富士通株式会社は2023年4月20日、パナソニックホールディングス株式会社など4社のCHRO(最高人事責任者)等とともに2022年3月より実施してきた、「CHROラウンドテーブル」の成果をまとめた「CHRO Roundtable Report」を公開した。本レポートには、企業の価値向上につながる「人的資本価値向上モデル」などが記載されているとのことだ。同社は、議論で得られた幅広い洞察や知見に基づき、高度な人的資本データを可視化することなどで、企業を支援していく方針だ。
“人的資本経営の実践手法”をまとめたレポートを富士通が公開。企業価値向上につながるモデルを提示

経営戦略と連携した人事戦略の実践方法や、企業価値向上につながるストーリー検討過程などをレポート化

富士通は、「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」というパーパスを掲げ、その実現を目指し企業活動を推進している。そうした中、同社は2022年より、幅広い業種における企業の経営層(CxOクラス)とともに社会課題解決にフォーカスして議論を重ね、社会へ提言していく場とするべく「CxOラウンドテーブル」プロジェクトを開始した。2022年度はCHRO(最高人事責任者)を対象にした「CHROラウンドテーブル」や、CTO(最高技術責任者)を対象にした「CTOラウンドテーブル」、さらにはCMO(最高マーケティング責任者)を対象にした「CMOラウンドテーブル」を立ち上げ、取り組みを加速させているという。

「CHROラウンドテーブル」においては、近年注目が集まる「人的資本経営」をテーマとし、経営戦略と連動した人事戦略の実践方法や、人的資本に関わるデータをどのように可視化し、ステークホルダーへ伝えていくかを課題としたとのことだ。議論の中では、さまざまな仮説を基にデータを用いた検証を実施。今回、その議論で得られた成果を「CHRO Roundtable Report」として公開した。

本レポートでは、CHROラウンドテーブルに参加した各社と人的資本への投資がどのように企業の価値向上につながっているかを可視化するためのモデル(以下、人的資本価値向上モデル)を作成。本モデルを活用した企業価値向上につながるストーリーの検討過程のほか、ストーリーに紐づく重点施策および企業価値向上の指標となる人事データなどの分析結果や、人的資本経営の実践手法も取りまとめているとのことだ。

企業価値向上につながる人的資本経営の全体構造を可視化。説得力あるストーリーの構築へ

本レポートでは、富士通とCHROラウンドテーブルの参加企業が議論を重ね作成した「人的資本価値向上モデル」として、経営戦略実現に必要不可欠な人材戦略上の取り組みをフレームワークで示している。このモデルに人事施策をプロットし整理することで、それぞれの施策がどのように企業価値向上につながっているのか、全体構造を捉えて可視化することができるとしている。
“人的資本経営の実践手法”をまとめたレポートを富士通が公開。企業価値向上につながるモデルを提示
さらに、人的資本価値向上モデルの主な活用プロセスについても、4つのステップに分けて示している。概要は以下の通り。


<人的資本価値向上モデルを活用するプロセス>


【ステップ1】共有する
●人的資本経営のストーリー構成要素と仮説の策定
●企業価値向上に関わると想定されるデータの精査・集約

【ステップ2】可視化する
●ステップ1で抽出した要素を「人的資本価値向上モデル」にあてはめ整理。全体像を可視化
●できる限り多くの人材データと財務データ(売上高・営業利益など)との相関を分析し可視化
●「成果を生むための取り組み」と「持続的効果を生むための取り組み」について、それぞれの施策観の関係性、つながりをストーリーに基づき検討し、重点施策の仮説を立てる

【ステップ3】検証する
●財務データと相関の強い指標と、仮説を立てた重点施策との関わりを検討。企業価値向上とどうつながるかをストーリーに基づきデータ検証し、重点施策を特定
●重点施策(アウトプット)とそれにつながる施策(インプット)のデータを分析し、重点施策の効果を高めるため、どのような施策や活動が重要かを把握

【ステップ4】ストーリーを再構成する
●どの施策を重点施策とし企業価値向上を目指すのかを、データの裏付けに基づいた説得力のあるストーリーで再構築
●ストーリーを汎用的な「人的資本価値向上モデル」を用いて伝えることで、社内外に伝わりやすくかつ説得力のある人事施策の戦略的実行につなげられる


富士通は、今後もCHROラウンドテーブルへの参加企業を拡充し、人的資本価値向上モデルの高度化に向けた検証を継続して行うとしている。それにより得られた幅広い洞察・知見に基づいて、それぞれの企業が経営戦略と連動した独自の人事戦略を実践できるよう、より高度な人的資本データの可視化などを支援していきたい考えだ。

人的資本経営に対する関心は高まりつつあるが、「どのような取り組みを実践していくか」については明確な把握ができていない企業もあるだろう。今後人的資本経営を進めていきたい企業は、フレームワークならびに活用ステップが記載された本レポートを活用するなどして、企業価値向上につながる課題や施策を可視化させてみてはいかがだろうか。

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