、ハラスメントの理解だけに意識を傾けるのではなく、「管理職が困っている時に、その上司や担当部署などへ相談できる環境」や、「部下が成長する喜びを実感できる場面」などをつくる取り組みも意識してみましょう。それは、上司が目の前にある現実を肯定的に捉え、より良い未来をつくることにつながっていきます。
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