障がい者雇用の中でも、精神障がい者の比率が年々増えています。そのため、これから新たな障がい者採用を考えるときには、精神障がい者の雇用を検討することが多くなるでしょう。一方で、受けいれる職場では、どのように接したらよいのかと不安に感じたり、戸惑ったりしている様子もよく見受けられます。ここでは、精神障がい者がいる職場でよく耳にする課題について見ていくとともに、精神障がいのある人と職場で一緒に働く部門や担当者をどのようにサポートできるのかについて説明していきます。

精神障がい者がいる職場でよく見られる課題とは

障がい者の採用は、一般の採用に比べると、さまざまな社内調整をおこなったり、業務の切り出しをしたり、また、外部の支援機関や学校などとやりとりをしてから雇用することも多いのものです。ですから、一連のプロセスを経て採用が決まると、ちょっとホッとしたくなるものです。しかし、雇用はゴールではなくスタートです。

新卒でも中途採用でも一般的な採用では、採用してから研修したり、社内のルールや業務の方法を教えたりする必要があり、仕事ができるようになるまでには一定の時間が必要になります。障がい者を雇用した場合にも、仕事ができるようになるまでには、同じように一定の時間がかかります。そして多くの場合、それは企業側が想定しているよりも長い期間になります。

特に精神障がいをもっている方の雇用では、実習期間は大丈夫だったのに、採用になってから調子が悪くなったというケースもよく見られます。長くても2週間程度の実習期間であれば、誰しもちょっとくらい無理をしてでも頑張ってしまうものです。まして、就職の合否がかかっていればなおさらです。しかし、就職してからは、3ヵ月後や半年後までといった期間限定ではなく、働き続けることが求められます。

この対応をしていくのが、精神障がい者と一緒に働く部門や従業員の方々です。今までの自身が担う通常業務に加えて、障がい者に業務を教えたりフォローしたりする必要があるため、一緒に働く担当者や同僚は、仕事の負荷が大きくなりがちです。「採用された障がい者が思っていたよりも仕事ができず、その分の仕事がプラスになってしまっている」、「障がい者が社内にいる間は、そのサポートやマネジメントに追われてしまい、自分の仕事もままならない」といったことは決して珍しい光景ではありません。

そして、このような状態が続き、それを組織や上司や同僚がフォローできていないと、一緒に働いている従業員がストレスで潰れてしまうことがあります。

精神障がい者のいる職場に対して人事部門がサポートできることとは?

それでは、精神障がいをもつ人と一緒に働く従業員を、人事部としてはどのようにサポートすることができるのでしょうか。その点について考えていきたいと思います。

(1)一緒に働く従業員のために研修会や勉強会などを開催する
多くの企業では、事前に一緒に働く従業員の理解や協力を得るために、研修会や勉強会などを開催しています。

これは、障がい者の能力を発揮させて円滑に仕事をすることを目的としたものです。従業員に障がい特性を知ってもらうとともに、障がい者当人が働くに当たってどのような支障を感じているか、どのような接し方が必要かといったことについて、周囲が理解し、働く環境を整えるという点から、とても大切です。また、一緒に働く同僚たちの認識を共通させることで、障がい者当人も働きやすくなります。

研修や勉強会では、障がいや本人の特性(得意なこと、得意でないこと)や、対応上の留意点(例えば、指示や注意するときは穏やかに話すこと、ひとつずつ指示を出すことなど)、昼休みや休憩時の関わり方などについて説明をすると、一緒に働く従業員は安心するでしょう(個人情報を、どこまで、誰に開示するのかについては、事前に障がい当事者と確認しておくことをおすすめします)。

どのような内容について触れるとよいかについては、以下で説明していますので、参考にしていただければと思います。
精神障がいや発達障がいのある人をはじめて雇用するときに知っておきたい雇用管理Q&A(障害者雇用ドットコム)
職場における精神障がい者との接し方のポイントQ&A(障害者雇用ドットコム)

(2)障がい者と一緒に働く社員をフォローする
・障がい者と一緒に働く社員とコミュニケーションをとる
障がい者と一緒に働く従業員が、どのような状況にあるのかを把握し、困っていることがないかをヒアリングすることができます。直接業務に関係ないことであれば、場合によっては人事部門でサポートすることもできるかもしれません。

例えば、働くうえで業務ができることは大切ですが、職場のマナーや会社のルールを知ることも同じように大切です。一般的には、周りの人や同僚がどのように行動しているのかを見て自然と学ぶことが多いのですが、「状況を見て学ぶ」ということが苦手な障がい者の場合、職場でのマナーや会社のルールは「教える」ことをしないと、本人は気づかなかったり、わからなかったりすることがあります。もし、挨拶や身だしなみ、社会人としてのマナーなどで気になることがあれば、職場で一緒に業務に当たる人たちから、「気持ちよく働くために必要なこと」として教える必要があります。

しかし、これらは直接業務に関係することではありませんので、そのような研修などを人事部が担当することで、現場をサポートすることができるかもしれません。

・就労支援機関や学校との連携をとる
上記のように、仕事内容や職場のルールについては、会社で教えたり、サポートしたりすることが必要ですが、障がい者雇用に関わると、職場だけでは解決できない課題もあります。

例えば、職場以外の対応が求められるようなこと、つまり、生活面や家庭などで気になることがある場合です。ときには、金銭問題が生じることもあります。このような生活面や家庭のことについては、会社だけで抱え込んだり、解決しようとしたりしないで、就労支援機関や特別支援学校と連携をとって協力やサポートしてもらう方がよいでしょう。

業務の状況や就業時間の様子などについては、現場の従業員に入ってもらい情報共有や検討の場を設けることをおすすめしますが、このような場のコーディネートは人事部で担当することができます。人事部が関わることで社内に情報共有しやすくなりますし、何か困ったことやサポートが必要なときに把握しやすくなります。

・障がい者雇用について相談できる社外の窓口をつくっておく
また、障がい者雇用について相談できる社外の窓口をつくっておくこともできます。採用した障がい者が所属する直接の就労支援機関は、基本的に障がい者個人を中心として問題を解決しようとするケースが多いものです。これはもちろん大切なことなのですが、客観的な視点から問題を見られなくなる可能性もあります。

企業で障がい者雇用をするときに考えておくべき点は、採用した障がい者の活躍の場をつくることです。職場定着も大切ですが、同時に、「組織として雇用するという基準を定めること」と、「その基準に基づいた判断をする」というバランスも大切になります。少し客観的な立場からアドバイスをもらえるように、障がい者雇用の経験がある先輩企業や障がい者雇用の専門家と連携をとっておくと、判断するときに役立つかもしれません。


障がい者雇用を進めるときには、障がい者従業員だけを見るのではなく、ときとして、組織としてのリスク管理という視点を持つことも大切になります。それに加え、従業員個人を大切にしている、心配している、気にかけているということを伝えることはもっと重要だと、私は感じています。これは、障がいの有無に関係なく、すべての従業員に対して同じです。精神障がい者を雇用し、安定した働き方をしてもらうためには、「従業員をサポートすること」を意識してみてください。
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