ワクワク感がイノベーションの源泉に

(インタビュー)
株式会社東急シェアリング 代表取締役社長 金山明煥氏


――御社がワーケーションを推進するに至った背景やきっかけを教えてください。

金山 歴史的な観点で見ると、もともと人間は遊動生活を送ってきましたが、文化の発展とともに定住という概念が拡大し、1stプレイス(=自宅)を所有するようになりました。次に産業革命以降、働くための場所として2ndプレイス(=職場)が普及し、通勤という概念が登場。これが分離的思考です。さらに労働生産性を上げるために余暇を与える場所として、レジャー産業が発達し、自宅でも職場でもない3rdプレイス(=リゾートや別荘など)が拡大していきました。1stプレイスと2ndプレイスだけの時代は、単に二項対立の図式でしたが、そこに3rdプレイスが加わったことで、分離的思考からシームレスな傾向へと変化。特に最近の若者は、家も仕事も遊びも融合させたシームレスライフを志向するようになっています。こうした背景を踏まえ、弊社が全国に展開するリゾート施設を拠点として、リゾートテレワークの実証に乗り出したのが始まりです。


――まさに働き方改革の一環というわけですね。

金山 おっしゃる通りです。東急グループでは、これまでもさまざまな働き方改革を推進してきましたが、次の一手としてワーケーションを捉えています。

――ワーケーションを実践することで、どのような効果が期待できるのでしょうか? 

金山 いくつかありますが、最も期待できるのは、やはりイノベーションの創出ではないでしょうか。そしてその道筋には2通りあります。1つ目は自然を体感することから生まれるもの。人間の脳は特に何もしていないときに極めて重要な働きをしていることが分かっており、こうした脳の安静時に働く特殊領域をデフォルト・モード・ネットワークと呼ぶのですが、まさに軽井沢のような自然環境の中で脳をリラックスさせると、都会では得られなかったような“ひらめき”が生み出されることがあります。また軽井沢駅に降りた瞬間、空気が違うじゃないですか。そこでマインドセットが変わるんです。何だかとてもワクワクしてくる。そういうワクワク感もまた、イノベーションを生み出す源泉になるでしょう。
そして2つ目は、対話から生まれるイノベーションです。こうした非日常の空間に身を置くと、コミュニケーションが円滑になり、人との対話が自然と増えていきますが、そうした中から新しいアイデアや発想が生まれることは言うまでもありません。

――社員にこういった場を提供することで、会社に対するロイヤリティも上がりますね。

金山 人手不足が深刻な中、社員のエンゲージメントを向上させるという意味でも有効だと思います。また今回は社員のみの参加でしたが、例えば金曜日はテレワークに当てて、土日はご家族を呼んで一緒に過ごすというケースもありです。社員満足度だけではなく、家族満足度も高められるのがワーケーションの魅力の一つでしょう。

――今後はどのようなビジョンをお持ちでしょうか?

金山 今回もそうでしたが、別の会社同士でコラボレーションすることで、今までにない発想や気づきが得られるはずです。そこで今後は、同じ時期に複数の企業の方を集めたり、合同研修を行うなど、他社との融合をテーマにしたプログラムも作っていければと思っております。オープンイノベーションの時代だからこそ、きっと新しい価値が生み出されるでしょう。今後ともぜひご期待ください。
株式会社東急シェアリング 代表取締役社長
金山 明煥(かなやま あきのり)氏


1984年入社以来、東急電鉄において東急グループの多様な事業分野における事業推進及び経営画を担当。主なプロジェクトは東京西南部地域に位置する東急沿線地域の長期開発計画の立案、バブル処理期における東急グループ(当時400社強)の再編の実施、不動産関連事業(6事業分野)の事業構造転換の推進、ICT事業の開発など。現在は東急電鉄㈱及び㈱東急シェアリングにおいてリゾートを主体としたホスピタリティ事業の運営及び構造転換を担当。
早稲田大学理工学部、米国マサチューセッツ工科大学大学院(修士)、東京大学大学院(工学博士)を修了。米国都市開発協会(ULI)評議委員、国際記念物遺跡会議(ICOMOS)委員。
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