企業は、従業員側と一定の労使協定を締結するにあたって、従業員の過半数で組織される労働組合(過半数組合)がない場合、従業員の過半数を代表する者(過半数代表)を従業員代表として協定を締結することが労働基準法で定められています。該当する労使協定は、時間外労働・休日労働に関する協定(いわゆる「36協定」)やフレックスタイム制、変形労働時間制などに関するものです。

また、就業規則の作成・変更にあたっても同様に、従業員の過半数で組織される労働組合がない場合、従業員の過半数を代表する者の意見を聴き、その結果を書面にして届け出ることが労働基準法で義務付けられています。ただし、その際に、同意を得ることや協議、話し合いをすることが求められているのではなく、あくまでも、どのような意見があるのかを聴取し、書面にして届け出れば手続き違反にはなりません。

これらが「従業員代表制」と呼ばれているものです。

従業員代表を選出する際には、管理監督者以外の者から、「この協定を締結するため従業員代表を選びます」というように代表選出の目的を明らかにした上で、投票や挙手などの民主的な手続きで行う必要があります。従業員を集めることが難しい場合は、「従業員代表として○○を選出することに同意します」などと記載した文書を全従業員に回覧し、承認するかしないかを記入してもらうという方法でもかまいません。

そして、選出後は、企業側は選出された従業員代表に対し、過半数代表者であること、過半数代表者になろうとしたこと、あるいは過半数代表者として正当な行為をしたことを理由に不利益な取り扱いをしないようにしなければなりません。

近年、労働組合の組織率は年々低下し続けており、労働組合がある企業でも組合員が全従業員の過半数を占めていない場合が増えています。こうした時代の変化で、従業員の過半数代表者が果たす役割は大きくなってきました。ただし、現在の従業員代表制については、あり方や権限、責任などを見直す必要があるとの意見も聞かれます。ドイツなどのヨーロッパ諸国では常設的、包括的な従業員代表制が法制化されており、今後、日本でもそうした法制化を求める動きが強まってくるかもしれません。