厚労省の「介護保険事業状況報告」によれば、2020年3月末時点での「要介護・要支援認定者数」は669万人とされ、年々その人数は増加傾向にあります。また、日本の「65歳以上の割合」は昨年の推計で29%に迫り、2040年には35%を超えると見込まれています。これらのデータは、「家族の介護に直面している方」が増えている、そして「今後も増え続けていく」ことを意味しています。家族の介護は働き盛りの世代に直撃することも多いため、会社としても対応方法を考えておきたいものです。
従業員に“家族の介護が必要になった”と言われたら……「育児介護休業法」の理解を深め、介護離職を防ごう

「介護休業」と「介護休暇」で休みながら介護を行う

介護と仕事の両立に関する規定は、「育児介護休業法」にて定められています。家族の介護が必要になった際、労働者が申し出ることのできる休暇制度が「介護休業」と「介護休暇」です。名称は似ていますが、それぞれ異なる制度です。

●介護休業

家族の介護が必要になった際、最大で3回、合計93日間の休暇を取得できる制度です。対象となる家族は、「要介護状態にある配偶者・父母・子・配偶者の父母、また同居かつ扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫」です。ここでいう「要介護状態」とは、介護保険の「要介護状態区分」ではなく、「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」のことをいいます。

休業期間中、雇用者に賃金支払いの義務はありませんが、雇用保険に加入している労働者であれば、介護休業給付金の申請が可能です。

●介護休暇

1年度に最大5日間、年次有給休暇とは別に、家族の介護のために取得できる休暇制度です。対象となる家族は介護休業の場合と同様です。この休暇は、通院の付き添いや、介護サービスの手続き、ケアマネージャーとの打ち合わせなど、介護に関連する様々なケースで利用できます。また、この休暇を有給とするかどうかについては、会社の規定によります。

介護休暇は、2021年1月の法改正により、1時間単位での取得ができるようになりました。この改正は、育児に関する制度である「子の看護休暇」にも適用されているものです。ポイントは、「通常の年次有給休暇では時間単位取得を導入していない会社でも、介護休暇(ならびに子の看護休暇)では時間単位取得をできるようにしなければならない」いう点です。

介護休業と介護休暇のいずれも、労働者から取得の申し出があった場合に、会社は拒否することができません。社内での申出方法や制度運用について、改めて確認しておきましょう。

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会社を休まずとも、介護と仕事を両立できる制度も

前述の制度は「会社を休むことで介護を行うもの」でしたが、「会社を休まなくとも介護と仕事の両立が行えるような制度」も存在しています。以下の制度は、労働者からの請求により利用可能となります。また、対象となる家族の要件はいずれも、介護休業、介護休暇の場合と同様です。

●所定外労働の制限

事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはいけません。

●時間外労働の上限時間数の制限

事業の正常な運営を妨げる場合を除き、1ヵ月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはいけません。

●深夜業の制限

事業の正常な運営を妨げる場合を除き、深夜業をさせてはいけません。

●所定労働時間短縮等の措置

働きながら介護を行うことを容易にする措置として、以下のいずれかの方法を導入する必要があります。

・短時間勤務の制度
・フレックスタイム制度
・時差出勤制度
・介護サービス費用の助成その他これに準ずる制度

介護に関する社内制度の整備で人材流出を防ぐ

総務省の就業構造基本調査によれば、介護・看護のため過去1年間に前職を離職した人の数は、約10万人前後で推移しています。また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査では、介護を機に離職をした理由の第1位が「仕事と介護の両立が難しい職場だったため」で6割以上を占めていました。

介護に関する制度は、育児に関する制度と比べると、認知度が低いように感じます。家族の介護は、高年齢によるものはもちろんですが、年齢を問わず急な病気や事故の後遺症等の場合でも起こり得るため、誰の身にいつ起きてもおかしくありません。働き盛りの優秀な従業員が、家族の介護のために退職することも珍しくない時代が来ています。

介護に関する制度は、育児に関する制度と同じ法律(育児介護休業法)で定められています。そのため、育児のために使える制度と同じ、あるいは似ている点が特徴です。既に育児関連の制度がきちんと運用されている会社では、同様の運用ができますし、これから社内制度を整備する会社では、育児と介護の制度をセットで考えるとスムーズです。

自社の労働者の雇用や生活を守り、優秀な人材の流出を防ぐため、「法律ではどのような制度が定められており、自社ではどのような運用をしていくのか」を、いま一度確認しておきましょう。
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