スペック重視の理系、ソフト重視の文系

入社先を決めた学生を対象に「内定承諾を決めた理由」を聞いてみたところ、「仕事内容」が文系・理系ともに最多で、それぞれ73%、79%となっています[図表4]。次いで「事業内容」が59%、65%と、2位までは文理関係なく同じ項目が挙がっています。この2項目は理系の割合が文系より高くなっており、理系の学生がより強く重視していることがうかがえます。
[図表4]入社先として内定承諾を決めた理由(複数回答)
文系3位の「福利厚生」の割合は文系・理系ともに59%ですが、理系3位の「給与」の割合は、文系の54%に対して理系は60%、理系5位の「勤務地」は、文系の50%に対して理系は56%になるなど、学生が入社する企業を選ぶ際に、理系のほうが勤務条件を現実問題として重視しているようです。「会社の知名度」(文系34%、理系39%)、「安定性」(文系30%、理系35%)など、会社の規模に関連する項目も理系のほうが高くなっています。

一方、「会社の雰囲気」(文系57%、理系51%)、「人事の対応・人柄」(文系41%、理系37%)といった、スペックというよりソフト面について、文系のポイントのほうが高い傾向がうかがえます。

次に、入社先として内定承諾した企業の「会社の雰囲気」の確認方法についてです。文系・理系ともに最多は「面接での人事からの説明」で、それぞれ51%、50%とともに半数に及びます[図表5]。次いで、「説明会での人事からの説明」が文系46%、理系44%といずれも4割を超える高い割合となっており、人事担当者が学生に与える影響の大きさがうかがえます。続く3位は「リクルーター・社員」で、文系39%、理系44%と、こちらも4割前後となっており、人事と同様に社員も「会社の雰囲気」の判断指標とされています。
[図表5]入社先として内定承諾した企業の「会社の雰囲気」の確認方法(複数回答)
採用ホームページでは、社員インタビューなどを掲載することが多いと思いますが、掲載方法によるポイント差があることが分かりました。「企業HPでの紹介(動画)」が文系38%、理系42%と4割前後となっているのに対して、「企業HPでの紹介(文章)」は文系・理系ともに29%と3割に達しておらず、その差は約10ポイントもあります。同じ内容を訴求するにしても、「動画」と「文字・写真」では圧倒的に「動画」のほうが有効であることが分かります。

ポイントこそ文系と理系で若干の差はあれ、学生の「会社の雰囲気」の確認方法の順位はほとんど同じ※となっており、「新聞・雑誌・書籍」「SNS」はそれほど情報源にはなっていないようです。

※理系の「説明会での人事からの説明」は43.9%(3位)、「リクルーター・社員」は44.3%(2位)で、文系の順位とは異なります。「口コミサイト」と「職場見学」は同率です。

採用にも求められる個への対応

内定承諾した(する予定の)企業で、印象の良かった「人事の対応・人柄」と「社員の対応・人柄」について、フリーコメントで回答してもらったので、それぞれ抽出して紹介します。

まずは「人事の対応・人柄」からです。質問への真摯な対応、早い選考結果連絡、個別の柔軟な対応などを挙げる声が多いようです。

・面接の度に逆質問の時間をたくさん設けてもらい、会社について納得した上で内定承諾の判断をさせてもらえた(理系、旧帝大クラス)
・グループワーク後のフィードバックが手厚かった(文系、旧帝大クラス)
・私の言葉に対して、対等な目線で会話してくれていると感じた(理系、中堅私立大)
・対面面接の待合室において、若手人事の方とお話をして過ごし、緊張をほぐしてくれた。最終面接の際、面接中に内々定をもらえたため、面接直後に人事(中堅)の方と面談をしたが、その際も私について感じていたことなどを話してくださり、自分を見ていてくれたことがうれしかった(文系、上位私立大)
・質問攻めでなく、会話よりの面接でにこやかに話してくださった(文系、上位私立大)
・すべての選考を通して結果の連絡が早く、就活生ファーストの対応をしていただけた(文系、上位国公立大)
・イベントの際、企業側が答えにくいであろう質問にも、真摯に答えてくださった(文系、旧帝大クラス)
・とにかく能力や人柄を評価してくださった。また、「緊張させないことが目標」と面接の最初におっしゃっており、実際とても和やかな空気を作ってくださった(理系、上位国公立大)
・どれだけ入社してほしいかの説明をしてくださり、内定承諾書に添えて短い手紙を添えてくださった(文系、その他国公立大)
・耳を傾けて私の話を聞いてくださった。興味を持ってくださっていると伝わってきて、こちらも熱が入った(文系、上位私立大)
・結果連絡が素早く、合格者にはメール、不合格者には必ず手紙で連絡していたところにとても誠意を感じた(文系、早慶大クラス)
・どのような選択をするとしても後悔がないように全力でフォローするとおっしゃっていた。担当のリクルーターだけでなく、新卒採用を担当する人事の皆さんでフォロー方針を考えていることを教えてくださったこと。その時々の悩みに応じて適切な社員の方との面談をセッティングしてくださったこと(文系、旧帝大クラス)
・インターンシップから一貫して、毎回電話による日程の確認をしていただけたことが特に好印象だった。丁寧さや真面目さを実感した(文系、その他私立大)
・内定承諾後に依然として不安があることを伝えると、面談を設けてくださった(文系、早慶大クラス)
・内々定のご連絡をしてくださった人事の方が、とにかく親身になってお話を聞いてくださり、「あなたの人生だから今すぐに決断を求めたりはしません。ゆっくり考えてご自身の満足のいく決断をしてください。」とおっしゃってくださったことがとにかく印象的だった(文系、早慶大クラス)
・定期的にメッセージを送ってくれたり、不安なことも多いだろうからと内定承諾した後もフォローしてくれたりしたこと。また、内定承諾もじっくり時間をかけていいといわれたのも、他社と比較してさらに行きたいと決断できた理由だと思う(理系、中堅私立大)
・一人の就活生ではなく固有名詞の私として、最初から最後まで向き合ってくれた(理系、上位私立大)
・内々定後「いつでも不安があればメールでも電話でもしてください」と言ってもらえて、「社風や社員の方の人柄がつかめずに不安です」と連絡すると、わざわざ自分と境遇の近い社員の方を選んだ面談の時間を設けてくれたこと(理系、上位国公立大)

配属予定先社員との交流が有効

次は、「社員の対応・人柄」です。会社の長所・短所の説明、楽しく働く様子、フランクな対応と温かいフォローなどのほか、配属先が決まっていることが少なくない理系学生にとっては、配属予定先の社員との交流が有効なようです。

・若い人が多く、自分の意見を否定せずに聞いてくれるところ。おおらかで優しい方が多いところ(文系、早慶大クラス)
・私が興味を持っている分野で働いている方で、とても楽しそうに業務について話してくださった。また、その業務とも関連のある、私のゼミでの研究内容について、興味を持って聞いてくださった(文系、旧帝大クラス)
・まとまりのない自分の質問に対して、少しずつ「本当に知りたい内容」の確認を挟みながら答えてくださった。社員の方も飾らずありのままの考えをお話しくださった(文系、旧帝大クラス)
・OB訪問アプリで訪問した際に、フランクに対応してくださった。また、訪問後も連絡をとってくださり、内定の連絡をした際にはSNSでお祝いの言葉もいただいた(理系、旧帝大クラス)
・会社見学の際に、2時間も自由に話す時間があり、話題が尽きず、非常に有意義な時間を送れたため(理系、上位私立大)
・最終面接日に社員と交流できる時間があったが、緊張をほぐそうとしてくださり落ち着いて面接に挑むことができた(文系、早慶大クラス)
・自分にとって最良の選択になるようにと、会社の良いところ、悪いところをすべて話してもらえた(文系、早慶大クラス)
・座談会を開催してくださり、仕事をする上で大変なことや入社理由など包み隠さず正直に伝えてくれました(文系、その他私立大)
・会社で作っている製品について詳細に説明していただき、また、製品の製造現場を見学させていただいた(理系、上位国公立大)
・1時間の面談を複数回行い、どの社員も優しかった。私の拙い質問に対して、意図を汲み取って教えてくれ、自分からどんどん情報を教えてくれた(文系、早慶大クラス)
・仕事を楽しんでいる、明るく気さくに話しかけてくださる方が多くて魅力的に感じた(理系、早慶大クラス)
・社員面談の際、丁寧に話を聞き、真摯に答えてくださった。また、会社用の連絡先も教えてくださり、「何かあれば連絡してね」「もし弊社に来てくれることになったら、いつか一緒に飲みましょう」と、真面目なだけでなく、フレンドリーに対応してくださった(理系、上位国公立大)
・質疑応答では、皆さんとても丁寧に回答してくださった。また、最終面接前にダメ元で人事部にOB訪問のお願いをしてみたところ、主任研究員の方との面談のお時間をいただけることになった。年次が上の先輩社員の方に会うことが多かったが、皆さんいい意味で柔らかく、笑顔で優しく接してくださった(理系、旧帝大クラス)
・人事の方とは別に、内定先の部署の部長が連絡をしてくださり、仕事内容や職場についての不安がないか質問に答えてくれた。取り組みたい内容についても意見を聞いてくださり、それが実現できるよう環境を整えてくれる印象を受けた(理系、上位国公立大)

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