コラボヘルスとは、保険者と企業が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境の下、保険加入者(従業員・家族)の予防・健康づくりを効果的・効率的に実行する取り組みのことを指します。保険者・企業・従業員の三方にメリットがあると言われているコラボヘルスですが、注目される背景には日本企業が直面する「超高齢化社会」が深く関与しています。そうしたコラボヘルスの具体的な取り組みや実施効果についてご紹介します。
「超高齢化社会」に向けて保険者と企業が積極連携するコラボヘルスの取り組み

コラボヘルスが注目される背景とは~「超高齢化社会」に向けて

コラボヘルスは、厚生労働省が保険者(健康保険事業の運営主体:全国健康保険協会と健康保険組合の2種が存在する)に対して求める「データヘルス」と、経済産業省が企業に対して求める「健康経営」を、省庁の垣根を越えて推進すること。また、「組合のデータヘルスを強化し、企業の健康経営との連携を推進する」取り組み全体をも含んでいます。

「データヘルス」と「健康経営」という2つの要素が関連するコラボヘルスですが、その推進の背景としては既に突入している超高齢化社会(少子高齢化)という共通の課題があります。

少子高齢化が進み、日本の医療保険制度が岐路に立たされている今、その取り組みの中心を担っているのが保険者です。1961年に創設された国民皆保険の下で、医療費の支払補助だけでなく、健康診断や人間ドックなどを通じ加入者の健康づくりに大きく貢献してきました。しかし、加入者の高齢化に伴い、がんや心疾患などの生活習慣病が増加、結果として医療費も膨らんでいます。加えて、その医療費を肩代わりしている現役世代が減少している実態も重なり、課題は大きくなっているといえるでしょう。全国では赤字の保険者が増加しており、存続の危機に直面しています。

企業にとっても、従業員の高齢化と生産年齢人口の減少は大きな課題です。基礎疾患を有している割合が多い高齢者ほど健康障害を発症しやすく、これまで以上に従業員の健康を守る取り組みが企業には求められます。また、近年の景気拡大・労働人口減少に伴い、様々な産業分野で人材確保が必要となっています。従業員の健康維持・増進に寄与しながら、生産性を維持する環境を作ることが企業にとって重要な課題といえるでしょう。

そうした超高齢化社会という共通課題を背景に、コラボヘルスによる保険者・企業・従業員の利益創出が期待されています。主に、以下3つの協力体制を保険者・企業両者が構築することが目的とされています。

(1)2006年~特定健康診査・特定保健指導制度の導入
従来からの 母体企業・組織による労働安全衛生法上の健診とあわせて、現役世代に対する健診に保険者、母体企業・組織の両者が関与する体制構築

(2)組合機能を発揮するための基本的インフラの整備
電子化されたレセプト(患者が受けた保険診療について、医療機関が保険者に請求する医療報酬の明細書)情報と健診情報を活用し、有益な分析や活動を保険者が実施

(3)データヘルス推進のために企業と連携
こうしたデータヘルスを推進していくには事業主との連携が一層重要。事業主の積極的な関与によるコラボヘルスの実現が望まれる。
「超高齢化社会」に向けて保険者と企業が積極連携するコラボヘルスの取り組み

検診結果を分析し、日本全体の健康レベル向上へ。コラボヘルスに期待する効果とは

従来、企業は労働安全衛生法の下、健康診断を従業員に提供しなければなりませんでしたが、これは予算の都合上、法廷項目(最低限受けなければならない項目)に限定した企業が少なくない状況でした。しかし、従来の項目に保険者が5がん検診などをプラスし、企業と組合が健診コースを構成することにより、それぞれ負担が分散され、従業員にとっても質の高い健診が提供されるようになることが期待されます。

また、この健診結果を産業保健専門職で集計・分析することで、保険事業全体に向けた施策へと広げることができます。電子化(匿名化)されたレセプト情報と、健診結果を照合させることで、産業保健専門職による従業員や加入者のリスクアセスメントが可能となるのです。企業にとっても、保険者にとっても、健康リスクや具体的な取り組み施策について対策を講じやすくなるでしょう。また、様々な保険事業を展開することにより、個々だけではなく全体の健康レベル上昇に貢献することにも繋がるとされています。

一方、企業においては健診結果から従業員が安全に働ける健康状態かどうかを把握しなければならず、法律上では企業側に義務付けられていないものの、健診受診後に精密検査対象項目があった場合などはサポートしていく必要があります。そうした観点からもデータを活用したリスクマネジメントを大きな枠組みで実施していくことで、企業の支援をより強めていく結果につながることが望まれます。

企業は労働安全衛生法の下、保険者は健康保険法の下、従業員と加入者それぞれの健康維持増進に努めなければなりません。いかに個々のデータを適切に管理・運用していくかという点が重要となることから、医療データを適切に取り扱う人材の確保も必須となり、産業保健職の人材を、社員数、あるいは加入者数に適した形で確保することが必要不可欠となるでしょう。超高齢化社会に向けて今後のコラボヘルスの動向に期待が寄せられます。

※ 健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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