～避けるべき固定観念 その1～「こどもの年齢」

こども施策に関わる大きな流れとして、2023年4月に「こども家庭庁」が設置されて、「こども基本法」が施行されました「こども基本法」の第2条1項では『こども』について、次のように定義しています。


ポイントは、「18歳まで」、「20歳まで」などと年齢を定めていないということです。こども家庭庁の資料では、次のように説明しています。


年齢を定めることで「必要なサポートがとぎれる」という弊害も考えられます。もちろん、年齢を定めているからこそ、こどもの発達に応じた重点的な支援を行うことが可能です。しかし、支援対象の要因となるすべてのことが、子どもの年齢に起因しているものではなく、発達過程も一人ひとり異なるでしょう。

これは、「18歳」、「20歳」だけでなく、「1歳」、「3歳」、「就学前」、「義務教育終了」なども同じことがいえます。子どもの年齢に応じた、発達過程の大まかなイメージというものはありますが、それが固定観念になってしまうと、子どもの発達過程によっては必要なサポートがとぎれる原因にもなりかねません。

一方で、それぞれの施策・法律には年齢の定めは必要であり、だからこそ、子どもに関する施策の基本となる「こども基本法」を制定することで、その弊害を少なくする社会をつくる必要があるのです。

～避けるべき固定観念　その2～「自らの価値観」

自らの立場や経験に基づいた「価値観」によって、子育てに対してのイメージもだいぶ変わっていきます。その価値観が固定観念となり、“子育てにやさしい会社”への弊害とならないポイントを解説します。


このようなAさんの価値観は「育児休業の対象とならない従業員への配慮」や、「育児休業後への叱咤激励」などの思いがあるのかもしれませんが、間接的に「育児休業を取得するな」という解釈にもなりかねません。さらには、1歳になったからといって子育てが終了するわけではないので、子育てをする従業員への配慮に欠けてしまう印象へとつながってしまいます。


Bさんの価値観では「制度に頼らなくても、仕事と育児は両立できるはず」という強い自負があるのかもしれません。もちろん、子育ての先輩としてBさんの姿勢から学ぶべきこともたくさんあると思います。しかし、時代の変化とともに「社会」、「地域」、「子育て」を取り巻く環境、そして何より「こども」を取り巻く環境が変わってきています。過去の経験から導かれた自らの価値観より、「現在の子どもたちにとって、どのような環境が必要なのか」を考える視点が“子育てにやさしい会社”を目指すには大切なことです。


Cさんは「育児休業などの制度を必要とする時期は、誰もがある程度は同じであるはず」という認識があるのかもしれません。実際、制度の多くは対象となるこどもの年齢に制限があります。

しかし家庭の事情はそれぞれで、例えば小学校1年生の子どもが発熱したときに、配偶者や親戚がいれば看病をしてもらうことができますが、看病する人がいなければ会社を休まざるを得ません。そのような事情は周りが知らないことも多く、Cさんも不満を抱くのかもしれませんが、自らの価値観は一旦脇に置いて“家庭環境はそれぞれ”という認識を持つことが大切なのです。

～避けるべき固定観念　その3～「法律の最低基準」

まず前提として、育児・介護休業法にある年齢・期間・時間数など「最低基準」を遵守することが前提です。ただし今回は、“子育てにやさしい会社”を目指すことがテーマなので、一歩踏み込んで「最低基準に縛られないこと」をポイントとして解説します。

先ほどの例で、役員Aさんが「子どもが1歳になるまで休みを取ったら、その後はフル回転で働いてください」という形で「1歳」という年齢が出てきたのは、おそらく「育児休業が原則1歳まで」という認識があるからだと考えられます（保育園に入れないなどの事情がある場合は除く）。

「1歳」というのはあくまでも『育児休業』に関しての基準です。その「1歳」に固執をしてしまうと『短時間勤務制度（3歳未満）』、『時間外労働の制限（小学校就学前）』などの制度があることを見落としがちになります。また、会社の方針として『育児休業』の年齢上限を上げて、例えば3歳にしてもよいわけです（ただし、雇用保険の育児休業給付金の対象とはなりません）。

さらに視点を変えれば、必ずしも、子どもが1歳になるまで休む必要もありません。1歳になる前から適度に仕事をした方が、子育てにも良い影響が生まれるのであれば、そのような選択肢でももちろん良いでしょう。「法律の最低基準」という固定観念に縛られずに、その人にとっての“最適なワークライフバランス”を実現することが大事なのです。

一人ひとりがワークライフバランスを実現することで、“子育てにやさしい会社”へ近づいていくのではないでしょうか。