第9回:「よろしく、ありがとう、ごめんね」を言えるグローバルリーダー

日本流グローバル化への挑戦

今回のコラムインタビューのお相手・豊田圭一さんは、並外れた経歴を積み上げられてこられた。お父様が三菱商事に勤められていた関係で幼少期の5年間をアルゼンチンで過ごし、上智大学を卒業されてバブル期の清水建設に入社。1994年、まだまだ終身雇用の意識が強かった中、大企業を飛び出し、留学コンサルティングの会社を興して若者が海外に行く選択肢を作った。その業界の第一人者として書籍出版や講演などを行い、今も多方面でご活躍されている。ご自身もスペインの大学院IEでリーダーシップのエグゼクティブ修士号を取得し、現在は日本以外にも7ヵ国にグループ会社を持つほか、グローバルで活躍する日本人に対して実践型海外研修「ミッション:グローバル」を実施しながら世界中を渡り歩かれている。
ということで、今回もグローバルにすごい経験を積んでいらっしゃる方が対談のお相手なのだが、例にもれず豊田さんも「大変な苦労人」だった。ご本人が体験した「25〜35歳の暗黒時代」が、今の研修や信念のもとになっているという。今回は特に、豊田さんが暗黒時代と呼ぶ25〜35歳くらいの年代で、自分の思うように物事が進まず「自分の人生これでいいのだろうか」と思っている方々に読んでもらいたい。この対談に自分の背中を押してくれる多くのヒントが隠されていると思う。

海外研修「ミッション:グローバル」の本質

稲垣 豊田さんは、「ミッション:グローバル」という研修プログラムを開発され、さまざまな国で実施されているとお聞きしていますが、どのような研修ですか?

豊田 日本人を対象とした、東南アジアやインドなどで実施する課題解決型の経験学習プログラムです。5日間のフィールドワークを通じて現地人の意識や考え⽅を肌で感じながら、現地企業から課されたミッションと呼ばれるビジネス課題に対して、期日までに成果を出すことを求めます。

稲垣 日本人を海外に連れて行って実施している研修ですね。机上ではなく海外で、実践型でやるということでしょうか。

豊田 そうです。日本にいる時の日常とは全く違うアウェイな環境で活動することで、修羅場と成功体験の獲得を目的としています。ケーススタディよりもリアルスタディによる体験型プログラムでビジネス成果を追求する研修です。

稲垣 そもそも、なぜそのような体感型プログラムを海外で行うという発想が生まれたのですか?

豊田 自分で「暗黒時代」と呼んでいる25〜35歳の実体験が影響しているかもしれません(笑)。

稲垣 拝見する限りすごいご経歴で、「暗黒」とはかけ離れているように感じますが、そんな時代があったのですね。

豊田 今でこそ、こうして自分のやってきたことを書籍やインタビューなどで伝えられるようになりましたが、本当に底辺の時期を過ごしました。もともと海外勤務を希望して清水建設に入ったのですが、なかなかその順番が回ってこず、しびれを切らして3年弱で辞めて留学コンサルタント会社を起ち上げ、自ら外国にかかわる仕事を作りました。

しかし現実は甘くなかった……。顧客開拓がうまくいかず、書店の留学のコーナーにいる人に声をかけたり、TOEICとかTOEFLの試験会場の外で待ち構えて声をかけたりと、ありとあらゆる手段を使いましたが、なかなかうまくいきませんでした。数年の話ではなく10年間ずっと低空飛行。暗黒時代です。30歳になっても年収300万円程のレベルで、飲みにも行けなかったし、友達や先輩の結婚式は1回も行ったことがありません。この時代にたくさん友達を失ったと思います……。

さらに、父親が三菱商事で、弟は三井物産。エリート街道を行く2人に比べて、兄の自分は何をやっているんだ、と。周りからは、そんなに大変な環境にいるよりもっといい環境で仕事をしたほうがいいのではないかとアドバイスもされました。でも辞めなかったのは、意地と、このアウェイな状況でも仕事自体は楽しかったからだと思います。

稲垣 その状況で仕事を楽しめたのですか!?

豊田 生活面とか周りの目とかは本当につらかったけれど、楽しいっていうのは、自分の頭で考えて、アクションを起こすという自由があったからだと思います。「今回はうまくいかなかったから今度はこんなチラシ作ろうよ」とか、「声のかけ方をこう工夫しよう」とか、「留学先をアメリカだけではなくて、ヨーロッパにも広げてみようか」とか。とにかく、自分の頭で考えて行動するのが、楽しかったんだと思います。

その経験が今の研修プログラムにつながるのですが、仕事って上から勝手に降りてくるものをこなすだけではだめで、自分でつかみにいかなければいけないものですよね。そうしないと充実感は得られない。どんなに高く偉いポジションの人でも、完全な安全地帯で、指示された通りにしか動いていなかったら毎日がつまらないし、成長しない。反対に、たとえお金がなかったとしても、どんなアウェイな環境であっても、自分で考えて動くことが仕事の楽しさや成長につながるのでしょう。この「暗黒時代」に、唯一私が楽しさを見出せたのが「自ら考え動く」ということだったと思います。

稲垣 なるほど。「ミッション:グローバル研修」の本質は、「アウェイな環境で自ら考え動く成功体験」をするということですね。

豊田 まさにそうです。私が10年の人生を費やしてつかんだ最大の財産です。あの状況でさえ、仕事に充実感を覚えることができましたから。

著者プロフィール

株式会社エイムソウル 代表取締役 PT. Bridgeus Kizuna Asia Director 稲垣隆司

1975年大阪生まれ、同志社大学卒業。急成長したベンチャー企業で人事部責任者を務め、年間600名の新卒採用の仕組みを作る。その後人事コンサルティング会社でコンサル部門責任者として年間100社の採用をサポート。2005年株式会社エイムソウルを設立し300社を超える顧客の人事課題解決に取り組む。2014年インドネシアに進出し、現地でPT. Bridgeus Kizuna Asiaを設立。日系企業に特化して人事課題解決に取り組む。毎月日本とASEANを行き来しながら活動中。

●株式会社エイムソウル 概要
「すべての人に、生きがいを」をミッション(理念)として掲げ、採用・教育コンサルティングサービスを行う。
「活躍する外国人を見抜く適性検査」CQI(https://www.aimsoul.com/global/)のβ版を2019年4月にリリースした。また、マインドセット研修「TOP GEAR」やプロジェクト型研修「NEXT GATE」、ASEANローカルスタッフのスキル・マインドセットe-Learning
「Bridgeus」、インターン、選考、研修用グループワークのレンタルサイト「Groupwork.com(https://hr-groupwork.com/)」など課題解決を図るサービスを延べ1万人以上に提供している。
株式会社エイムソウル 公式サイト

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