衛生管理者を活用しよう −衛生管理者は従業員の健康を守るキーパーソン−

常時50人以上雇っている職場は、労働者の健康管理を効果的に行うため、「産業医」を選任すると同時に、国家資格を持つ「衛生管理者」を選任する義務があります。ですが、「法令に書かれているから、とりあえず人事部の誰かに資格試験を受けさせ、衛生管理者に選んで役所に届けている」という企業が多く、残念ながらせっかくの衛生管理者を有効利用しているところが少ないのが現状です。今回は、職場での「衛生管理者の役割」と活用方法について解説します。有効活用し、従業員の健康管理に役立てましょう。

衛生管理者は何をする人?<法的な裏付け>

まず、労働安全衛生法(以下、安衛法)と労働安全衛生法施行規則(以下、安衞則)を見てみましょう。安衛法10条、12条、安衛則3条の2には、衛生管理者が行うべき業務が以下の通りに書かれています。

一 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
二 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
三 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
四 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
五 安全衛生に関する方針の表明に関すること。
六 建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等の調査や、その結果に基づく、措置に関すること。
七 法や政令で定められた物質の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。
八 安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。

このように、衛生管理者は極めて多分野の衛生管理に携わらなければなりません。

次に、会社は衛生に関する措置をなし得る“権限”を衛生管理者に与える義務があります (安衛則十一条) 。都道府県労働基準局長あての労働省労働基準局長通達には、会社が衛生管理者に与えるべき権限が以下の通り具体的に書かれています(昭和四七年九月一八日基発第六〇一号の一)。

イ 健康に異常のある者の発見および処置
ロ 作業環境の衛生上の調査
ハ 作業条件、施設等の衛生上の改善
ニ 労働衛生保護具、救急用具等の点検および整備
ホ 衛生教育、健康相談その他労働者の健康保持に必要な事項
ヘ 労働者の負傷および疾病、それによる死亡、欠勤および移動に関する統計の作成
ト その事業の労働者が行なう作業が他の事業の労働者が行なう作業と同一の場所において行なわれる場合における衛生に関し必要な措置
チ その他衛生日誌の記載等職務上の記録の整備

これらのことをするために衛生管理者は最低でも週1回職場を巡視する義務があります(安衛則第十一条)。

また、上記の業務を行うためには、当然ながら医学的な知識も必要とされます。実際、衛生管理者の資格試験では、試験内容に一部医学的なものが含まれています。

衛生管理者が中心となって従業員の健康を守るのが理想形

さて、それでは衛生管理者の業務は、具体的にはどんなものなのでしょうか。以下に例を挙げます。

例1.出勤時は元気だった従業員が、昼に体調を崩している様子でした。この従業員に対して、会社から与えられた権限のもとで検温を指示し、発熱を認めた場合は直ちに帰宅するよう指示します。

例2.COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が蔓延する中、食堂での食事後に、マスクをしないまま談笑している従業員がいました。会社から与えられた権限のもとで、その従業員に対してマスクをするよう指示します。

このように、会社の一員であるからこそ「日常場面から細やかな対応ができる」というのが衛生管理者の存在意義であり、これは産業医にはなかなか真似ができません。であるからこそ、法令においても、会社は「衛生管理者に権限を与えなければいけない」と定められているのです。

ですので、まずは会社側にお願いがあります。会社は衛生管理者に対し、「権限」とさらに「時間」を与えてください。衛生管理業務をきちんとやろうとすると、相当な労力と時間が必要となります。また、もともとの部署の仕事の量をできる限り減らす、などの配慮もしなければなりません。

次に、衛生管理者に選任された皆さんへのお願いです。皆さんは法令に裏付けられた国家資格を取得しています。自信をもって権限を発揮し、着実に任務を果たしましょう。「専門的な医学的知見が必要だ」と感じたら、いつでも産業医に聞いてください。産業医は皆さんが利用できる存在のひとつです。「医者」と聞いただけでついつい遠慮してしまう方もいらっしゃいますが、従業員の健康を守るため、堂々と産業医を使ってください。そして、衛生管理者を中心に、日々「従業員の健康」を守っていきましょう。



神田橋宏治
合同会社DB-SeeD
代表社員
https://industrial.doctor.tokyo.jp