企業が新卒採用の選考時に「大学の学業成績」を重視するという動きが、いま注目を集めている。NPO法人のDSSが全国の有力大学の授業内容の評価をもとに、学生の成績を客観的に判断する情報を提供することで、参画企業は14年1月以降、エントリーシートに加えて選考材料にするとのことだ。
採用選考に学業成績を重視する傾向は広まるか?

大学の成績の選考での取り扱い

 2013年12月に日本経済新聞に出た実施企業は以下の通りである。

 三井物産 三菱商事 東レ プルデンシャル生命保険 清水建設 大塚製薬 東急エージェンシー セブン―イレブン・ジャパン 三井化学 KADOKAWA 凸版印刷 富士通 帝人 日本たばこ産業 リクルートホールディングス

 果たして、この動きは広がりを見せるだろうか。

 HR総研が企業人事に対して2013年12月にアンケート調査を実施したところ、「これまでも成績を加味してきた」30%、「成績より面接重視だ」25%、「成績を選考の材料にするつもりだ」16%、「大学ごとの成績の基準が異なり参考にならない」14%、「大学の成績と企業での業績は関連しない」9%という結果になった。今後新たに成績を参考にするとしているのは16%だから、まあまあ増えそうだ。

 大学成績を「選考材料にしている」「今後するつもり」の合計が46%で、ほぼ半数となる。逆に参考にしないのが48%と、ほぼ拮抗している。ただし、メーカー、非メーカーで分けてみると、大きな差がある。
 メーカーでは、「選考材料にしている」「今後するつもり」の合計が56%に対して、非メーカーでは40%になっている。理系学生の方が文系学生より成績がより業務につながっているということだろう。

 企業の声を拾ってみよう。

・実際の試験の方が公平(その他サービス1001名~5000名)

・大学での成績より、何に関心を持ってどのように取り組んできたかが重要だと思うし、大学の教授によって単位の取りやすさも違うので、優だろうと可だろうとどちらでも良い。(専門商社101名~300名)

・いまどきの大学の成績にどれだけの価値があるのか疑問がある。成績よりも、大学時代にいかに充実した時間を過ごし、自己成長につながったのかを重視したい。(運輸・倉庫・輸送1001名~5000名)

・これまでからも成績証明書を求めて、選考時に活用している。成績が優秀であれば採用するというわけではない。あくまで総合的に人物を判断するための材料として活用している。(ビジネスコンサルタント・シンクタンク101名~300名)

・学生時代の学業を疎かにしない学生は、企業へ入っても一つ一つの業務に対してもまじめに取り組んでいる。(専門商社101名~300名)

・既に実施している。理系の採用においてはかなり重要な指標として扱っている。(化学301名~500名)

・学生の本分は学業であるからして、当然のこと。ただし、大学によって評価基準が異なるため、一律に成績を評価に換算することはできない。(情報処理・ソフトウェア51名~100名)

・学生の就職を有利にさせようと思い、甘い成績評価をする大学が増えませんか?全国統一のカリキュラム、基準など作成できるわけがないのですから、こうした話が出てくること自体、面接する人間の責任回避傾向の現われだと思います。(百貨店・ストア・専門店301名~500名)

 意見は割れているようだ。そもそも大学の学業と企業での成績は関係ないという考え、大学ごとの評価基準がバラバラで当てにならないという考え、学業に向かう姿勢を評価し参考程度のする考え、学業と企業での成績の関係性を認め、積極的に評価する考えなどに整理できる。

 NPO法人のDSSが主張するように、「教授は研究重視で授業がいい加減」→「学生が楽な単位を取得」→「企業が学業を評価しない」→「学生が楽な単位を取得」という、負のスパイラルが生じていることは間違いない。ただ、企業からすると、企業から評価の取り入れる前に、大学がちゃんとした授業をしてほしいというのが本音だろう。

 またDSSは、「大学ごとに成績評価の方法が違うため、異なる大学の成績を4段階で評価し直す共通の指標も用意」するという。どこまで客観的な指標となり得ているか、注目されるところだ。欧米の大学等で使われている、統一した成績評価方式、GPA(Grade Point Average)がもっと普及すれば、採用選考時に学業成績を参考にする企業はもっと増えると思われる。
 日本の大学生がもっと勉強しなければならないことは間違いない。こうした取り組みが活発になることを期待したい。


HRプロ 代表/HR総合調査研究所 所長 寺澤康介

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