成長を支援するか、辞めていくのを傍観するか。組織全体で「キャリアを育む」カルチャー作り!(2020年8月29日刊行)
『会話からはじまるキャリア開発』ビバリー・ケイ/ジュリー・ウィンクル・ジュリオーニ/佐野シヴァリエ有香・訳(HUMAN VALUE)

キャリア開発にとどまらず、カンバセーションによって「日々のマネジメント」も実践!

「キャリア開発」が、リテンション、エンゲージメント、生産性、成果に大きな影響を与えることが数々の調査で明らかになっている。にもかかわらず、十分に実践できている企業は多くはないのが現実だ。それは、キャリア開発に対して、思い込みがあるからではないだろうか。

・キャリア開発に時間を割くほど余裕がない
・従業員があえてキャリアについて考えなければ、今の仕事を続けてくれる
・キャリア開発は従業員本人の責任であり、マネジャーの仕事ではない
・メンバーの昇進や昇給、異動の決定権がないと、キャリアについて話すのが怖い
・人材育成は、ハイポテンシャル人材に集中することが最も効果的である

著者は、現在のビジネスや社会の変化を踏まえて「キャリア開発」を捉え直し、メンバーのより多様で自由な成長のあり方を支援できる方法として、マネジャーとメンバーが日々の仕事のなかで短く頻繁に会話を行う「キャリア・カンバセーション」を提唱。マネジャー・メンバー間で「これまでについて」、「これからについて」、「インサイト」の3つからなるフレームワークに沿って、カンバセーションを行うための具体的な質問例が紹介されており、マネジャーのカンバセーション・ガイドとして活用できる。

キャリア開発というと、個人のスキルや強みを生かした成長や将来計画に焦点が当たりがちだが、本書では、組織の状況や業界の動きなどを踏まえ、組織と個人が共に成長し合えるようなキャリア開発のあり方を提案している。

また、最終章では、キャリア開発を、マネジャーとメンバー間の取り組みで終わらせるのではなく、組織全体で「互いの成長を支え合うカルチャーを育む」ことができるよう、様々なヒントも紹介。キャリア開発にとどまらず、1on1カンバセーションといったの「日々のマネジメントの実践書」としても有効な1冊だ。
【著者】
ビバリー・ケイ博士
キャリア・システムズ・インターナショナルの共同創始者。「職場における学習」に関する、数々の功績を認められ、Association for Talent Development(ATD)からLifetime Achievement Awardを受賞。また、共著で上梓した書籍がベストセラーになるなど、エンゲージメントやリテンションに関する彼女の知見は、現代に働く人々に実践的な戦略を提供し続けている。著書として他に、『Up Is Not theOnly Way』(2017)や『Hello Stay Interviews, Goodbye Talent Loss』(2015)などがある。

ジュリー・ウィンクル・ジュリオーニ
デザイン・アラウンズの創始者として、より良いリーダーシップや学習を通して、世界中の組織のパフォーマンス向上をサポートしている。過去には、企業の製品開発や大学教授などの経験ももつ。 キャリア開発や職場をテーマとしたコンサルティング、トレーニング、執筆活動を精力的に行い、Inc.マガジンよる「リーダーシップのトップスピーカー100」に選出されている。

【訳者】
佐野シヴァリエ有香
株式会社ヒューマンバリュー。英国立マンチェスター大学国際開発学部修士課程修了。働く人々がその人らしく周囲と関わり、チームや仲間とともに価値を生み出していくプロセス支援や研究活動に取り組んでいる。
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