新型コロナの影響で「内定取り消し」が増加。企業が知っておくべき「取り消しが認められる条件」について

厚生労働省の発表によると、2020年春に大学などを卒業し就職する予定だったにも関わらず内定を取り消された人は、同年9月時点で全国200人強にのぼったという。新型コロナウイルス感染症が収束しない状況下において、今後はさらに取り消しが増加するだろう。これを踏まえ、本稿では「内定取り消し」について解説する。

「内定」とはどのような状態なのか

就職・採用活動の中で、企業から就職希望者へ出される「内定」について、法律によって明確な規定があるわけではない。しかし、過去の判例などから「始期付解約権留保付労働契約(※)」とみなされている。

一定の条件のもと、という「条件付き」ではあるが、内定が成立した時点で企業と内定者の間には「労働契約が成立している」ことになる。したがって、企業や人事としては、内定取り消し=「解雇」と同様の法的制限がある、という点に留意する必要があるのだ。

【※語注】
・始期付
:労働契約が始まる日が決まっていること
・解約権留保付労働契約:一定の条件下で企業が解約できる権利を留保している労働契約のこと

企業が「内定取り消し」を行うための条件とは

企業側が、すでに入社が内定している候補者に対して「取り消し」を行うことが認められるケースとしては、下記が考えられる。

【ケース1】内定者が大学、専門学校などを卒業できなかったとき
労働契約の前提条件を満たさないため、原則として内定取り消しの理由になるだろう。ただし、卒業を前提としない条件での内定とした場合はあてはまらないため、取り消しはできない。

【ケース2】内定者の経歴に重大な詐称が発覚したとき
例えば、「資格ありきの業務に携わること」を前提として候補者に内定を出したにもかかわらず、資格を有していないことがあとから判明した場合、内定者は「資格の有無」を詐称したことになる。また、職歴や犯罪歴の詐称なども、このケースにあてはまるだろう。

一方、「勤務不良による解雇」や「精神的な疾患による入院歴」などの情報を秘匿することは、「重大な経歴詐称」とまではいえないことが多い。

【ケース3】内定者の健康状態が悪化したとき
内定者の健康状態が、内定時点に比べて悪化した結果、当初予定していた業務が行えない場合は、取り消しが認められるだろう。ただし、企業側の一方的な主張だけではなく、医師の見解なども踏まえて判断したほうが賢明だ。

【ケース4】企業の経営状態が悪化したとき
この場合、「整理解雇」に準じて妥当性を判断することになる。一般的に整理解雇の合理性は「下記の4つの要件を満たしているかどうか」によって判断される。

(1)人員整理の経済的必要性
新型コロナウイルス感染症など、不測の事態の影響によって売上が下がり、その状況が続く見通しであるか

(2)解雇を回避する企業努力
内定取り消しの前に、コストカットや役員報酬の削減など、企業努力がなされているか

(3)解雇の対象者選定の合理性
内定を取り消す対象者の選び方に合理性があるか

(4)対象者に対する説明責任・手順の妥当性
企業から対象者への説明によって納得を得ることができたか。または、企業は最大限の誠意を尽くしたか

企業には丁寧な説明と誠意ある対応が求められる

「内定取り消し」が行われるということは大変深刻な事態であり、企業としても苦渋の選択であることは間違いない。まずは、取り消しの対象となった人へ、企業の窮状をしっかりと伝えることが大切だ。

また、企業は内定を取り消したらそれで終わり、というのではなく、対象者の新たな就職先を確保するために最大限の努力を行うとともに、補償などの要求には、できる限り誠意をもって対応すべきであろう。



瀧本 旭
社会保険労務士法人ステディ
代表社員
https://steady-sr.com/