第4回目:「ワークライフバランス」の前に「ワークフローバランス」を見直して業務効率化を図ろう

その働き方改革は利益が出るのか【連載】

以前、ある経営者の方が「土日は、社員から連絡が来ても絶対に対応しないんです」と答えているシーンをテレビで拝見しました。その方の著書や記事をそれまで見ていた私の印象では、「仕事大好き人間」と思っていましたので、どうしてこのようなことを「わざわざ」テレビで言うのだろう、と一瞬思ったのですが、すぐ「なるほど」と理由がわかりました。
「経営者が社員からの連絡に土日は対応しない」ということは、見方を変えると、「土日は社長から社員に仕事の連絡は来ない」という意味になります。つまり、学生や転職を考えている方達がこのテレビを見ていたら「この会社は、少なくとも土日に社長から連絡がくることはない会社だから行ってみたい」、「ワークライフバランスがしっかりしていそうな会社だから応募してみようかな」という気持ちになることでしょう。人手不足の折、さすがよく考えていらっしゃるなと思いました。

必要なのは「実務に支障がない施策」の立案

ワークライフバランスという言葉は、私自身は、人によって解釈の仕方が異なる、非常に「ゆらぎの大きい言葉」だと考えています。

これまで多くの方と仕事をご一緒して感じるのは、その人の考え方や労働環境によって二つのタイプに分かれるということです。それは「仕事そのものが基本的に好きな人、あるいは好きなことが仕事になっている人」と「そうでない人」です。前者のケースは働き過ぎにならないように、また後者のケースはなるべく自分の意思で仕事の裁量を決めてもらう、という環境整備くらいが、現実的に総務人事部門が「業務として」できるケアの限界ではないでしょうか。それ以上に踏み込んだ「人それぞれの仕事の価値観」については、簡単に他人が変えられるものではない、と私は多くのケースを見てきて思います。

ワークライフバランスは、「物理的な労働時間の問題」、「仕事に対する考え方の違い」、「それぞれの立場や役職」、「抱える家庭環境」など、さまざまな基準軸があります。皆がそれぞれ働きやすい環境にする、という取り組み自体はとてもいいことだと思いますが、単に平日と休日、残業時間などを区分けして、はみ出してしまう実務のことは皆で考えてなんとかしてください、と会社が社員を突き放したり、あるいは社員が会社の利益を無視して自分の機嫌や都合に任せて仕事をしたりしていい、ということではなく、実務的に支障がない施策を打たなければ会社の生産性は落ち、利益も落ちます。利益が落ちればまわりまわって結局は給料面など皆に不利益な職場環境になってしまいます。

ワークフローを見直し、効率化できるポイントを探る

そこで私が提案したいのは、「ワークライフバランス」の見直しの前に、まず「ワークフローバランス」の見直しを先に実施して欲しい、ということです。そもそもなぜワークライフバランスが大切だといわれるようになったかというと、深夜や休日に日常業務が食い込んでいくことがあるからです。

そこでまず、平日の定時内に日常業務が収まるようにワークフローを見直し、その状態を保つために、経営者や上司は欲張ってさらなる仕事をそこにねじ込まないようにする。もし業務を増やしたいのなら、人員を必ず採用する。それを徹底さえすれば、一般社員の仕事が深夜や休日にまで食い込むことはないはずです。そもそもワークライフバランスの議論自体が起こらずに済むわけです。

ワークフローの見直し方のポイントはいくつかありますが、その一つに「今の時代にマッチしているワークフローかどうか」という点があります。よくあるケースとして、「うまく回っている会社や部署ほど、数年前、数十年前のワークフローがそのまま残っている」というケースがあります。業務上うまくいかなかった時は、どの会社や部署でもワークフローの見直しを必然的に行うでしょうが、逆にそういう機会がない場合は、時には数十年も見直しをしないままのワークフローというものが存在し続けてしまうことがあります。

それ自体は悪いことではないのですが、今よりも効率化を図りたい、人手も足りなくなってきている、ということであれば、そこが見直しできる一つの狙い目です。なぜなら、数年、数十年の間に、パソコン、スマートフォン、クラウドなど、ワークフローの効率化に役立つツールが数多く登場してきています。そうした中でも長期間ワークフローが変わっていないのは、それらを導入していないということですので、「手作業、アナログでやっていたものが、ソフトウェアで作業時間や人員を激減できる」という工程が必ず見つかるからです。

ワークフローの見直しを定期的に行うことによって、フルタイムで週5日勤務しないとダメだと思っていた業務の中に、「この作業は自宅でもできる」、「これは3日以内に処理すればいい仕事だから毎日出勤できない人でも可能」というものが出てくると思います。そうした仕事に、「諸事情でフルタイム勤務はできないけれど、できる範囲で働きたい」というような人などをマッチングさせていけば、会社と社員、双方が満足できる「ワークライフバランス」が成立します。それにより、無駄のない人件費配分ができ、生産性も上がり、会社も利益が確保できる。同時に社員のライフスタイルも充実させることができます。

特に近年のソフトウェアは、年ではなく月単位のレベルで機能が向上していますから、1年に1回は各部署でワークフローの見直しをすることをお勧めします。総務人事部門は、最新のソフトウェアなどをリサーチし、自社のワークフローと見比べて、改善できそうな部分を各部署や会社へ提案、導入のフォローをしていく。このような業務でも十分会社の生産性を上げる、つまり利益を押し上げる貢献ができるのです。
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著者プロフィール

流創株式会社 代表取締役 経営コンサルタント/作家 前田 康二郎

数社の民間企業で経理総務、IPO業務、中国での駐在業務などを経て独立。現在は「フリーランスの経理部長」としてコンサルタント活動を行うほか、企業の顧問、社外役員、日本語教師としての活動、ビジネス書やコラムの執筆なども行っている。著書は『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』のほか、『スーパー経理部長が実践する50の習慣』、『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』、『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』『経営を強くする戦略経理(共著)』、『スピード経理で会社が儲かる』、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』、『自分らしくはたらく手帳(共著)』など多数。節約アプリ『節約ウオッチ』(iOS版)も運営している。

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