学生に好評だったインターンシップに学ぶ

2020年卒をメイン対象としたサマーインターンシップが間もなく開催されるのを前に、昨年の夏から今年の2月にかけて開催された、19年卒をメイン対象としたインターンシップで学生の評判がよかった企業とその理由(プログラム内容)をご紹介します。今後のインターンシップの参考にしていただければと思います。

[図表4]は、学生が選んだ評判のよかったインターンシップ実施企業です。学生1人につき1社のみの投票になりますので、1社当たりの得票数はそれほど多くありません。ただ、複数企業のインターンシップに参加することが当たり前になっていることを考えれば、参加者にそれなりのインパクトを与えた企業ということになります。
第87回 2020卒でも重要施策!学生から評判の良かったインターンシップとは?
■1位 日本航空(JAL)
・仕事内容の説明やグループディスカッションのほか、パイロットの機長講話を聞いたり、仕事を体験することができた(早慶クラス/文系)
・グループディスカッション、機長講演、シミュレーター体験(早慶クラス/文系)
・就業体験 カウンター業務、ゲート業務(中堅私立大/文系)
・空港見学、成果発表(その他私立大/文系)
・体験プログラム、実際に働いてみる(その他私立大/文系)
・シミュレーター操縦(その他国公立大/文系)
・副パイロットとの対談(旧帝大クラス/理系)
・工場見学(旧帝大クラス/理系)

映像による紹介ではなく、航空会社ならではの体験や講師の話を盛り込んだ内容が学生にインパクトを与えています。室内でのセミナーやグループワーク形式ではないプログラムは、理解促進はもちろんのこと、他社との明確な差別化につながります。

■2位 三井住友海上火災保険
・さまざまな部門の知識を学び、チーム対抗でワークに取り組む。最終日には、自分たちで新しい保険の商品をプレゼンする(早慶クラス/文系)
・仕事体感ワーク(リスクマネジメント、営業、損害サポート、商品開発)(上位国公立大/文系)
・内定者の方が毎日フィードバックしてくれたこと(上位私立大/文系)
・1day リスクを考える(上位私立大/文系)
・職場受け入れ型(その他私立大/文系)
・企業説明、営業ロープレ、損害サービスロープレ、商品開発ワーク(上位私立大/理系)

「内定者が毎日フィードバック」が目を引きます。インターンシップは、本来「育成の場」であることを考えると、“気づき”につながるフィードバックは極めて重要な要素です。成長実感ができるプログラムを考える必要があります。2月の本稿でも取り上げていますが、参加者全員に何がしかのフィードバックがあるプログラムは35%しかありません(HR総研調べ)。ぜひフィードバックをしてあげてください。

■2位 ニトリ
・ジョブローテーションを体感するグループワーク、経営・マネジメントの仕事を体感するグループワーク、商品の企画について話し合うグループワークがあった(その他私立大/文系)
・カードを使ったビジネスゲーム(その他私立大/文系)
・グループワークを通してニトリの歴史や会社の仕組みをゲーム形式で体験する(上位私立大/文系)
・社員さんからのフィードバックがしっかりしている(旧帝大クラス/文系)
・企業説明、自己分析(旧帝大クラス/文系)
・体感的に仕事を知るワーク(上位国公立大/文系)
・グループワーク 模擬的な仕事体験(旧帝大クラス/理系)

体感型のビジネスゲームも学生には目新しいものになりますので、“気づき”や“発見”につながり、理解促進だけでなく貴社への好印象の醸成にも寄与します。「自己分析」など、就職支援につながるテーマも学生の評価が高いようです。

■4位 損害保険ジャパン日本興亜
・3日間のプログラムでグループワークによる業務体験と内定者との座談会が組み込まれていた(旧帝大クラス/文系)
・グループワーク(損害サービス部門、営業部門の業務体感)、内々定者からのフィードバック(上位私立大/文系)
・ケーススタディ(上位私立大/文系)
・内定者企画(上位私立大/文系)
・仕事体験型インターンシップ(早慶クラス/文系)

内定者の座談会を聞くだけのセミナー形式のインターンシップが多い中で、各グループに内定者が入り込んでの座談会・懇談会形式のほうが、気軽に質問できる雰囲気を醸成しますので、参加者の満足度はより高くなります。

■4位 オリエンタルランド
・事業体感(旧帝大クラス/理系)
・会社の中を見学でき、社員と話す時間が多い(上位私立大/理系)
・1日目 座学での会社説明、2日目 グループワークを通した擬似業務体験、3日目 支店での職場見学(上位私立大/理系)
・企業説明、社員座談会、施設見学、グループワーク(早慶クラス/理系)

文系よりも理系で同社を挙げた学生が多くなっています。理系学生は、研究所見学、工場見学、会社見学など、実際の職場を見学することを好む傾向が強いようです。

■6位 Plan・Do・See
・新規立案グループワーク。社内で実際に採用されている議論を進めていくノウハウを使ってできたので、社内の意思決定の方法を知ることができました(早慶クラス/文系)
・企画体験と、座談会(中堅私立大/文系)
・会社説明会 グループワーク 質疑応答(その他私立大/文系)
・社員座談会(上位私立大/文系)

■6位 SCSK
・要件定義~テストまでのシステム開発体験、社員との座談会、会社説明(その他国公立大/文系)
・システム開発の疑似体験(早慶クラス/文系)
・就職活動の際の学生同士のコミュニケーションを取りやすくするアプリケーション開発(その他国公立大/理系)
・3日間のうち、2日間はグループでプログラミング、1日は社員や内定者との座談会(上位国公立大/理系)
・6人のグループでサイトの要件定義をして、発表するというものでした(上位私立大/理系)
・働き方改革を推進している企業だが、インターンシップでも休憩時間は作業してはいけないなどしっかり取り組みされていることが分かったから(その他国公立大/理系)

■8位 NTTデータ
・新しいシステムの考案と具体的な詳細の設計(上位国公立大/文系)
・2週間の職場配属型。技術開発部において、サーバーとの通信ログを用いた異常検知の研究テーマに携わりました(早慶クラス/理系)
・新規ビジネスの創出のためのグループワーク(その他国公立大/理系)
・グループワークの後、フィードバックがあったこと(その他国公立大/理系)
・社員との座談会が複数回あった(上位国公立大/理系)
・アイデアソン(※)(上位私立大/理系)
※アイデアソン:アイデアとマラソンを組み合わせた造語。新しいアイデアを生み出すために行われるイベントで、主にIT分野で使われる。

■9位 ジェーシービー
・グループワーク(上位国公立大/文系)
・ゲーム形式で業務理解をする(上位私立大/文系)

■9位 クラブツーリズム
・体感型のバスツアー(上位私立大/文系)
・社員と話せる(上位私立大/文系)

■9位 楽天
・現場で働いている社員さんの話を聞くことができて、仕事の具体的な内容を分かりました(旧帝大クラス/文系)
・社内のいろいろな人の話が聞けた懇親会(早慶クラス/文系)
・社員さんと実際に関わりが持てるインターン(上位私立大/理系)
・課題解決ワーク、営業体験ワーク(旧帝大クラス/理系)

■9位 キリン
・マーケティング講義(早慶クラス/文系)
・工場見学や研究所見学、現場社員との交流(旧帝大クラス/理系)
・社員との交流、グループワーク、個人でのワークと発表、工場見学や研究所見学(旧帝大クラス/理系)

■9位 富士通
・ICTを活用した未来を考えること(その他私立大/文系)
・企画立案(上位私立大/文系)
・仕事体験(早慶クラス/理系)

■9位 全日本空輸(ANA)
・社員の方がとてもいい雰囲気だった(上位私立大/文系)
・参加型のインターンシップ。チームで議論する(早慶クラス/文系)
・格納庫見学(旧帝大クラス/理系)

学生に評判のよかったプログラムの企業を見てくると、必ずしも就職人気企業ランキングによく顔を出してくる企業ばかりではありません。インターンシップのプログラム次第で学生の評価を得ることは十分に可能です。ぜひ、他社との差別化が図られたプログラムの作成を心掛けていただければと思います。

なお、今回のコメントでは紹介していませんが、インターンシップは当日のプログラム内容だけでなく、参加者の事前選考方法に始まり、参加者・落選者へのフォローに至るまでトータルに計画を立てるようにしましょう。フォローというと、一般的には参加者の中で優秀だと思われた学生だけが対象だと思われがちですが、参加者だけでなく落選者のフォローまでを考える必要があります。インターンシップの事前選考に落ちた学生は、本選考に応募しても無駄だと考え、正式応募に至らないケースが少なくないからです。ぜひご注意を。
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