今回のコラムインタビューのお相手は、マイクロソフト シンガポールにてアジア太平洋地区本部長を務める岡田兵吾さん。「リーゼントマネージャー」という呼び名でご存じの方もいるだろう。アクセンチュア、デロイトコンサルティング、マイクロソフトというグローバル企業3社にて、シンガポール、アメリカ、日本の3カ国を拠点に23年間勤務。グローバルコンサルタントのパイオニアの1人で、書籍出版・講演などでもご活躍だ。私は海外で活動するようになってからお名前をよく耳にするようになり、一度お会いしたかった方だ。先日登壇したカンファレンスで偶然出会い、意気投合してそのまま飲みに行って語り合った。ばっちり決めたリーゼントとレイバンのサングラスに黒革ロングコートといういで立ちで、マシンガントークを繰り広げられる。インパクトは絶大! だ。正直なところ、最初は「近寄りがたい怖い人」という印象だったが、すぐに「近づきやすい優しい人」へと変わった。常に周りを気かけて笑顔を絶やさない、ホスピタリティの塊のような人で、人物の大きさを感じた。ご本人のもともとの性格が大きいと思うが、日本を離れ海外で活動した中で、人生観に影響を与えられる出来事にたくさん遭遇したようだ。インパクトの強い経験は人間を大きく育てる。

ローザ・パークスのスピーチで人生観が変わる

稲垣 海外の第一線でご活躍ですが、外国との最初の接点は何ですか?

岡田 高校は仏教中心の清風高校で、大学は同志社工学部。海外と全く接点のない学生でしたが、昔からアメリカ・ヨーロッパをはじめとした海外の映画や音楽が大好きで、あこがれを持っていました。大学でESS(英語研究会:English Speaking Society)の門をたたき、バックパッカーとして中国・アメリカに行き、一気に世界が広がりました。小田実、落合信彦、立花隆などの本も濫読しました。国際ジャーナリストになって、ペンの力で世界にソーシャルチェンジをもたらすような人間になりたかったんです。

大学4年生で、交換留学でアメリカのオハイオ州クリーブランドに行ったとき、ローザ・パークスという「公民権運動の母」といわれている女性のスピーチを聞く機会がありました。彼女はもともと大学も出ていない、デパートやスーパーで働いていたごく一般の女性でしたが、バスの運転手の命令に背いて白人に席を譲るのを拒み、人種分離法違反の容疑で逮捕されました。これをきっかけに、キング牧師やマルコムXなどが立ち上がり、アフリカ系アメリカ人による公民権運動の導火線となり、「公民権運動の母」と呼ばれた人です。キング牧師など、世界を変えた人物に影響を与えた人ですよ。彼女の言う「One person can change the world.」に衝撃を覚えました。大聴衆が固唾をのんで見守る中、彼女がスピーチを始めると、僕より体の大きい大の男が話を聞いて涙を流すんです。それを見た時に、「俺も絶対ローザ・パークスのようになろう」と思ったんです。世界を変えたい、世の中に、何か貢献してやるぞ! という気持ちが強くなって。そこからソーシャルチェンジということが僕の信念になりました。ちなみに、この集会に参加した日本人は珍しくて、CNNから取材された映像が全米に流れて、私は一躍時の人となりました。

挫折から学んだ「非ネイティブエリート」の英語術

稲垣 まだ大学生の頃ですよね。すごい経験です。ジャーナリストになれたのですか?

岡田 その後、日本に帰国して就職活動をしたんですが、メディア企業には受かりませんでした。内定をいただいたのは総合商社と都市銀銀行、そしてアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)。ちなみに就活の時から今のリーゼントスタイルにしていました (笑)。当時、アンダーセンコンサルティングは小さい会社でしたが、外資だしグローバルに活動できると考え選択しました。7年間勤め、若いうちから多くの外国人をマネジメントさせてもらった経験は大きかったのですが、そうはいっても日本国内の外資。本場の海外で勝負したかったので、思い切ってマイクロソフト シンガポールに転職しました。ところが、シンガポールに行くと、英語が全然通じない。議論についていけず、会議でも一言も発言できずで、上司からは「発言しないやつは会議に出るな。You are Fire!」とまで言われる始末で、大変惨めな思いをしました。

転職後のデロイトコンサルティングでも、同僚の韓国人、タイ人、ドイツ人たちがどんどん仕事で契約をとってくるんですが、自分はお客さんの信頼を得られず、1年2カ月売上ゼロ。自律神経失調症になりました。アクセンチュア時代は、周りが外国人とはいえ、結局は日本で仕事をしているので、お客様扱いなんです。僕の下手な英語にも付き合ってくれるし、話す時も少しゆっくり話してくれる。マイクロソフト シンガポールでは60カ国以上の人が一緒に働き、自分の責務をまっとうする。マネージャーはいろんな人を巻き込みながらリーダーシップをとっていかないといけない。誰もお客様扱いなどしてくれない。言葉も、アメリカ英語だけでなく、中国英語もあり、インド英語もあり、オージー英語もあってそれぞれ癖があるから、ちゃんと聞き取れない。その中でも、英語でコミュニケーションをとって信頼関係を作って成果を出していかないといけないんです。

稲垣 兵吾さんのご著書『非ネイティブエリート最強英語フレーズ550』を読ませてもらいましたよ。すごく面白かったです。英語でも「気遣のある言い回し」って確かに必要だなと思いました。ちょっと内容を紹介していただけますか?

岡田 ありがとうございます。そうですね、例えば、相手の言っていることを聞き逃したときはなんと言うか。

A: Once more, please.
B: Sorry?

この場合、ビジネスで英語を使っているときならばAの印象は良くありません。Bのほうが好印象を与えます。Aは「Please」を使っていて丁寧なように思えますが、相手には命令しているように聞こえてしまうんです。海外で仕事をするうえで大切なことは、ただ英語を話すことではなく、「信頼関係を作る英語」を話すことです。

日本人が本来もっている「気遣いの心」

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