目まぐるしく変わるビジネス環境の中で企業が持続的な成長をするには、何が必要なのか。旭化成グループは「終身成長」と「共創力」を掲げ、多様な社員一人ひとりの挑戦や成長を促す人材戦略を実践し、企業価値向上につなげている。本講演では、旭化成株式会社 上席執行役員 人事担当 西川知氏とファシリテーターを務める一橋大学 伊藤邦雄氏が、変化する時代の中での人材育成のヒントをお届けする。
多様な社員一人ひとりのキャリア自律に向けた、旭化成の「終身成長」と「共創」を軸にした人事施策

「人的資本経営」の最新状況

一橋大学 CFO教育研究センター長 伊藤 邦雄氏

これから起こる「人的資本経営」の二極化

多様な社員一人ひとりのキャリア自律に向けた、旭化成の「終身成長」と「共創」を軸にした人事施策
この1年で時代は動き、人事・人材のテーマは「人事マター」から「経営マター」になったと、みなさんも感じているのではないでしょうか。しかし、人的資本経営には取り組んでいるものの、どうも「やれている感」がないという声を、かなり多くの方からいただきます。それはなぜなのか、現在地の課題をお話していきます。

これから間違いなく、人的資本経営を巡る二極化が起こっていくでしょう。本格的に人的資本経営に取り組む企業と、従来の人材育成を踏襲しながらラベルを張り替えているだけの企業。それはステークホルダーに見抜かれてしまいます。さらに、「人的資本」という言葉は膾炙しましたが、なぜ「人的資源」ではなく「人的資本」なのか、その本質的な意味合いを理解していないケースも散見されます。そこをぜひ理解して進めていただきたいです。

それから「自律的キャリア形成」「キャリアオーナーシップ」は、みなさんの会社で進んでいますか。先日プライム市場上場企業に調査をしたところ、日本企業は「自律的キャリア形成」が進んでいないことが改めて分かりました。

さらに今、リスキリングが声高に叫ばれており、必要性も認識されています。この後、旭化成での非常に素晴らしいリスキリングの取り組みを紹介いただきますが、多くの会社ではまだ学習メニューを提供するだけで、個人に任せっぱなしのことが多いです。もう少し会社の戦略的方向性を示して、理解してもらった上でリスキリングに取り組んでもらうことが必要です。

それからジョブ型あるいは職能給を取り入れる企業が増えています。ところが、人的資本経営がかなり進んでいる企業の人事と話をしていると、「ジョブディスクリプション(JD)を1人1人に合わせて作ってしまうので、社員の数だけJDが存在してしまう」という悩みが出てきています。

それから2023年は「人的資本情報開示元年」ですが、まだ手探りの状態です。「ストーリー性」をどう作りこんでいくのかがポイントとなります。

そして、投資家と対話する際、自社のエンゲージメントスコアの高さを誇る会社もありますが、投資家は例えばオープンワークのデータなど、様々な情報源を持っています。そうしたデータと、企業が話す情報を突き合わせながら対話をしていることに、留意いただけるといいと思います。

そしてChatGPTをはじめとする生成AIを、いかに人事に活用すべきか、人事の仕事がどの程度代替されるのか、楽観視はできません。

2024年に向けた人事の役割

続いて、来年に向けたアジェンダを提示いたします。

まず、KPI化は非常に重要です。そして人的資本情報開示のプロジェクトは、ぜひ全社横断で進めてください。それから社員のスキルを可視化することも大切です。今のところ最も進捗していない「自律的なキャリア形成」は、会社がもっと支援する仕組みを作る必要があります。リスキリングの機会を会社が提供し、社員も主体的に取り組むようにしていただきたいです。そして日本は「褒める文化」が薄いのですが、ぜひこの文化を醸成し、enablerを増やしていきましょう。

さらに、中期経営計画の策定に最初から人事部門も入り、「人」のテーマを入れながら議論していくことが大事になります。そして企業文化の変革や対話の進捗状況を可視化しましょう。例えば「心理的安全性を組み込んでいる」という会社は多いですが、その度合いを可視化できている企業はほとんどありません。CHROとCFOとの対話の促進も、ますます重要になっていきます。人的資本に関わるKPIを役員報酬のスキームに入れることも、ぜひ検討されてはいかがでしょうか。

私からの提言は以上です。ここから、旭化成の西川さんに人材育成についてお話いただきます。

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