「インテグリティ」とは企業及び従業員が守るべき価値観の一つで、「誠実さ」、「真摯さ」、「高潔さ」などの概念を指す。このインテグリティは長期的な視点で企業に成長をもたらすといわれている。また、欧米企業が掲げることが多い概念・価値観ではあるが、近年誠実さを欠いた不祥事・問題が頻発している日本においても重要視されつつある。そのため企業は、今後ますますインテグリティを重視する姿勢が求められるだろう。

「インテグリティ」の意味、コンプライアンスとの違いや関係性

「インテグリティ」とは、「誠実さ」、「真摯さ」、「高潔さ」など、企業のあり方に関して求められる概念を指す。インテグリティは、企業経営やマネジメントにおいて重要な価値観の一つとして、主に欧米企業において重視されてきた。近年では、日本においてもインテグリティを重視する企業は増えてきている。ここでは、まず以下の3つのポイントを通じてインテグリティの理解を深めていこう。

●「インテグリティ」が重要視される背景

日本で「インテグリティ」が重要視される背景の一つには、“インテグリティの不足により引き起こされる不祥事・問題を防ぎたい”という企業の思いがある。インテグリティが不足している企業は、不正会計や情報漏洩、パワハラ行為、不適切販売などの不祥事・問題行動を起こす確率が高くなる。前提としてそれらの行為はしてはいけないことではあるが、現在はSNSなどを通じてより速く・より広く企業の問題行動が世の中に広まるようになってきた。そのため、企業として輪をかけて、不祥事・問題が起こらないような仕組み・対策を講じなければならなくなったのだ。こうした背景のもと、日本においても「問題行動を起こさずに、より社会から信頼され、成長し続けられる組織になるためにはインテグリティが不可欠」という認識が広まってきている。

●インテグリティマネジメントの定義

インテグリティに関連する「インテグリティマネジメント」とは、「法律や規範、倫理観を守ることに加え、社会的な責任を果たす取り組みを実践することを意味する。つまり、法令遵守は前提として、“いかに企業として社会的な責任を果たせるか”がポイントとなる。

具体的な取り組みとしては「障がい者採用を積極的に行う」、「留学などの従業員の夢を経済的にバックアップする」などが挙げられる。こうしたインテグリティマネジメントの実践は「従業員および顧客との信頼関係構築」だけでなく、「生産性の向上」、「不祥事の防止」などにもつながっていく。

●コンプライアンスとの違いや関係性

「インテグリティ」とコンプライアンスの大きな違いは、以下の2点だ。

・法令や規範の遵守に焦点を当てているかどうか
コンプライアンスは法令や規範を守ることに焦点を当てている。一方インテグリティは、誠実さや品位、良識、倫理、公平など法令・規範遵守にとどまらない領域についての概念を指す。

・能動的か消極的か
コンプライアンスは、“企業が法令や規範に抵触しないように求めているため従業員はそれに応じる”という「消極的」な側面が強い。一方インテグリティは、“企業及び従業員が法令を積極的に守り、社会的な責任を成し遂げられるように努力をする”という「能動的」な側面が強い。

なお、インテグリティとコンプライアンスの関係については、「インテグリティがある企業・従業員でないとコンプライアンスを守れない」という関係性がある。言い換えると、誠実で真摯なインテグリティのある企業・従業員は、不祥事を起こしたり不正行為を行ったりすることはない、といえるだろう。

「インテグリティ」は企業にどのようなメリットをもたらすのか

●相手の視点に立って仕事ができる

「インテグリティ」を持つ従業員は誠実性に優れているため、“相手の視点に立って仕事ができる”。そのため、決して自分本意の考え方で仕事を進めたり、相手にとって不快な行動を取ったりはしない。このような従業員は当然、顧客に対しても適切なコミュニケーションを取ることができるため、企業へは「売上げUP」や「顧客との信頼関係構築」などの好影響をもたらす。

●主体的な意見を持てる

「インテグリティ」のある従業員は“主体的な意見を持つ”傾向がある。インテグリティはコンプライアンスと異なり、“自ら社会的な責任を全うしよう”という能動的な側面が強い。つまり、インテグリティを持つには、主体的な意見を持って行動することが求められるのだ。インテグリティに対する意識の強い従業員は、主体的な意見を持った上で、企業ひいては社会に対して貢献しようと自ら行動する。このような従業員の存在は周りのメンバーにも好影響を与え、企業に「生産性向上」などの効果をもたらす。

●公益性の重視

「インテグリティ」を重んじることで、企業は営利企業として利益を追求しつつも、一方で「公益性の重視」に重きを置くようになる。公益性を重視する企業の経営は、ときに利害関係を超えて競合他社とも協力関係を持ち、共に成長していくことで、結果としてより大きな社会貢献をもたらす。逆にインテグリティを持たない企業のなかには、公益性を軽視し、自社だけの利益を追求するところもある。しかし、それではいつか無理が生じてきてしまう。長期的なスパンで成長するためには、インテグリティを持ち、公益性を重視した経営をすることが重要なのだ。

人事やマネジメント層は、どのような「インテグリティ」を持つべきか

ここでは主に、人事やマネジメント層が持つべき「インテグリティ」について解説していく。また教育や人事評価の際に参考になる従業員が持つべきインテグリティも簡単に紹介する。

●人事

人事が特に持つべきインテグリティは「公平さ」だ。

・客観的でフェアな評価のもと、採用活動を行う
・私情を挟まず、公平な視点から従業員を評価する
・公平性に十分考慮して評価制度・報酬制度をつくる


このように、人事の仕事は社内外の“人”にフォーカスしたものが多いため、その分、私情や先入観をなるべく挟まず、公平な視点で物事を見ることが求められる。人事が“公平さ”のインテグリティを持たずに恣意的に仕事を行った場合、組織にさまざまな偏りをもたらしてしまう。ほかの職種と同等かそれ以上に、人事はインテグリティに関する意識を高く持たなければならない。

●マネジメント層

マネジメント層が特に持つべきインテグリティは「真摯さ」だ。

・部下からの相談に正面から向き合う
・マネジメント層になったからといって成長を止めない
・仕事を丸投げせず、自らも積極的に動く


マネジメント層には上記のような行動が求められるが、これらすべては、真面目でひたむきな“真摯さ”が重要なポイントになる。部下からの相談一つ取っても、部下の悩みに真摯に向き合うことで、「この人に相談すればしっかり応えてくれる」と部下から信頼を得ることができる。その結果慕われるようになるだろう。このように部下と良い関係を築くためには、マネジメント層には“真摯”に部下や仕事と向き合うことが求められるのだ。

●従業員

従業員が特に持つべきインテグリティは「誠実さ」だ。

・ミスをしたときに隠さずに上司に報告する
・自分のスキル・知識を独占せず、チームメンバーに共有する
・困っている人がいたら声をかける


上記のとおり、従業員は誠実ある行動が求められる。インテグリティを持たない従業員は、自身の利益や保身を重視するため、結果として企業にとってあまり良い影響は与えない。そのため、人事・マネジメント層は従業員にインテグリティを持つことの大切さを伝えることが重要となる。

「インテグリティ」の理解につながる企業事例を紹介

最後に、「インテグリティ」の理解につながる企業事例を2つ紹介していく。

●GE

「GE」は、自社の文化について、“Integrity is critical in everything we do”、つまり「あらゆる行動においてインテグリティこそが重要」と明記している。GEはインテグリティをベースに企業活動をしているのだ。

例えば、GEでは、インテグリティ上の義務を果たさない従業員やリーダーは厳しい処分の対象になり、またリーダーはインテグリティの手本になるように義務づけられている。この例からもわかるように、GEにはインテグリティが文化として根付いているのだ。

●AGC

「AGC」では、AGCグループビジョンと新卒採用において、インテグリティを掲げている。

・AGCグループビジョン
グループビジョン “Look Beyond”を構成する価値観の一つに、「誠実」つまりインテグリティを挙げている。具体的なインテグリティの中身については、“高い倫理観に基づきあらゆる関係者と透明・公正な関係を築くこと”などを明記している。

・新卒採用サイト
サイト内にて、求める人物像の一つとして、“他者から学び、誠実な行動により、信頼してもらえる人財”という「インテグリティ」のある人材を挙げている。AGCはインテグリティを重視した価値観のもと、企業活動や採用活動を行っていることがよく分かる。
あらゆる媒体から企業の不祥事・問題があっという間に拡散される現代において、「誠実さ」、「真摯さ」、「高潔さ」などの概念を含むインテグリティは、今後ますます重要視されていくだろう。企業はインテグリティを持つ従業員を増やすことで、不正や問題行動を起こさないのはもちろんのこと、自社の利益にとどまらず、広く社会に貢献できる企業作りをすることができる。

インテグリティをすべての従業員に理解してもらい、行動規範の一つにしてもらう必要がある。そのために、まずは人事担当者やマネジメント層がインテグリティについて正確に把握し、実践していくことから始めてみてはいかがだろうか。
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