DX時代がいま、本格的に訪れようとしています。私たちを襲ったコロナ禍は、リモートワーク環境の普及など、デジタルツールを活用した非接触型の生活を実現しました。例えば、つい数年前では「リモート飲み会」という言葉は聞きなれないものだったのに、今では当たり前です。また、飲食店でロボットが配膳を行う姿も見かけるようになりました。社会の中でデジタルによる変革が進む中で、はたして働く人々はアップデートできているでしょうか? DX時代に求められる“人物像”は変化しつづけています。

今回より新シリーズ(全5回)として、「DX時代に活躍できる人を育てるためには、企業はどう社員を導いていったらよいのか」を掘り下げて考え、その答えを探ります。
DX時代に活躍できる人を育てる:(1)「リスキリング」は誰もが優先的に取り組むべきイベント【76】

DX時代の到来と共に、企業が対応を迫られる「社員のリスキリング」

最近、企業の様々な担当者から「リスキリング」やDX時代の人材育成の相談を受けるようになってきました。ついに本格的なDX時代が来るのか、と感じています。

ちなみに、リスキリングとは「今の職業や新たな職業で求められる大幅なスキルの変化に対応するために、新たなスキルを獲得すること」とされます。近年のリスキリングの意味としては、個人がスキルを自ら習得するだけでなく、企業が個人に対してスキルを習得させる試みも含まれています。

リスキリング自体は、いまに始まったことではなく、過去にも私たちは“リスキリング”を行ってきました。例えば、90年代以降にパソコンが普及したことで、WordやExcel、PowerPointがビジネスシーンで使われるようになりました。現在では、企業のほとんどでこれらのアプリケーションは使われています。そして、企業で働く人のほとんどは、PCスキルやMicrosoft製品を使えるスキルを身に付けています。その後、2000年代からはスマートフォンが普及し、私たちは難なく使いこなしています。
“リスキリング”とはこういった新たなスキルを獲得することなのです。

では、なぜリスキリングが企業の中で大注目されているのでしょうか。企業の経営層や人事担当の方々とお話すると、まるで何かに迫られているかのように、「リスキリング」や「DX時代の人材育成」について語られる姿を目にします。実際に、新聞やニュースでもリスキリング関連の話題が、取り上げられることも増えてきています。そこにはどのような背景があるのでしょうか。

「リスキリング」は誰もが取り組むDX時代の必須イベント

私たちを襲ったコロナ禍は、多くの産業に自動化やテクノロジーを活用した非接触化などの「デジタルトランスフォーメーション」をもたらしました。一般企業でもリモートワークが当たり前になり、コミュニケーションのほとんどが対面ではなく、チャットやビデオ会議ツールを用いたものになりました。街中の飲食店でも、接触を避けるため、「注文はタブレットなどの端末から行い、ロボットが配膳する」というような仕組みが確立しはじめています。

また、決済方法もQRコードや、ICカードによる決済が普及して、現金を持ち歩かなくなったという人も増えていることでしょう。どこかに出かけたいときは、スマホ一台あれば、交通手段や宿泊の手配、そして決済まですべてをこなすことができる状況です。

企業の中でも、従来のメール中心のやりとりから、チャットを活用したコミュニケーションへと変化してきています。ペーパーレス化も進み、契約手続きや社内承認はほとんどが電子化されつつあるのではないでしょうか。

このように、日常生活から企業活動まで、私たちの生活のすべてでデジタルトランスフォーメーションが起きているのが今の世の中です。デジタルツールを使いこなすことができなければ、仕事に支障があるだけでなく、もはや、生活することもが難しくなるレベルに近づいてきていると言えます。

しかし残念ながら、まだまだ「PCを使いこなせない」、「ログイン方法がわからない」、「インターネットの接続方法を知らない」という方が多いのも事実です。信じられない話ですが、ある大手製造業では、社員にPCやスマホを使いこなせい人があまりにも多いため、海外からきたインターン生から「まるで90年代にタイムスリップしたようだ」と言われたということがあったそうです。

これだけデジタルツールが日常的なものになりつつある今、「リスキリング」はすべての人が取り組むべきことなのです。

「気づいた時には遅かった」では済まされない

しかし、企業の中には意外にも「まだうちはそこまでのリスキリングは必要ない」、「DX人材育成はまだうちの会社には早い」とい話す声も聞こえてきます。特に、日本の大企業で、過去に成功し業績が安定している企業からこういった発言が多いようです。

これだけデジタルツールが普及していて、仕事にもデジタルツールが必須の時代になってきているのに、こうした企業の担当者はどこか「うちには関係ない」という雰囲気を醸し出しています。DXは一部のIT企業やITエンジニアが取り組めばよい、と考えているようです。

しかし、先ほども説明したように、リスキリングは誰もが取り組むべき課題なのです。かつてPCが普及した際に、企業でPCスキルが必須スキルとなったように、DX時代では新たなスキルが求められているのです。一方でDX時代に求められている変化やスキルは少し分かりづらい部分があります。DX時代は「気づいたら仕事が自動化されていた」というような、あまりにも急激かつ静かな変化であるため、本当にリスキリングが必要に迫られたときは「遅かった」と感じるかもしれません。

しかし、気づいた時には遅かった、ではこれからの時代を生き残ることができないでしょう。そこで第2回では、DX時代に求められているリスキリングについて、どのようなスキルが必要なのかをご紹介します。ぜひ、引き続きお読みください。

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