株式会社リクルートマネジメントソリューションズは2021年2月22日、「With/Afterコロナの人事施策実態調査」の結果を発表した。調査期間は2020年11月で、全国の企業の人事担当者306名より回答を得た。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けた2020年の振り返りから、「2021年度の人事施策の優先順位」や「業務や働き方の変化が人事制度に及ぼす影響」を、人事担当者がどう捉えているかが明らかとなった。
コロナ禍で「企業の人事施策」はどのように変わったか。リモートワークにより取り巻く状況は大きく変化

2021年度の人事施策の優先順位、トップは「職場内のコミュニケーション強化」

はじめに、「2021年度に向けた人事施策の実行」の優先順位をどのように定めているかを尋ねた。「優先順位を上げたもの」は、「職場内のコミュニケーション強化」がトップとなり、56.4%と過半数が回答した。以下、「業務状況把握・労働時間管理」が47.4%、「人事制度の改定」が45.7%と続いた。長期にわたり、テレワークでお互いが離れた環境で就業する中、社内のコミュニケーションや業務状況の把握について課題を感じ、優先順位を上げる方針であることがわかった。また、これを踏まえて、働き方や職場環境に対応する人事制度の改定も検討されているようだ。
2021年度に向けた人事施策の優先順位

リモートワーク推進での「対面コミュニケーションの減少」が人事制度にも影響か

続いて、「コロナ禍の業務や働き方の変化は、人事制度にどの程度影響があるか」を尋ねた。「あてはまる」または「ややあてはまる」の回答を合わせた割合は、「日々の指導が難しく、評価・面談を通じた育成の重要性が高まっている」(81.3%)が最多で、8割以上が回答している。次いで、「行動評価の納得感を高める運用面の課題が増えている」が70.2%となった。リモートワーク環境で業務を進めるにあたり、育成と評価基準に課題を感じていると推察される。
コロナ禍の働き方変化と人事制度への影響

人事担当者は「ミドルマネジメント層への負担増大」を把握している

次に「ミドルマネジメント層が置かれている現状」を探ると、いずれの項目でも「あてはまる/ややあてはまる」の合計割合が、「あまりあてはまらない/あてはまらない」を上回った。

上位は「マネジメント研修の内容について強化・変更を検討している」(76%)、「部下の業務の進捗状況把握に課題を感じている」(75.4%)、「組織のコンディションに課題を感じている」(75.4%)となった。また、「今後は求めるマネジャー像の変更が必要だと考える」が69.5%と、約7割が回答している。多くの人事担当者は「現状のミドルマネジメントが抱える課題」を把握しており、新しい働き方に対応したマネジメントに変化させるべく、育成強化を検討する企業が多いようだ。
人事担当者が把握するミドルマネジメント層の現状

社員一人ひとりや企業全体の意識改革に向けて育成を強化

最後に、「今後に向け、人物像や組織像の見直しを行っているか」を尋ねると、最も多かったのは「検討中」で42.3%となり、「これから検討予定」(17%)、「すでに完了」(8.2%)と合わせると、67.5%が見直しを実施および検討していることが明らかになった。この環境変化の中で、マネジメント層のみならず、それ以外の階層も含めた教育体系・人材育成全般で、「価値を生み出す人材と組織の在り方」が模索されているようだ。
With/Afterコロナの教育体系の検討状況
新型コロナウイルス感染症拡大の防止策を実施する中で、急激な働き方の変化が起こり、人事施策も従来の方針からの転換期にあるようだ。現場の状況を把握し、変化を先読みしながら「働く人と企業が共に成長できる施策」を検討していきたい。

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