■主旨と内容

ワーク・ライフ・バランスを実践するためには,「会議の効率化」のような業務内からのアプローチと「労働時間の短縮」というような制度からのアプローチの両面で進めていくことが重要です。平成22年6 月30日施行の改正育児介護休業法では短時間勤務が義務づけられました(以下の①・②が義務,③~⑦が努力義務)。
①短時間勤務規定
②所定外労働の免除
③フレックスタイム制度
④始業・就業時刻の繰り下げ・繰り上げ
⑤託児施設の設置・運営
⑥ ⑤に準ずる便宜の供与
⑦育児休業に準ずる制度

 今回は育児休業法対応,および労働時間の短縮という観点から短時間勤務規定を改めて提示します。常時従業員100人以下の企業についても平成24年7 月1 日から義務化が適用される予定ですので早めの検討・準備が望まれます。

■検討内容

・対象者の範囲
 改正育児介護休業法では,3 歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合に利用できる短時間勤務措置の導入が義務づけられました。会社としてはこの基準を上回って設定するかどうかがポイントとなります。育児介護休業法上の対象者は,以下の通り。
① 1 歳未満の子を養育する従業員で,育児休業をしない者
② 1 歳から3 歳までの子を養育する従業員
 ただし,同法は「3 歳から小学校に入学するまでの子を育てる労働者についても,勤務時間短縮の措置を講ずるよう努めなければならない」と規定しています。

・勤務時間短縮の期間
 勤務時間短縮の期間は少なくとも子が3 歳に達するまでとします。当然対象者範囲を広げた場合はそれに準じて延長させます。

・勤務時間数と勤務の時間帯
 短時間勤務の1 日の所定労働時間は原則として6 時間とする必要があります。ただし,次の者は除外が認められています。
① 1 日の所定労働時間が6 時間未満の者
②労使協定により適用除外とされた者(以下a~c)
a . 雇用期間が1 年未満の者
b. 1 週間の所定労働日数が2 日以下の者
c. 業務の性質または実施体制に照らして,所定労働時間の短縮措置を講じることが困難と認められる業務に従事する者(小規模な事業所で,代替できる担当者がいない業務に従事する者など)
勤務時間数は6 時間以内なので休憩時間は必要ありませんが,休憩時間を設ける場合は規定に明示します。勤務時間帯や勤務時間数を具体的に定める際は以下のパターンが考えられます。
①会社が短時間勤務の勤務時間,勤務時間帯を指定する場合
②会社がいくつかの短時間勤務のパターンを用意して本人に選択させる場合
③本人に勤務時間や勤務時間帯を決めさせる場合

・短縮措置の回数
 勤務時間短縮の回数を1 人の子について1 回とするのか複数回とするのかを規定します。
・勤務時間短縮申出の手続き
 申出に必要な提出書面を明記します。

・勤務時間短縮申出期限
 業務の調整を考慮して,申出の期限を設けます。

・勤務時間短縮の期間の終了
 勤務短縮の期間は,子を養育する必要がなくなったときには別途,停止申出書を提出することによって終了するとし,子が3 歳に達したとき(それ以上の条件を設定したときはそのとき)には届け出の有無に関係なく,自動的に終了するものとします。

・勤務時間短縮の撤回
 勤務時間短縮の申請をした後で撤回を希望する場合は,勤務時間短縮措置の開始日の前日までであれば,撤回できることとします。申出を撤回した場合は,その申出の対象となった子については,特別の事情がない限り再度の申出はできないものとしておきます。

・賃金について
①給与……ノーワークノーペイの原則から,所定勤務時間と短縮勤務時間の比率で支給することにします。例えば,所定労働時間が8 時間で短縮勤務時間数が6 時間の場合は,所定内給与の4 分の3 の支払いとします。
②賞与……賞与も給与と同じ考え方で通常支給される支給額に給与支給率を乗じるのが一般的だと考えます。上記の例に準じれば,乗数は4 分の3 となります。
③昇給および退職金……昇給の算定については育児とは切り離し,通常の勤務を適用すべきでしょう。退職金も育児に関係なく優遇する考え方が望ましいです。

・時間外労働(残業)の免除
 3歳に満たない子を養育する労働者から請求があった場合,所定外労働は免除が義務づけられていますので,それも規定化します。短時間勤務者についてもその所定の短時間勤務時間を超える時間外労働の免除を規定しておきます。

・人事考課の扱い
 残る課題は人事考課です。総労働時間数ではなく,短時間勤務時間内における成果の評価が公正になるよう,評価のあり方を明確にしておく必要があります。

育児のための短時間勤務規定

第1 条(総則)この規定は,育児のための短時間勤務制度についての取り扱いを定める。

第2 条(対象者)次に定める従業員が会社に申請することによって短時間勤務条件によって勤務することができる。
① 1 歳未満の子を養育する従業員で育児休業をしない者
② 1 歳から小学校入学するまでの子を養育する者(※法律の義務としては1 歳から3 歳までの子を養育する従業員)

第3 条(勤務時間と時間帯)原則として短時間勤務の時間数は6 時間とし,時間帯等は以下の中から選択するものとするが,育児の状況を勘案して,協議のうえ個別で定める。
①午前9 時~午後3 時(※ 1 時間の休憩時間を取る場合は午後4 時まで)
②午前10時~午後4 時(※ 1 時間の休憩時間を取る場合は午後5 時まで)
③午前11時~午後5 時(※ 1 時間の休憩時間を取る場合は午後6 時まで)
2 1歳未満の子を養育する従業員の場合は,育児時間に基づき,1 日2 回の育児時間を請求することができる。

第4 条(短時間勤務の期間)短時間勤務の期間は子が小学校に入学するまでの連続した期間とする。

第5 条(短時間勤務の回数)短時間勤務の回数はひとりの子について1 回とする。

第6 条(申出手続き)短時間勤務の申出は次の書面を提出することとする。
①申出の年月日
②所属部署,氏名
③申出者の子の氏名,生年月日,続柄
④短時間勤務の開始日と終了日
⑤短時間勤務の時間帯

第7 条(申出期限)短時間勤務の申出は,短時間勤務開始希望日の少なくとも1ヵ月前までとする。申出日から開始までの期間が1ヵ月に満たない場合は,原則として会社は申出日の翌日から概ね1ヵ月を経過する日を短時間勤務開始日として指定することができる。

第8 条(短時間勤務の終了)短時間勤務期間は以下の場合に終了するものとする。
①子を養育しなくなったとき,またはその旨の申出があったとき
②養育する子が小学校に入学したとき

第9 条(申出の撤回)従業員は,短時間勤務の開始日の前日までは,その申出を撤回することができる。撤回した場合はその対象となった子について,原則的に再度短時間勤務の申出ができない。

第10条(給与)給与は勤務時間数に応じて支給する。短時間勤務給与=会社が定める通常の所定給与×(勤務時間数/通常所定労働時間数)

第11条(賞与)賞与は勤務時間数に応じて支給する。短時間勤務中の賞与=標準支給額×(勤務時間数/通常所定労働時間数)※賞与算定期間中に通常勤務が含まれる場合は端数計算を実施する。

第12条(昇給および退職金)昇給および退職金の算定にあたっては本制度の適用を受ける期間は通常の勤務をしているものとみなす。

第13条(時間外労働の免除)当規定に該当する従業員が請求した場合は,当規定の勤務時間を超える労働を免除することとする。
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