テレワーク環境で上司・部下間のすれ違いが拡大傾向。立場による「コミュニケーション不全」が起きる理由とは

株式会社リクルートマネジメントソリューションズは2021年2月、「上司・部下間のコミュニケーションに関する実態調査」の結果を発表した。調査期間は2020年9月28日〜29日で、従業員規模300名以上の企業に正社員として勤務する一般社員443名と、部下を持つ課長相当の管理職286名から回答を得た。これにより、テレワーク環境におけるコミュニケーションの実態と、上司・部下間の認識のズレなどが明らかとなった。

上司・部下の間で「コミュニケーションが取れていない」と感じている項目とは

テレワーク環境下において、上司・部下間のコミュニケーションは円滑に行われているのだろうか。管理職(上司側)と一般社員(部下側)に分け、15の項目について、コミュニケーションの所感を6段階で回答してもらい、その平均点を算出した。

※得点順は以下の通り
1:とても不十分である/2:不十分である/3:どちらかといえば不十分である/4:どちらかといえば不十分である/5:十分である/6:とても十分である

全般的に、一般社員より管理職の得点が高い項目が多く、「コミュニケーションは十分取れている」と感じている傾向が示された。その中でも「担当する仕事の意味に関する説明」、「あなたへの期待を明確に伝える」、「あなたの貢献に感謝を伝える」などの5項目について、管理職の方が一般社員に比べて得点が高く、「出来ている」と感じていた。一方で、「あなたの間違いや足りないところの指摘」や「世間話やプライベートに関する雑談」の2項目は、一般社員の方が管理職に比べて得点が高くなった。また、得点の乖離が大きく、片方のみ有意を感じている項目は、特に「お互いの認識が相手に伝わっていない」と考えられる。
上司・部下間のコミュニケーションに関する実態

部下側の方が「コミュニケーション」を重視していない可能性も

続いて、「前設問と同じコミュニケーション内容について、どれぐらい重要だと感じているか」を6段階で聞き、平均点を算出した。

※得点順は以下の通り
1:まったく重要でない/2:重要でない/3:どちらかといえば重要でない/4:どちらかといえば重要である/5:十分である/6:重要である

その結果は、ほとんどの項目で管理職の得点が高く、「重要度が高い」と感じていることがわかった。つまり、一般社員は管理職が考えるほど、各項目を重要視していない可能性がうかがえる。特に乖離が大きい項目は「あなたへの期待を明確に伝えること」、「あなたの貢献に感謝を示すこと」、「心身の健康状態について、話をすること」、「仕事や職場の課題について、あなたの意見やアイデアを求めること」の4項目となっており、いずれも管理職は重要度が高いと感じているが、部下はそれほど重要視していない傾向が見られた。
上司・部下間のコミュニケーションに関する重要度の認識

上司・部下共に非対面での「ネガティブ・フィードバック」に苦手意識を持つ

また、管理職と一般社員それぞれに対し、「言いたいのに言えなかったこと」について自由回答を求めた。すると、「部下から上司に対し言えなかったこと」として、テレワーク関連事項では、以下のような声があがった。

部下から上司に言えなかったこと
・お願いした対応について、上司へのリマインドができなかった。直接会えないのでチャット連絡が面倒に感じた(20代・営業系)
・指示内容が明らかに誤っているが、言えなかった(20代・営業系)
・在宅勤務と出社のバランスについて相談したかったが、言い出せないまま何となく出社してしまった(20代・事務系)
・もっと在宅勤務を推進してほしい(30代・営業系)
・余裕がなく頼まれた業務を断りたかったが、他の人の状況が分からなかったので引き受けた(30代・技術系)

上司に対して、「間違いを指摘すること」や「異なる意見を述べること」の難しさをあげる声が多かった。テレワークでは「相手の反応が即時で見えない」、「メールやチャットなど文書で伝える必要がある」などの弊害が、そのハードルを更に上げているようだ。
一方で、上司から部下に「言えなかったこと」については、次のような回答があった。

上司から部下に言えなかったこと
・些細なミスについて、メールでのフィードバックだと相手の反応が分からないので、直接会った機会に伝えようとして言えなかった(40代・事務系)
・リモート勤務時の勤怠記録が不正確で困ったこと(50代・事務系)
・リモートワーク時の勤務態度について、業務と直接関係ないので言い出せなかった(40代・事務系)
・在宅勤務中の勤務時間内の業務状況について、きちんと仕事を行っているか確認できなかった(50代・営業系)

「微妙なニュアンスが気になり、対面でないと言いづらい」との声は、管理職の方が多い結果となった。相手の反応が見えないため、機会を逸してミスをカバーしたり、タイミングよく言えなかったりという葛藤があるようだ。

「言い出せない」のは「相手の気分を害したくない」から。上司では「部下の判断に任せたい」気持ちも

最後に、「言いたくても言えない」理由を管理職・一般社員それぞれに尋ねた。すると、両者の回答が共通していたのは「気分を害する」や、「話すタイミングがなかった」、「リモートワークで、気軽に声をかけづらい」だった。

また、一般社員の回答が多かった項目は「言っても聞いてもらえない」、「反論されるのが嫌」、「忙しそうで気が引ける」だったのに対し、管理職の回答が多かった項目は「対面で会う機会がなかったから」だった。この他、管理職では「できる限り部下の判断に任せたい」との回答も多くなった。
上司・部下間のコミュニケーションが不全に陥る原因
調査結果から、部下と上司では「コミュニケーションのすれ違い」と「認識のズレ」があることが示された。テレワークの普及により、対面時とは異なるさまざまな課題が浮彫りになっている。このような「コミュニケーション不全」を認識し、解決に向けた方策を探ることが、企業運営の重要課題になりそうだ。