コロナ禍における新卒採用活動として2度目となる2022年新卒採用。景況不安等による採用活動の停止も目立つ中、採用活動を継続する企業においてはどのような動向が見られるのだろうか。
HR総研では、新卒採用の動向について、毎年、採用広報解禁の3月と面接選考解禁の6月に定点調査を実施しており、今回は3月に調査した「2021年&2022年新卒採用動向調査」の結果について、以下にフリーコメントを含めて報告する。

<概要>
●コロナ禍でも内定者充足率は昨年水準と同等、充足率8割以上が4分の3
●「ターゲット層の応募者確保」に苦戦、「採用スケジュールの遅延対策」などコロナ禍特有の課題も
●2022年新卒採用計画は昨年よりさらにシビア、理系学生の採用を優先する傾向も
●「個別採用」に取り組む企業が8割以上、大企業でも7割以上が取り組む
●2022年新卒採用でも「ターゲット層の応募者確保」が最多の課題
●「自社採用ホームページ」など個別採用対策が優先施策に、インターンシップは後退
●半数以上が「インターンシップと採用選考を結びつける」、採用早期化の流れが加速か
●就職ナビの利用率「2サイト」以下が9割、個別採用では利用しない傾向も
●8割近くが自社の個別企業セミナーを開催
●インターンシップ採用実施企業の半数以上で2月までに面接開始
●ジョブ型採用の導入は2割、大企業でも3割にとどまる
●2023年卒学生向けインターンシップ、8月開催が復調の兆し

コロナ禍でも内定者充足率は昨年水準と同等、充足率8割以上が4分の3

まずは、「2021年4月入社の採用計画に対する内定者充足率」について聞いてみた。
2021年卒採用活動を行った企業では「100%以上」が40%で最も多く、次いで「90~100%未満」が25%、「80~90%未満」が8%などとなっており、充足率「80%以上」(「80~90%未満」~「100%以上」の合計、以下同じ)の企業の割合は73%と7割を超えている。一方、充足率「50%未満」(「0%」~「30~50%未満」の合計、以下同じ)で4月を迎える企業が16%ある(図表1)。
この結果は、昨年調査における「2020年4月入社の採用計画に対する内定者充足率」とほぼ同等の比率となっている。2021年新卒採用活動は、新型コロナの影響により延期や中断を余儀なくされる企業も多数あったものの、採用活動を継続した企業では昨年と同等の水準を満たすことができたことがうかがえる。
コロナ禍における2021年新卒採用活動において、どのようなことに苦労を感じる企業が多かったのだろうか。

【図表1】2021年4月入社内定者充足率

HR総研:2021年&2022年新卒採用動向調査 結果報告

最も苦労したのは「ターゲット層の応募者確保」、「採用スケジュールの遅延対策」などコロナ禍特有の課題も

「2021年新卒採用で苦労した点」については、最も多いのが「ターゲット層の応募者を集める」で38%、次いで「採用スケジュールの遅延対策」が33%、「オンライン面接の実施」が30%などとなっている(図表2)。「ターゲット層の応募者を集める」に関しては、例年企業が抱える課題として上位に挙がる項目であるが、昨年は、コロナ禍の影響で合同企業セミナー等のリアル開催ができなくなり、例年よりさらに厳しい状況となったことが推測される。また、「採用スケジュールの遅延対策」と「オンライン面接の実施」もコロナ禍の影響を強く受けたことによるものである。
昨年の採用活動は、コロナ禍により大きく混乱したが、昨年試行錯誤して得られた知見や経験を活かし、今年も継続するコロナ禍での採用活動では、より冷静かつ効果的に実施できているのではないだろうか。

【図表2】2021年新卒採用で苦労した点

HR総研:2021年&2022年新卒採用動向調査 結果報告

2022年新卒採用計画は昨年よりさらにシビア、理系学生の採用を優先する傾向も

続いて、2022年大卒採用活動の最新動向について見ていく。
2022年4月入社の大卒(大学院含む)採用計画数を2021年入社予定者数と比較すると、全体では、「前年並み」が最多で39%、次いで「採用なし」が22%、「未定」が20%となっており、2022年新卒採用活動を控える企業が2割を超えている(図表3-1)。一方、「増やす」は8%、「減らす」は11%となっており、「減らす」が「増やす」を3ポイント上回っている。昨年調査では「採用なし」が10%で、「増やす」が「減らす」を2ポイント上回っていたのに対し、「採用なし」の割合が倍増するとともに増減が逆転しており、シビアな採用計画であった昨年より、さらに強い採用抑制の状況となっていることがうかがえる。
また、企業規模別に見ると、「採用なし」について企業規模が小さいほど割合が高く、従業員数300名以下の中小企業では31%を占めている。
採用を実施する企業について文理別に見ると、「採用なし」については文系の13%が理系の2%より11ポイントも多く、「増やす」については理系の8%が文系の4%より4ポイント多くなっている。「前年並み」が文系・理系ともに最も高い割合を占めるものの、文系学生より理系学生を優先して採用したい企業が多い傾向が見られる(図表3-2)。

【図表3-1】企業規模別 2021年4月入社予定の大卒者に対する増減

HR総研:2021年&2022年新卒採用動向調査 結果報告

【図表3-2】文系・理系別 2021年4月入社予定の大卒者に対する増減

HR総研:2021年&2022年新卒採用動向調査 結果報告

「個別採用」に取り組む企業が8割以上、大企業でも7割以上が取り組む

採用手法の方針として、「マス型採用」(就職ナビや合同企業説明会などの従来型の採用手法)と「個別採用」(ダイレクトリクルーティングなどの少数または1対1の採用手法)の比重については、「個別採用に注力する」が32%、「マス型採用を主軸に個別採用にも取り組む」が31%などとなっており、少なくとも個別採用に取り組む企業の割合が84%と、8割を超えている(図表4-1)。昨年6月調査では、2021年卒採用で個別採用に取り組んだとする企業の割合は58%であり、2022年卒採用ではさらに個別採用に取り組む企業が増加していることがうかがえる。
企業規模別に見ると、中小企業において「個別採用に注力する」が44%と最も多くなっているとともに、従業員数301~1,000名の中堅企業で19%、1,001名以上の大企業でも20%なっている。採用計画人数が多い大企業や中堅企業においても、個別採用の比重を高める企業が多くなっていることが分かる(図表4-2)。

【図表4-1】マス型採用と個別採用の取組み状況

HR総研:2021年&2022年新卒採用動向調査 結果報告

【図表4-2】企業規模別 マス型採用と個別採用の取組み状況

HR総研:2021年&2022年新卒採用動向調査 結果報告

2022年新卒採用でも「ターゲット層の応募者確保」が最多の課題

次に、「2022年新卒採用における課題」を昨年調査と比較しながら見てみると「ターゲット層の応募者を集めたい」が41%と、昨年(49%)と同様に最も多くなっている。次いで「応募者の数を集めたい」が27%、「大学との関係を強化したい」が23%などとなっているが、いずれも昨年調査時より割合が低下している(図表5)。その中で、5番目に挙がっている「採用ホームページをもっとよくしたい」が20%で昨年の13%より7ポイント上昇しており、個別採用への取組み意向が反映された課題となっているのだろう。
一方、「大学との関係を強化したい」(今回23%、昨年42%)や「学内企業セミナーの参加大学を増やしたい」(今回10%、昨年27%)は昨年より大きく割合が低下している。コロナ禍において大学を訪問しづらい状況にあるとともに、マス型採用寄りの課題であることから、大学に関連する課題の優先度が低下傾向にあることがうかがえる。

【図表5-1】2022年新卒採用における課題(2021年新卒採用時との比較)

HR総研:2021年&2022年新卒採用動向調査 結果報告

最多の課題となっている「ターゲット層の応募者を集めたい」について、実施・検討している施策について、フリーコメントで具体的な内容を以下に紹介する(図表5-2)。

【図表5-2】ターゲット層を採用するために実施・検討している具体的施策(一部抜粋)

ターゲット層を採用するために実施・検討している施策従業員規模業種
バナー広告1,001名以上商社・流通
ターゲット大学主催の学内セミナー1,001名以上サービス
大学別セミナーへの参加1,001名以上サービス
特定大学との連携を深めていくことで、それなりの学生さんが応募してこられます301~1,000名メーカー
先輩社員を利用した学部教授への訪問。ターゲット校への訪問301~1,000名メーカー
採用した実績のない大学へのトップリクルーティング301~1,000名メーカー
理系学生中心であると分かりやすい求人内容・広告等。早期インターンシップ(オンライン)、未訪問学校への訪問、関係強化等301~1,000名メーカー
紹介に頼っているが、ナビサイトでフィルターしている300名以下商社・流通
先輩の活用300名以下メーカー
大学の就職担当教授などとのパイプ作り300名以下メーカー
大学への積極的なアプローチ300名以下メーカー
ダイレクトリクルーティング300名以下メーカー
キャリアセンターへの定期的な訪問300名以下運輸・不動産・エネルギー

「自社採用ホームページ」など個別採用対策が優先施策に、インターンシップは後退

次に、「2022年新卒採用で重視する施策」については、「自社採用ホームページ」が最多で30%、次いで「自社セミナー・説明会」が28%、「インターンシップ」が26%などとなっている(図表6-1)。課題点と同様に、重視する施策も昨年と大きく様変わりしていることが分かる。ここ数年、「インターシップ」が重視施策のトップにあったが、継続するコロナ禍での採用活動により、採用活動全般のオンライン化に対応せざるを得なくなったことで、これまでリアル開催をしていたインターンシップもオンライン化が迫られている。また、前述したとおり個別採用に注力する企業も増加する中、優先して取り組むべき重視施策が変化しているのだろう。
注力する採用手法別に重視施策を見ると、「マス型採用を重視する」企業群では、「就職ナビ」と「インターンシップ」がともに35%で最多となっている。一方、「個別採用を重視する」企業群では、「自社採用ホームページ」が37%で最多となり、次いで「自社セミナー・説明会」が25%などとなるとともに、「リファラル採用」については17%と高い割合ではないものの、「マス型採用を重視する」企業群の4倍以上のポイントとなっており、個別採用を重視する企業群における重視施策の特徴の一つとなっている(図表6-2)。

【図表6-1】2022年新卒採用で重視する施策(2021年新卒採用時との比較)

HR総研:2021年&2022年新卒採用動向調査 結果報告

【図表6-2】注力する採用手法別 2022年新卒採用で重視する施策

HR総研:2021年&2022年新卒採用動向調査 結果報告

このような重視する施策を前提として、2022年新卒採用で新しく始める取組みについて、フリーコメントで以下に一部抜粋して紹介する(図表6-3)

【図表6-3】2022年新卒採用で新しく始める取組み

2022年新卒採用で新しく始める取組み従業員規模業種
ナビサイト掲載を辞め、自社ページを中心とした採用活動を展開する1,001名以上商社・流通
AIマッチング型採用サービス導入1,001名以上サービス
企業説明会を職種別にすることです301~1,000名メーカー
ダイレクトリクルーティングを開始する301~1,000名メーカー
会社案内とは別の採用パンフレット作製301~1,000名メーカー
オンライン面接、自社作成の適性検査の導入301~1,000名サービス
フルリモートインターン301~1,000名情報・通信
秋季インターンシップと早期選考300名以下商社・流通
内定がでれば、福祉施設でバイトしてもらう300名以下サービス

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】2021年&2022年新卒採用動向調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2021年3月12日~24日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者、採用担当者、人事全般担当者
有効回答:142件

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