一般社団法人社会実装推進センター(以下、JISSUI)は2022年7月29日、経済産業省の令和3(2021)年度補正「新たな学び直し・キャリアパス促進事業(客員起業家活用企業等実証支援委託事業)」の受託事業者として、一般企業からの公募を実施し、審査の結果9事業者の採択を行なったと発表した。JISSUIは、実証事業について採択企業への調査を実施し、客員起業家活用に関するナレッジを記した「EIR活用の手引き(仮)」の作成を進めたい考えだ。
「客員起業家(EIR)の活用に係る実証事業」受託事業者のJISSUI、モデル事業者9社を採択。ナレッジのガイドライン化へ

「起業家のセーフティネット構築」と「企業のオープンイノベーション」を同時に推進

客員起業家(EIR:Entrepreneur in Residence)とは、企業内に新規事業創出等のミッションをもって雇用等をされる、起業経験者や起業準備を行う者のこと。EIRの活用は、起業家にとっては「起業準備期間のセーフティネット」や「起業経験者の新たなキャリア」として機能する。また、企業にとっては、社内にないノウハウや経験を活用することで、社内改革や新規事業創出を推進できるものだ。こうした理由から、客員起業家(EIR)活用は、起業の増加およびオープンイノベーションの促進につながっていくことが期待される取り組みとして注目されている。
客員起業家(EIR)活用制度
しかし国内では、起業経験が評価される中途採用の仕組みが確立されていないなどの背景から、EIRを活用する制度は未整備であるのが現状だ。そこでJISSUIは、経産省の委託事業として、「EIRの活用に係る実証事業」の実施を決定し、モデル事業者を募集した。本事業は、イノベーションの創出に向けて、「起業準備を行う者」や「新規事業の開発等に関する知見を有する者」等をEIRとして一定期間以上雇用・委託等を行う企業の取り組みを支援しつつ、先端事例として取り上げるもの。本事業において採択された企業では、2022年8月~2023年2月の期間において、実証事業を実施するという。

なお、現時点での「EIR活用パターン」は大きく3種類に分類される。1つ目は、起業家のトライ&エラーにより、事業領域・投資先を探索する「起業支援・事業領域開拓型」。2つ目は、有効活用できていない知的財産・リソース等を一時的に開放し、事業化につなげる「シーズ等活用型」。3つ目は、起業家と社員が触れ合うことで、新規事業開発のノウハウやスキル等を獲得する「社内変革推進型」だ。それぞれのパターンによって、EIRの役割やコミットの仕方が異なるという。今回、採択された9事業者とEIR活用パターンは以下の通り。

1.株式会社ガイアックス(起業支援・事業領域開拓型)
2.ジャフコグループ株式会社(起業支援・事業領域開拓型)
3.Studio ENTRE株式会社(起業支援・事業領域開拓型)
4.株式会社デライト・ベンチャーズ(起業支援・事業領域開拓型)
5.東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(起業支援・事業領域開拓型)
6.京都大学イノベーションキャピタル株式会社(シーズ等活用型)
7.株式会社みらい創造機構(シーズ等活用型)
8.南海電気鉄道株式会社(社内変革推進型)
9.三菱地所株式会社(社内変革推進型)


JISSUIは、今回採択された事業者の実証支援を通じて、EIR活用の先端事例を創出するとともに、EIR活用に関するナレッジを記した「EIR活用の手引き(仮)」のガイドライン化を進めていきたい考えだ。なお、JISSUIが設置した特設サイトでは、本事業に関連する情報を随時配信している。また、ガイドラインは2023年2月末以降に一般公開予定だという。
「EIRの活用に係る実証事業」の仕組み
経産省の推進しているEIR活用促進事業において、本ガイドラインはその施策効果を示す1つの指針となりそうだ。EIR活用を検討している企業では、モデル事業者の取り組み事例等を参考にしながら、体制の整備などを検討してみてはいかがだろうか。

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