新卒の採用活動において、正式内定が出せる10月1日を迎えます。新型コロナウイルスの影響で採用活動も大きく変わり、オンラインでの説明会や面接が増えました。同時に問題視されているのが「内定辞退」の増加です。オンラインでの関わりが増え、企業と学生との信頼関係が、対面環境に比べてうまく構築できていないケースが多いためでしょうか、「コロナ禍になる前よりも内定辞退が多い」という声をよく耳にします。そこで今回は、内定後のトラブルを防ぐため、内定通知書を出すにあたり注意すべきこと、そして内定から入社までの学生フォローについてお伝えします。
内定後のトラブルを防ぐには? 10月の「正式内定」で人事側が注意すべきこと

内定通知書を出すにあたり注意すべきこと

日本経済団体連合会(経団連)が示している「採用選考に関する指針」によると、例年3月1日から広報活動を開始し、採用選考活動開始は6月1日からとされています。その時点で採用を約束することは、あくまで「内々定」であり、口約束にすぎません。10月1日の「内定」をもって労働契約が成立したこととなり、法的拘束力が発生します。

一般的に企業側はこの段階で内定式を実施し、「内定通知書」を発行します。この内定通知書の様式や発行の有無、発行時期は法律で定められているわけではなく、発行していない企業もあります。ですが、内定後のトラブル防止のためにも発行しておいた方がよいでしょう。

ここで注意すべき点は「内定取り消し」についてです。不当な内定取り消しは「違法」とみなされます。内定取り消しが認められるのは、「採用内定時に知ることができない事実のうち、内定取り消しの理由として客観的に合理的かつ社会通念上相当と認められるものがあるとき」に限ります。具体的には以下のような内容です。
【内定取り消しが認められる場合の例】
●内定者が大学を卒業できなかった、または入社の際に必要と定められた資格や免許を取得できなかった
●採用の合否に直結するような重大な虚偽申告をしていた
●反社会的行為を犯した
●傷病で働けなくなった
万が一、これらに該当した場合に備えて、内定通知書に「内定取り消し事項」を明記しておくと安心です。

逆に、以下のような内容では内定取り消しは認められません。
【内定取り消しが認められない場合の例】
●定員以上に採用し、人員枠がなくなったため
●夜の店でのアルバイト経験があるため
●妊娠したため
●特定の宗教に入信しているため
これらを理由に内定を取り消すと、不当とみなされ、企業側に法的・社会的リスクが生じます。

また、学生からの内定辞退は違法とはみなされません。内定承諾後の辞退は「退職」と同じ扱いであり、速やかに応じる必要があります。ですが、企業側にとっては、学生を採用するまでに多くのコストがかかっています。そこで、内定辞退を減らすための策を講じておきましょう。

内定から入社までの学生フォローで気をつけたいこと

10月の内定式の段階では、複数企業から内定をもらっている学生も多いです。学生は入社まで不安な気持ちをいっぱいに抱え、「自分が選んだ会社は正しかった」と確信したいと思っています。ですから、内定が出る10月から入社式の行われる4月まで、学生との関係づくりを疎かにしないようにしましょう。

学生からは、以下のような声をよく聞きます。
●どんな同期がいるのか知りたい
●先輩と馴染めるか不安
●入社までにどんな準備をしておけばよいか知りたい


まず「どんな同期がいるのか知りたい」についてですが、内定式の段階で“内定者のコミュニティ”を作ることをおすすめします。例えばLINEグループを作り、そこで内定者同士が気軽にコミュニケーションをとれるようにしたり、必要な情報配信をしたりすることも有効です。この時点で内定者のリーダーを決め、主体的に動いてもらうこともよいでしょう。

続いて「先輩と馴染めるか不安」に対しては、採用担当者以外の先輩社員とも触れ合う機会を設けてあげましょう。コロナ禍でもありますので、対面での懇親会や食事会等が難しければ、オンライン座談会でも構いません。今の学生はオンラインでの交流に慣れているため、問題はないでしょう。座談会で「将来こうなりたい」と思えるような、目標となる先輩と接触させれば、学生たちのモチベーションを高められます。逆に、この座談会でセクハラやパワハラに近い発言などがあると、内定辞退の直接的な原因となるので、人選には十分注意する必要があります。

最後に、「入社までにどんな準備をしておけばよいか知りたい」についてです。入社前研修や課題等、入社後に役立つ学びを求めている学生も多いです。「年の近い先輩が、実際に入社までにどのようなことをしていたのか」という生の声も、学生たちにとっては知りたい情報のひとつです。

入社前の学生にとって、一番の不安は「人間関係」です。企業側の対応としては、「こまめに連絡をとること」、また「『一対内定者全体』ではなく、『一対一』の丁寧な対応をすること」が基本です。継続的なコミュニケーションによって、内定者との信頼関係を築き、内定辞退を防いでいきましょう。
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