2月までは早期化が叫ばれていた2021年卒採用活動だが、3月以降、新型コロナウイルスによる多大な影響を受け、さらに新卒採用活動の真っ只中の4月には緊急事態宣言が発令され、これまで経験をしたことのない新たな形での採用活動を余儀なくされた。
コロナ禍で混迷を極める中、企業はどのような対応をしながら採用活動を行ってきたのだろうか。また、2022年卒採用活動にはどのような予測をしているのだろうか。
HR総研では、2021年卒採用活動及び2022年卒採用活動の最新動向について調査した。
その結果について、フリーコメントを含めて以下に報告する。

<概要>
●面接選考の開始時期は「2月以前」が3割以上、「8月以降」も2割近く
●オンラインを活用して面接をする企業は半数以上、大企業では8割以上
●すでに6割近くが最終面接までオンラインで実施済み
●内定出しは早期化から一転、新型コロナの影響で開始前も2割以上
●内定充足率は前年より低水準、中小企業では「0%」が半数以上
●内定者にインターンシップ参加者がいる割合は大企業で6割以上
●2022年卒採用でより重要になると思われる施策は「オンライン採用」
●インターンシップでの新型コロナ対策は「少人数制」「オンライン形式」、東京圏で特に多い
●オンライン形式では「1DAY仕事体験」が圧倒的
●インターンシップ実施の予定時期はやや後ろ倒しで「9月」が最多
●面接開始は「3月前半」が最多で15%、早期化にはブレーキか

面接選考の開始時期は「2月以前」が3割以上、「8月以降」も2割近く

2021年卒採用活動において、「面接選考を開始した時期(予定含む)」については、「8月以降」が最多で18%となっており、次いで「前年11月以前」が12%、「2月」「3月前半」がともに11%などとなっている(図表1-1)。したがって、本調査実施時期である6月末~7月初旬において未だ面接選考を開始していない企業が2割近くあり、前年より11ポイント増加していることが分かる。一方、すでに開始している企業の中では「前年11月以前」が最も多く、「前年11月以前」から「2月」までを合計した「2月以前に開始した企業」の割合は33%と3分の1となっており、前年の29%より4ポイント増加していることから、採用活動の早期化がうかがえる。しかし、「3月前半」~「5月前半」は前年より軒並み減少しており、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け、面接の延期や中断等をする企業が相次いだことが、このような動向の要因であるとともに、「8月以降」とする企業の中には、新型コロナの影響により採用活動の規模を縮小している企業も出ていることが推測される。
企業規模別で見ると、特に従業員数300名以下の中小企業では「8月以降」が27%と3割近くに上り、新型コロナによる採用スケジュールの遅延や採用規模の縮小などの影響が大きいことがうかがえる(図表1-2)。

【図表1-1】面接選考の開始時期(予定含む)

HR総研:2021年卒及び2022年卒採用活動動向調査 結果報告

【図表1-2】企業規模別 面接選考の開始時期(予定含む)

HR総研:2021年卒及び2022年卒採用活動動向調査 結果報告

オンラインを活用して面接をする企業は半数以上、大企業では8割以上

面接を実施している企業における「現在の面接選考の実施状況」については、「オンライン面接の他、対面でも実施」が34%で最多となり、次いで「対面での面接のみを実施」が27%、「オンライン面接のみを実施」が19%などとなっている。「オンラインのみを実施」と「オンライン面接の他、対面でも実施」を合計した「オンライン面接を実施」は53%で、半数以上に上っており、さらに「面接選考は終了した(オンライン利用あり)」を加えると、63%と6割以上が「オンライン面接を実施している/実施した」ことが分かる(図表2-1)。
企業規模別に見ると、「オンライン面接を実施している/実施した」の割合は、従業員数1001名以上の大企業では84%、301~1000名の中堅企業では76%と8割前後を占めている一方、中小企業では47%と半数未満にとどまっていることが分かる(図表2-2)。
やはり、大企業や中堅企業では採用活動のオンライン化に対応する企業が多く見られる中、中小企業ではオンライン化への対応に遅れを取っている企業が多くあることがうかがえる。

【図表2-1】現在の面接選考の実施状況

HR総研:2021年卒及び2022年卒採用活動動向調査 結果報告

【図表2-2】企業規模別 現在の面接選考の実施状況

HR総研:2021年卒及び2022年卒採用活動動向調査 結果報告

すでに6割近くが最終面接までオンラインで実施済み

「オンライン面接を実施している/実施した」という企業において、「最終面接までオンラインで実施する可能性」について聞いてみると、「すでにオンライン面接のみで実施した」が最も多く57%であり、次いで「対面型の面接も実施する予定」が28%、「検討中」が9%、「オンライン面接のみで実施予定」が6%となっている(図表3-1)。
したがって、オンラインを活用しながら面接を実施する企業では、6月末時点で6割近くが最終面接までオンラインで実施済みであり、採用スケジュールの大きな遅延なく採用活動を進行できていたことがうかがえる。
また、これを企業規模別に見ると、大企業では67%と7割近くが「すでにオンライン面接のみで実施した」としており、中堅企業では63%、中小企業では44%と、企業規模が大きいほど最終面接までオンラインのみで実施していたことが分かる(図表3-2)。
最終面接までオンラインで実施することについては、企業と学生がお互いに一度もリアルに会うことなく選考結果を決めることへのリスクなどに賛否あるだろうが、「採用スケジュールの遅延回避策」としては、明らかに効果が出ている。

【図表3-1】最終面接までオンラインで実施する可能性

HR総研:2021年卒及び2022年卒採用活動動向調査 結果報告

【図表3-2】最終面接までオンラインで実施する可能性

HR総研:2021年卒及び2022年卒採用活動動向調査 結果報告

オンライン面接を実施して良かった点と悪かった点(課題)

オンライン面接を実施した企業において、「オンライン面接を実施して良かった点」と「オンライン面接を実施して悪かった点」として多く挙げられた意見を以下に抜粋して紹介する(図表4-1)。
まず、「オンライン面接を実施して良かった点」としては、「時間的負担」、「経済的負担」、「新型コロナリスク」などを回避でき、業務効率化に繋がるとともに、「選考辞退率の低下」や「学生の精神的負担の軽減」などもメリットとして挙げる企業も多く見られる。

【図表4-1】オンライン面接を実施して良かった点(一部抜粋)

オンライン面接の良かった点従業員規模業種
学生の中には緊張感が和らぐという意見が多かった。会社側は遠地の学生の面接が容易になった。1001名以上サービス
コスト削減1001名以上サービス
業務効率化につながった1001名以上メーカー
対面での面接が出来る日を待っていたらほぼ採用が出来ていなかった1001名以上商社・流通
面接官の拘束時間が少ない、応募者の参加率が高い301~1000名サービス
新型コロナリスクの心配が少ないこと。301~1000名メーカー
場所の制約を受けないので、在宅時でも対応できる。会場の設定がいらない。移動時間・費用がかからない。301~1000名メーカー
テレワークで実施が可能301~1000名情報・通信
学生がリラックス300名以下サービス
面接内容を録画出来るので、記録化が容易。300名以下メーカー
日程調整がしやすい、遠方の学生も昨年より多く集まった300名以下金融
言語化能力を評価しやすくなった。また当日の受付や交通費の支払いなどの負担が軽減した。300名以下マスコミ・コンサル

一方、「オンライン面接を実施して悪かった点」としては、「学生の本音」、」「雰囲気」、「熱意」などを推し量りづらい点、「通信回線トラブル」に加え、「業界ごとの適性の評価」、学生のリラックスし過ぎによる「緊張感の欠如」などのデメリットも多く挙げられている(図表4-2)。
今年度の経験を基に、オンラインの良い点と悪い点を適切に把握した上で、今後は、オンラインと対面のメリットを効果的に活用した面接の実施を、模索していく必要がありそうだ。

【図表4-2】オンライン面接を実施して悪かった点(一部抜粋)

オンライン面接の悪かった点従業員規模業種
本音がつかみづらい1001名以上サービス
グループワークができなかった1001名以上メーカー
アパレル企業なので、通常は私服で面接に参加してもらっているが、オンラインでは雰囲気が掴み辛い面がある。学生の反応が見えにくい。1001名以上メーカー
オンラインだと用意している紙を読み上げる学生がいてもわからないため、実際の人柄やストレス耐性などの見極めが難しい点1001名以上情報・通信
表情、声などニュアンスが伝わりづらい。接客業なので人当たりの良さなどが必要だが細かいところがよく見えてこない301~1000名サービス
所作が見えない301~1000名メーカー
自社の魅力が上手く伝わらない301~1000名情報・通信
気軽に参加できてしまうため、その分受けている態度や意識が低い301~1000名情報・通信
所作や雰囲気、熱意を確認しづらい。緊張感がない301~1000名金融
面接官がオンライン面接に慣れていない300名以下サービス
若干のタイムラグがあること、お互い表情が見えにくいこと300名以下メーカー
実際の働く環境を見せづらい300名以下情報・通信
接続トラブルに備えて余裕を持たせたスケジュールにしたため、連続して面接することができず、面接官の予定が細切れになってしまった300名以下マスコミ・コンサル

内定出しは早期化から一転、新型コロナの影響で開始前も2割以上

「文系の内定出しの開始時期」については、「8月以降」が23%で最も多く、次いで「前年11月以前」と「7月前半」がともに8%などとなっている。面接の開始時期の遅れに伴い、未だ内定出しが始まっていない企業が大きく増加し、「8月以降」は前年より16ポイント増加している。一方、「3月後半」から「4月後半」については、前年より大きく減少している(図表5-1)。
前年は5月の大型連休が10連休だったことで、連休前に内定を出す企業が多かったことも影響していると推測されるものの、今年は「3月前半」までは前年並み以上に内定出しの早期化が見られた中で、明らかに「3月後半」から急速にブレーキがかかっている。この大きな要因の一つとして、新型コロナの深刻な影響を受けた企業が、採用活動の延期とともに、経営状況の悪化による採用規模の縮小を検討するという動きが増加したことがあるだろう。

「理系の内定出しの開始時期」については、文系より早期化が顕著に見られており、「2月」以前に開始した企業は21%となっている。しかし、3月以降は文系と同様に軒並み大きく減少しており、文系・理系ともに新型コロナの影響で採用活動が滞る傾向が見られている(図表5-2)。
結果的に、採用活動を縮小せずに実施する意向のある企業においては、「2月」以前に内定出しを開始していた方が採用スケジュールの遅延のリスクを抑えることができたことが推測される。今後、Withコロナにおける採用活動を滞りなく進めていくための一つの手段として、採用活動の早期化を図る企業も出てくるのではないだろうか。

【図表5-1】内定出しの開始時期(文系)

HR総研:2021年卒及び2022年卒採用活動動向調査 結果報告

【図表5-2】内定出しの開始時期(理系)

HR総研:2021年卒及び2022年卒採用活動動向調査 結果報告

内定充足率は前年より低水準、中小企業では「0%」が半数以上

採用スケジュールが遅延している企業が多い中、現時点での採用計画に対する内定充足率はどのようになっているのだろうか。
「6月後半時点での内定充足率」は、「0%」が36%で最も多く、次いで「80~100%」が12%、「20%未満」、「40~60%未満」、「100~120%未満」がともに11%などとなっている。「0%」と「20%未満」を合計すると47%と半数近くを占めている(図表6-1)。
企業規模別に見ると、特に中小企業が深刻であり、「0%」が53%に上っており、「80%」以上とする企業は19%と2割未満にとどまっている。しかし、内定充足率が前年より低下しているのは中小企業だけではなく、大企業及び中堅企業においても同様で、大企業では「0%」の割合が前年より8ポイント増加し、中堅企業でも3ポイント増加しており、いずれの企業規模においても、2021年卒採用活動は厳しい進捗にあることが明らかとなっている(図表6-2)。

【図表6-1】6月後半時点での内定充足率

HR総研:2021年卒及び2022年卒採用活動動向調査 結果報告

【図表6-2】企業規模別 6月後半時点での内定充足率

HR総研:2021年卒及び2022年卒採用活動動向調査 結果報告

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】2021年卒&2022年卒採用動向に関する調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2020年6月26日~7月2日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場企業・未上場企業の採用担当者
有効回答:240件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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Eメール:souken@hrpro.co.jp

※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。

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