ベネッセグループの社内有志組織「One Benesse」が、8月1日(土)にアルムナイ交流会「こんなところにベネッセ人! 最前線で働く人がローカルの魅力を語り尽くす」を開催した。「One Benesse」は、ベネッセグループの有志が立ち上げ、企業理念「Benesse=よく生きる」の実現を目指している。同組織はベネッセグループのアルムナイと現職をつなげるコミュニティも立ち上げ、定期的にアルムナイ交流会を企画している。今回の交流会のテーマは「ローカル」。今、テレワークの普及に伴い、場所の制約を受けない「地方」での就労がこれまで以上に注目されている。地方移住、地方からのテレワークが増えつつある今、人事担当者が地方で働く動機やメリットについて知っておくことは、従業員や求職者の新しい働き方として受け入れたり、入社後の新たなキャリアパスとして提示したりするうえでの参考になるだろう。本記事では、実際に地方で働く登壇者が語る「地方に移住したきっかけ」や「地方で働く魅力」などについてダイジェストで紹介する。
ベネッセグループの社内有志組織「One Benesse」が、7〜8月にかけてシリーズで開催しているベネッセアルムナイ交流会。今回は、「地方」をテーマに、ベネッセグループの現職とアルムナイ合わせて4名が登壇した。現職からは、株式会社直島文化村代表取締役社長 笠原 良二氏。アルムナイからは、株式会社STUDIO K 代表取締役 中島 秋津子氏、NPO法人アニマシオン理事 茂木 諭子氏、地域おこし協力隊 門口 礼氏の3名が参加した。

今回、モデレーターを務めるのは、今回の交流会を企画したベネッセアルムナイのNPO法人e-Education副代表 坂井 健氏。冒頭、イベントの主旨について、「いま地方で働く人が増えており、ベネッセの卒業生も、地方で活躍している方が多くいます。地方で働くベネッセアルムナイのキャリアについて紹介するとともに、地方の魅力についてもお届けしたいと考え開催しました」と語った。

内閣府が2020年6月に実施した調査によれば、東京23区に住む20代のうち、地方移住に関心があるという回答は35.4%だったという。新型コロナウイルス感染拡大を機に、テレワークが普及しており、地方で働くことへのハードルが下がってきているといえる。そのため、地方での就労に対する関心が、これまで以上に集まっている。人事担当者も地方での就労にまつわる情報をインプットしておくことは、従業員や求職者の新しい働き方として受け入れたり、入社後の新たなキャリアパスとして提示したりするうえでの参考になるだろう。

移住のきっかけは「ライフイベント」から「地方への関心」まで様々

イベントの序盤では、各登壇者が地方で働くきっかけ、地方に移住した理由について紹介した。

笠原氏は、株式会社直島文化村で代表取締役社長を務めている。現在、香川県の瀬戸内海に浮かぶ直島に勤務。美術館や宿泊施設を展開するベネッセアートサイト直島の運営に携わっている。ベネッセに入社後の数年間は名古屋で働いており、ベネッセの新規プロジェクトの立ち上げを機に直島へ異動。いわゆる「転勤」がきっかけで笠原氏は地方に移り住んでいる。

中島氏は、デザインや商品企画などを手がける株式会社STUDIO Kで代表取締役を務めており、現在鹿児島で働いている。鹿児島には「結婚」をきっかけに移住したそうだ。

茂木氏は、学童を運営するNPO法人アニマシオン理事を務めている。もともと東京で仕事をしていたが、「出産」を機にUターンし、地元の栃木で現在働いているという。

門口氏は、これまでの三者のライフイベントとは異なるきっかけで地方に移住している。門口氏は小学生や中学生が放課後に過ごすコミュニティの場を作る地域おこし協力隊に参画し、現在、福島県に勤務。もともと地方には興味がなかったという。地方へ長期出張した際の人とのふれあいによって、徐々に地方に興味を持つようになったそうだ。「サイクリングの途中に寄ったラーメン屋さんで、店主自ら水筒に水を入れてくれたんです」と地方で人の優しさに触れたエピソードを語る。都会にはないコミュニケーションが新鮮に映ったようだ。

その後、地方に関するイベントに積極的に参加し、福島県で開催された「ローカルで一歩立ち止まり、人生の方向性を考える」をテーマにした学習プログラムが転機となる。「都会にはないゆっくりとした時間を過ごすことができ、人生を見つめなおすことができました」と当時のイベントを振り返り、地方の魅力を門口氏は話した。そして、イベントに訪れた際に、地域おこし協力隊の募集をたまたま見かけ、福島県への移住を決意したそうだ。

「地方」での就労に注目が集まっているなか、門口氏のように、転勤やライフイベント以外で、地方に魅力を感じて移り住む動きは、今後も加速していくだろう。

地方で働くことでインプットの時間や機会が増える

イベントの後半では、モデレーターの坂井氏が、地方で働くことに関心を持つビジネスパーソンが増えていることに言及し、登壇者の4名に地方で働く魅力について尋ねた。

門口氏は、「時間の使い方」に地方ならではのメリットがあるという。それは、生活に余白が生まれることで、本を読む機会が増えたり、人生をどうやって生きていくか考えたりできる点だ。例えば、東京では休日に多くのイベントが開催され、遊びに出かけたり誘われたりする機会が多く、門口氏のように自分の時間を確保できないこともある。地方であれば、ゆったりとした時間が流れるなか、読書の時間を確保できたり、自分の人生を見つめ直したりでき、自分のキャリアにプラスとなる行動を増やすことができる。

「地方には出会いの機会が都会よりある」と話すのは茂木氏。人と人との距離が近いことで、例えば都会では交流の機会がなかった職種の方とコミュニケーションを取ることができる。「学童を建てる際に大工さんと知り合う機会があったのですが、東京だと技術職の方と交流できる機会はそうそうないと思います」と茂木氏は語る。地方では人とのつながりが重視され、紹介などで新たな気づきや発見をもたらせてくれる多種多様な人間と顔を合わす機会は多い。偶然の出会いがもたらすインプットが、新たなイノベーションを生むヒントになるかもしれない。

中島氏は、地方で働くやりがいについて言及する。住み続けることで、「自分の居場所というものができた」と語る。移住した当初は、鹿児島は縁もゆかりもない土地だったに違いない。移住後に現在の会社を起業し、実績を残していく過程で、中島氏は徐々に地元の顧客と関係を構築していったそうだ。今では、多くのお客さまから期待される声をもらい、中島氏は喜びを感じている。地方に移住していなければ、このやりがいは味わえなかっただろう。

笠原氏も中島氏同様、地方でしか経験できない仕事の醍醐味について話す。住民、行政、企業との距離が近いのが地方の特徴だ。距離が近い分、まめに進捗状況の確認ができ、プロジェクトが前に進んでいるのもすぐ把握できる。別の組織に属しながらも一つのコミュニティにいるような感覚でお互い仕事ができるため、「都会にはない達成感が地方にはあります」と笠原氏は語る。

結婚や出産といったライフイベントだけでなく、地方に魅力を感じ移住を決意するビジネスパーソンが増えてきている。現在はテレワークが普及しつつあり、地方への注目はこれまで以上に集まっている。ライフイベントで地方へ移り住むにしても、地方に魅力を感じて移住するにしても、会社を辞めるという選択をする従業員は多いのではないだろうか。地方で暮らしながら働ける選択肢があれば、従業員だけでなく、人材確保の観点から企業側へのメリットも大きい。テレワークを活用するといった新たな働き方の受け入れを整備したり、場所に捉われないキャリアパスを提供したりできれば、従業員のエンゲージメントも高められるだろう。また、地方ならではの人と人のつながりから、新たなアイデアを吸収する機会も多い。地方で働く従業員がイノベーションを起こすヒントを得て、例えば離れた土地からでも組織に貢献することだってできる。地方での就労は、人材確保やエンゲージメント、イノベーションといった側面から、従業員と企業双方にメリットがありそうだ。
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