採用選考の際、応募者にどんな質問をしていますか。そして、その質問項目は定期的に見直しているでしょうか。厚生労働省は2021年4月に、人権に配慮した公正な採用選考を啓発するためのリーフレットを出しました。これを見ると、不適切な質問事項として意外な項目が挙げられており、採用選考でも価値観や考え方のアップデートが必要なことがわかります。そこで今回は、人権に配慮した採用選考をするために注意すべき点を紹介していきます。

国のルールや基準も変化してきている

厚生労働省は、応募者に広く門戸を開き、本人のもつ適正・能力を基準とした公正な採用選考を推進しています。そもそも、労働者の募集と採用に関しては、法律で次のようなルールが定められています。

●性別にかかわらず均等な機会を与えること(男女雇用機会均等法第5条)
●障がいの有無にかかわらず均等な機会を与えること(障害者雇用促進法第34条)
●原則、年齢制限を設けることの禁止(労働施策総合推進法第9条)

最近では、厚生労働省の履歴書様式例で、性別欄が任意記載欄に変更になったことが大きな話題となりました。これは、性自認の多様な在り方に対応するための変更です。法整備がされたわけではありませんが、性別の回答を強要することがないよう会社に協力をお願いしています。

また、同じタイミングで、応募者のプライバシーの要素が非常に高い情報だという理由から、「通勤時間」、「扶養家族数」、「配偶者」、「配偶者の扶養義務」の4項目が履歴書様式例から削除されました。性別欄の任意化ばかりが話題になりましたが、実は他にも項目が変更されていたのです。このように、国のルールや基準も、その時代に合わせて変わってきています。

採用時に聞いてはいけない意外な項目とは

厚生労働省のリーフレットによれば、「本人に責任のない事項」や「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)」は、そもそも本人の適正・能力とは関係ないこととされ、面接で尋ねることやエントリーシートへ記載させることに対して注意するよう呼び掛けています。本人に責任のない事項としては「本籍・出生地」、「家族」、「住宅状況」、「生活環境・家庭環境」、本来自由であるべき事項としては「宗教」、「支持政党」、「人生観・生活信条」、「尊敬する人物」、「思想」、「社会運動」、「購読新聞・雑誌・愛読書」などが挙げられています。

この中でも、家族に関するものは、面接時の緊張を和らげるために会話の糸口として聞いてしまうケースが多いようです。実際に、2019度のハローワークの調査によれば、応募者から「本人の適正・能力以外の事項を把握された」と指摘があったもののうち、実に4割以上が家族に関するものとなっています。採用基準とするつもりがなく尋ねた場合であっても、その回答内容によっては採用決定に影響を与える可能性も出てきますので注意が必要です。

また、この中でも比較的使われがちな質問項目が「尊敬する人物」や「愛読書」です。これらは、その人の考え方や何に関心を持っているのかを知るために、しばしば使われる項目ですが、これも思想や信条に関係する質問であり、本来自由であるべきものとして、就職差別に繋がるおそれがあるとされています。応募者が自ら話題にする分には問題ありませんが、採用側から聞くのは避けた方が良いでしょう。

人事担当者だけではなく現場にも周知する

注意したいのは、これらの情報を人事担当者だけが把握しておくのでは不十分だということです。採用活動においては、インターンシップや先輩社員との面談・座談会を行う企業も多くあり、現場の社員と応募者が接する機会が増えています。これらの活動は、採用には直接関係ない場合も多いですが、応募者からしたら「何か少しでも採用に関係しているのでは」と思っても不思議ではありません。

特に、これらのイベントはざっくばらんな交流を目的にしていることもあり、雑談の一環として、家族についてなど、よりプライバシーにかかわることを話題にしてしまうことも多いです。そのため、応募者と接する可能性のある社員にも、応募者に尋ねるべきではない質問について考え方を浸透させておくことが大切です。

採用選考時に聞くことが不適切な内容は、当然、入社後にも聞くことが不適切であることが多いです。そういった観点でも、現場への周知をした方が良いのは言わずもがなです。

価値観や働き方の変容などにより、今までは問題なかったことが問題になってしまう、ということを、皆さんも肌で感じていることと思います。これは採用活動にも当てはまります。採用選考は、応募者がその会社の社員と初めて接する場所であり、その時の対応やイメージが、そのまま会社のイメージに繋がることも多いです。その時代に合った公正な採用活動が行えるよう、情報を常にアップデートしておきましょう。

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