ProFuture株式会社 代表取締役社長/HR総研 所長
寺澤 康介
須東朋広さん~専修大学商学部特任教授、一般社団法人才知修養学舎代表理事~が、去る2026年6月11日に逝去されました。突然の訃報に接し、6月17日の告別式に参列しましたが、未だに信じられない思いです。日本企業の人事領域の発展に尽くし、常に温かいまなざしで働く人たちの現場を見つめ続けてこられた須東さんの偉大な足跡を振り返り、心からの哀悼の意を表します。
私と須東さんの出会いは2011年頃にさかのぼります。当時から日本の人事領域において卓越した先見性と行動力を発揮されていた須東さんと出会い、それ以来、公私にわたり大変お世話になりました。
翌2012年、弊社が「HR総研」を設立した際には、その理念に深く共感していただき客員研究員になっていただきました。その後、当社が主催する「HRサミット」にも幾度となくご登壇いただき、専門的でありながら血の通った持論を多くの人事担当者へ向けて発信してくださいました。私自身、仕事面のみならずプライベートに至るまでアドバイスをいただき、どれほど助けられたか分かりません。須東さんは私にとって、単なるビジネスパートナーを超えた人生の恩人であり、心から信頼できる大切な友人でした。
須東さんの歩んでこられた略歴は、まさに日本の人事コミュニティの歴史そのものです。
2003年には、日本初の人事責任者向け団体「日本CHO協会」を立ち上げ、事務局長としてその基盤を築かれました。2019年には「日本CHRO協会」の立ち上げに従事し、翌2020年には日経新聞・日経BP共催の人事役員コミュニティ「Human Capital Committee」の企画・運営に参画。また、2011年にインテリジェンスHITO総研(現パーソル総研)を立ち上げ、リサーチ部門の責任者として5年間、中高年や女性、障がい者、転職人材のキャリア研究に尽力されました。
そして、誰もがイキイキと働き続けられる社会を目指し、須東さんは2016年に一般社団法人組織内サイレントマイノリティを立ち上げました。当時、起業にあたって私に寄せてくださった文書には、その熱い信念が克明に綴られていました。
「起業の目的は組織内で弱者扱いされているシニアやミドル、障がい者、制約社員(時短女性、介護)がイキイキ働くことができるようにしていくことです。日本企業において人手不足やイノベーションが生まれないといった課題が新聞を賑わせています。それは組織内で弱者扱いされている方々のモチベーション問題が大きく、組織や職場において当事者意識を持つことができずに生産性が上がらない・新しいものが生まれないといった現象に表れているものと思われます。そういった方々がどうしたらやる気を取り戻せるのか、みんながイキイキと活躍できる組織になるための具体的な施策の提言などの草の根活動を行っていきたいと思います。これから想定外のことが起こりまくるかと思いますが自分のやりたいことは社会の問題を解決することだと強い信念を持って邁進していきます。」
この言葉通り、須東さんは常に企業内の「弱者」とされる方々に温かい光を当て続けました。近年では、企業のCHRO陣とともに「人生100年80歳現役社会創造コンソーシアム」や「日本人材戦略コンソーシアム」を立ち上げ、80歳現役でイキイキと働き続けられる社会の実現へ向けて邁進されていました。
企業の人事役員の方々と議論を交わしながら、須東さんの視線は常に、現場の一人ひとりの労働者や、声なき
マイノリティに向けられていました。そのお人柄はどこまでも謙虚で優しく、社会をより良くするという情熱に満ちあふれた、本当に素晴らしい方でした。
須東さんが志半ばで旅立たれたことは無念でなりませんが、誰もがイキイキと活躍できる組織を創るという思いは、HR総研をはじめ、須東さんを慕ってきた数多くの人事パーソンや研究者、人事に関わる事業者などの中に確実に引き継がれていくと思います。
須東さん、これまでのすべてに心から感謝申し上げます。どうか安らかにお眠りください。