HR総合調査研究所が、2013年6月28日から7月10日にかけて実施した「新入社員研修に関するアンケート調査」の結果をもとに、入社前教育の実施状況、入社時導入研修の実施状況を報告する。
有効回答数は389社(1001名以上99社、301〜1000名127社、300名以下163社)。

7割が実施するが、小規模企業の実施率は低い入社前教育

入社前教育は以前からあったが、会社に内定者を定期的に呼んだり、先輩との座談の場を設けたりと、ふれあい的なものが多かった。しかし2000年代に入ってからはメールなどの連絡手段とeラーニングという教育手段が登場し、次第に内定者研修を行う企業が増えている。
 「1001名以上」と「301名〜1000名」では実施企業は7割に達している。しかし「300名以下」では62%にとどまっている。実施をためらわせている原因は、内定者の少なさや教育体制の不備だろう。

図表1:入社前教育の実施の有無

入社前教育の実施方法は集合研修が主体

入社前教育の実施方法では集合研修と課題・レポート提出が際だって多い。そしてこの二つは対になっていることも多い。座学やグループワークの集合研修を行い、課題を出してレポートを提出させるというやり方だ。課題・レポート提出を課している企業の56%は、集合研修も実施している。
 業種による違いも目立つ。集合研修と課題・レポート提出については、メーカーよりも非メーカーの方が20ポイントも高い。職場見学・実習も非メーカーの方が10ポイント高い。メーカーの場合には、文系・理系で入社後の業務が異なることから同一の研修を実施しづらい面と、卒業研究等で多忙な理系学生に配慮して、拘束する時間を必要最小限にしようとの思惑があるのであろう。
 逆にメーカーの通信教育(40%)は非メーカー(25%)よりも15ポイント多い。おそらく集合研修の代替的なものと、ITスキルなどの技術系通信教育を実施しているものと考えられる。

図表2:入社前教育の形態

入社前教育の目的は、マインドチェンジやモチベーション維持

なぜ入社前に教育するのか? 即戦力として働いてもらうための教育だろうか? 違う。確かに「業務知識・スキルの早期取得」(23%)や「早期戦力化」(15%)という回答もあるが意外にも少数派だ。
 もっとも多いのは「学生から社会人へのマインドチェンジ」(75%)であり、「内定者のモチベーション維持」(62%)が続いている。「自社への帰属意識」(44%)、「同期入社の結束感」(38%)などの回答を見ると、内定者の意識に関わるものが圧倒的に多い。

図表3:入社前教育の目的

入社時導入研修で目立つ「通い型」と「合宿型」の併用

入社時導入研修の実施は常識化している。「300名以下」の中小企業は9割を切っているが、中堅企業や大企業では9割を超えている。

図表4:入社時導入研修の実施の有無
導入研修の実施形態でもっとも多いのは「通い型」。企業に定時に出勤して研修施設で受講するタイプだ。「合宿型研修」を実施しているのは3分の1の企業で、「通い型」との併用企業はうち44%だ。
 次に多いのは「職場見学・実習」だが、業種によって実施状況が異なる。メーカー系の「職場見学・実習」は61%だが、非メーカー系は46%にとどまり、15ポイントの差がある。非メーカーは内定者の段階で職場見学・実習を済ませていることも数値が低い要因であろう。

図表5:入社時導入研修の形態
また、「合宿型研修」と「外部公開講座・研修」は企業規模による差が明らかに出ている。「合宿型研修」では、大企業が56%と過半数を超えているのに対して、中堅企業36%、中小企業に至ってはわずか16%にとどまる。一方、「外部公開講座・研修」では、大企業が14%なのに対して、中小企業では44%に達する。新入社員の多い大企業は、自社の研修施設や外部研修施設でオリジナルの研修を実施できるのに対して、新入社員の少ない中小企業では、外部研修機関が実施する公開講座に新入社員を送り込んだ方がコスト的にも抑えられる。自社内に講師を務められる人材が不足していることも一因だろう。

図表6:「合宿型研修」「外部公開講座・研修」の企業規模別比較

入社時導入研修の期間は企業規模に比例する

導入研修の期間だが、企業規模が大きいほど手間暇をかけて長く、規模が小さいほど短い傾向がある。そしてほぼ半分の企業が1カ月以内の研修期間だ。座学の研修、合宿、課題レポート提出、実習などのプログラムをこなせば1カ月程度になってしまう。
 3カ月以上の研修期間も少なくなく、2割以上ある。IT系企業ではプログラム言語習得のために長期間の技術研修を行うところがある。また仕事に必要な資格を取得させるために長期間の研修にしている企業もある。

図表7:入社時導入研修の期間

入社時導入研修の内容は「ビジネスマナー」と「社会人としての心構え」

入社時導入研修の内容で多い項目を上位から並べてみると、「ビジネスマナー」(93%)、「社会人としての心構え」(84%)が8割を超えている。続いて「企業の歴史・理念」(73%)、「各事業部の説明・見学・実習」(72%)、「業務知識・スキル」(65%)、「コンプライアンス」(60%)が6割を超えている項目だ。「情報管理・個人情報保護」(56%)と「コミュニケーション力向上」(50%)は5割を超えているが、他の項目は低く、「目標設定」(29%)、「PCスキル」(26%)は3割を切っている。また「語学」は7%と低く、国内でビジネスを行う企業にとって語学の優先度は低いことがわかる。

図表8:入社時導入研修の内容
また、強化している研修内容でも多いのは「ビジネスマナー」(43%)、「社会人としての心構え」(41%)と「コミュニケーション力向上」(31%)だ。

図表9:強化している入社時導入研修の内容
入社時導入研修の目的は入社前教育の目的と似ている。入社前教育では「学生から社会人へのマインドチェンジ」と「内定者のモチベーション維持」が群を抜いて多く、意識に関わるものが多かった。
 入社時導入研修でも最大の目的は「学生から社会人へのマインドチェンジ」(76%)だ。今回の設問で用意した項目は「コミュニケーション力養成」、「自律性養成」、「チームワーク養成」、「目標達成意識養成」、「積極性・チャレンジ精神養成」、「理念(ウェイ)の浸透」、「ビジネスマナー習得」、「業務知識・スキル習得」、「コンプライアンス・情報管理意識醸成」、「会社への帰属意識醸成」、「キャリアビジョン形成」、「メンタルヘルス対策」だが、いずれも4割以下であり、「キャリアビジョン形成」、「メンタルヘルス対策」は1割を切っている。
 各項目の数字は低いが、内容は社会人として振る舞う能力に関するものが多い。コミュニケーション力、ビジネスマナー、積極性、自律性、チームワーク、目標達成はいずれも社会人として必要な能力だ。

図表10:入社時導入研修の目的

【調査概要】

調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2013年6月28日〜7月10日
有効回答:389社(1001名以上99社、301〜1000名127社、300名以下163社)