日本における「人と組織」のグローバル化の波を受け、【日本流グローバル化への挑戦】と銘打ち、本コラムを先月から開始いたしました。
記念すべき第1回目は、早稲田大学政治経済学術院の白木教授と対談させていただいています。白木教授は、日本企業のグローバル人材戦略の第一人者です。長時間にわたりお話しいただきましたので3回に分けてお送りしており、今回はその2回目です。
前回のコラムはこちら

グローバルHRのプロフェッショナルが育っていない

白木 (ソーシャライゼーションの課題の他に)課題のもう一つは、世界に通用するHRの専門家を育てることにあると思っています。いま日本の人事担当執行役員で、HRの知識や課題解決策の仮説を立てて、ヨーロッパやアメリカ、アジアの会議でファシリテーション出来る人が、どれだけいるでしょうか?

これは私のゼミの外国人卒業生から聞いた話ですが、彼女は大学院卒業後、ある日本の大企業に入って人事部に配属され、グローバル会議でファシリテーションを任せられて戸惑っているとのことでした。役員は、ただその場に座っているだけなのです。その会社が特別ダメだということではありません。だいたいの企業の日本人責任者は、グローバル会議を仕切れない場合が多いと思います。

稲垣 確かに日本では、社会心理学のような科目はありますが、HR専門の修士はあまり聞きません。

白木 ですから私はかねてから、HRの大学院またはそれに匹敵するような機関を作りたいと思っています。日本でも、世界レベルの競争で耐えられるHRの専門家を育てていくことが重要です。

海外現地法人のTOPと理念や戦略を共有すること

白木 日本の本社が抱えている重要な課題はまだまだあります。現地法人の外国人トップと日本本社が、充分なコミュニケーションを取れていないということも問題でしょう。日本企業はローカライズを進めようとしており、海外現地法人のトップをローカルにしようという動きが大きいと思います。

日本在外企業協会(JOEA)という日本の大手グローバル企業の多くが入っている協会があるのですが、そこが以前、海外現地法人約5千社を対象に「トップCEOが日本人であるかどうか」という質問をしました。すると、日本人がトップについている比率は75%くらいでした。この数字はその後もどんどん減っていると思います。ヨーロッパでは60%、アメリカでは70%くらい、中国でもどんどん日本人経営者を減らしています。また、「Non-Japaneseが子会社のトップになったときの問題は何か」と質問したところ、最も多かった回答は、外国人トップと日本本社とのコミュニケーションがうまく取れない、ということでした。
稲垣 それだとローカライズを進めることで、日本の求心力がなくなってしまうという問題を抱えてしまう……。

白木 そうです。海外現地法人のTOPと日本本社がコミュニケーションを取れていない、というのはおかしな話で、本来は“世界本社”である日本の経営理念や経営戦略を、しっかり理解していなければなりません。

たとえば、ネスレやGEにしても、海外子会社のトップにした人間を世界本社に呼び、「GEとは何なんだ」ということを泊まりこみで徹底的に教育します。しかし、日本の大企業でこの教育をやっている会社はごく少数です。海外現地法人の社長になった人たちは、経営者ではありますが、“世界本社”の下にあるわけですから、一堂に集まって、「わが社の経営理念はこうだ」、「経営戦略を実現させるためにはこういうストラテジでいこう」と、議論・共有するのが大前提のはずです。

稲垣 そう言われれば、インドネシアにある、ある日系大企業のローカルの経営陣は、その会社の理念を知りませんでした。今後、日本がグローバル化を進めていくためには、現地法人の経営陣を集めた研修などは必須ですね。

プロフェッショナルを教育する意識・制度

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