コロナ禍の影響は企業の社員研修にも及び、一気にオンライン化が進んでいる。各企業がオンライン研修に舵を切り始めた当初は、ただリアルの研修をオンラインで提供するのが主流であった。しかし、徐々にオンラインならではの良さを活かした研修が広がりをみせている。また、新たなオンライン特有の課題や可能性も明確になってきている。新連載「人事はニューノーマル時代の「社員研修」にどう向き合っていくべきか」では、ニューノーマル時代における社員研修の現状と今後を考えていきたいと思う。

オンライン研修の落とし穴と行方

オンラインでの研修は効率化され、これまでより低コストだと思われている。集合研修では会場費や備品費、準備の作業費、テキスト類の印刷費といった金額はもちろんのこと、時間や労力の面でも一定のコストがかかる。オンラインに変われば、会場の予約やテキストの準備の必要はなくなる。様々なコストが下がって嬉しい限りなのだが、実際にはそうはいかないことがある。

講師に進行をお任せする集合研修と違い、オンラインでは講師が進行している間の受講生の通信環境、次の段取り、受講生とのチャットでのやりとりなど、気を抜く暇はない。私もたまにオンライン研修の収録や配信の場に立ち会うのだが、何かに気づいてスタジオのスタッフに伝えたいことがあっても、狭い場所だと高性能マイクの場合、音を拾うため喋ることはできない。また、ドアの音が鳴らないように部屋から出ることもできない。

またオンライン研修では機材も重要だ。聞こえにくい・見にくいといった品質は研修の効果に関わる。画質や音質の低下を防ぎ、「快適な受講」を整えるためには、安定した通信環境とカメラ、マイク、照明、パソコン、ミキサーなどの機材もそれなりのものを用意しなければならない。スタジオも用意すれば、研修会場を借りるのとあまり変わりないのだ。

結論としては、リアルの集合研修よりも稼働やコストがかかる場合も少なくないのである。器を用意すれば講師だけでワンオペが可能な集合研修の方が、むしろコストはかからないということもあるのだ。研修をオンラインに切り替えたからといって効率化が実現できるわけではない。そのことを十分理解したうえで、オンライン研修の企画や運営に臨んでもらいたい。

オンライン研修の現状を述べたが、今後の行方にも触れておきたい。コロナ禍が終息すれば、研修のあり方はどうなっていくのか。コロナ禍が終息した直後は、人恋しい効果も手伝って、リアル研修へのリバウンドがかなりあるのではないだろうか。

研修の付加価値は、「社内活性化」、「育成文化の定着」であると私は考えている。これは受講生側にもあって、再会や出会いの場、コミュニケーションの場としても楽しみになっている部分でもあるのではないだろうか。オンラインの便利さの裏で、集合研修の良さが再認識されている声を聞くことも少なくない。対面からオンラインに切り替わった研修が、このままずっとオンラインということはなく、オンラインと対面のハイブリットに落ち着くだろう。

オンラインでのリーダー研修や管理職研修を考える

次に、オンライン化が進んでいく中で、研修はどう変わっていくかを考えてみたい。今回は、研修の中でも柱となるリーダー研修や管理職研修について取り上げる。

私がリーダー研修や管理職研修を設計するなら、対面の集合研修を重視する。それは、人と人との「ふれあい」を必要と考えているからだ。

テクニカルスキル系の研修と比較してみるとわかりやすいのではないだろうか。テクニカルスキルの研修は、知識を得て理解して実践できれば一人でもできる。例えばプログラミングの研修の多くは単独参加のカリキュラムであり、そこには「ふれあい」など不要である。

リーダー研修や管理職研修はそうはいかない。今は、特にダイバーシティを背景に、「リーダーシップ」も「マネジメント」も対人をベースにした、人との関わり合いのスキルが求められている。端的に言うと、共感、傾聴、承認といった人に寄り添うスキル。まさに「ふれあい」ともいえる。

ただ、この「ふれあい」を重視した設計は、オンラインでは難しい。リモートワークの時代には、表情を読み取ることが困難だからだ。注意が必要なのは、やみくもにリーダー研修や管理職研修を集合研修にしても解決にはならないということ。集合研修をオンライン化しただけでは、リモートワークのマネジメントに完全対応できているとはいえない。相手の行動が見えないというリモートワークでのマネジメントを前提に設計しなおす必要があるだろう。コロナ禍の中でリモートワークをベースにしたチームビルティングやマネジメントに特化した新たなカリキュラムであるならば、オンラインでもリーダー研修や管理職研修は一定の効果が得られると考える。
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