百戦錬磨の経営リーダーにも先が見えない、予測不能なVUCAの時代――。答えも、定石もない現場の最前線で日々奮闘する中堅若手人材の成長なくして、企業の成長はありえません。加速する経営環境の変化に適応し、激化する競争を勝ち抜いていく。そうした企業ではほぼ例外なく、中堅層の活性化が進んでいます。彼らの仕事ぶりを見れば、その組織の「強さ」が分かるといっても過言ではないでしょう。
一方で、期待値が高いだけに、人事の方々からは自社の中堅社員に関する不満や悩みを聞くことも少なくありません。会社としても、若手の時期は育成に力を注ぐものの、それ以降は一人前の戦力と見なすがゆえに“放置”しがち。教育機会の不足から、中堅が本来の力を出し切れず、若手と管理職との谷間でくすぶっているとしたら、それは組織にとって大きな損失です。
そこで、今回は『他人事な中堅社員』を『巻き込み型リーダー』に変える、組織の未来を切り拓く巻き込み型リーダーシップ育成の4つの力についてご説明します。仕事への想いを自ら周囲に伝播させ、上司や同僚、後輩、関係部署まで巻き込みながらコラボレーションを起こし、組織成果を出す──中堅社員が「巻き込み型リーダーシップ」に目覚めるための方法をご紹介します。
「他人事な中堅社員」を「巻き込み型リーダー」に変える! ~組織の未来を切り拓く巻き込み型リーダーシップ育成の4つの力~

「若手以上、管理職未満」の中堅社員に求められる役割とは

「中堅」というと、一般的な会社組織の社歴や年代でいえば、新卒なら入社4~9年目。いわゆる“若手以上、管理職未満”の立場で、ある程度の業務は自分一人で完遂できる能力と責任を有する社員を指すことが多いでしょう。

ただし、実態としては会社によって多種多様なのが現状です。そもそも中堅社員に求められるものとは何か。中堅の現状に不満を感じるのであれば、彼らにどうなって欲しいのか。具体的にどのような役割や人材像を期待しているのか。会社によってかなり差があることも事実です。

「プレーヤーとして自分の担当業務に取り組むだけでなく、若手の指導やメンターなどの役割を担い、もっと主体的にチームに関わってほしい」
「現場全体の管理者ではないけれど、現場の中心メンバーとしての活躍を期待する」
「営業なら営業の専門性をもっと高めて、組織としての成果に貢献してほしい」

ただし、私たちが関わらせていただいている人事の方々の課題感をみてみると、各社の中堅層にいま求められているのは、現場でのリーダーシップであると思います。業務プロセスの全体というよりも、その一部や特定の範囲内でいい。中堅社員がそれぞれ“小さなリーダー”として周囲を引っ張り、成果をあげて、個々の責任を果たすことが組織全体の強さに直結すると考えられている人事の方が多いように思います。

権威や権限に頼らず、自ら働きかけて周囲を巻き込む重要性

とはいえ、「現実に、中堅社員の立場でチームを牽引するのは難しい」──そう思われる方も多いのではないでしょうか。たしかに多くの日本企業の現場には、上司が部下を、先輩が後輩を権威や権限で一方的に動かそうとする、上意下達の組織文化がいまだ根強く残っています。中堅若手はどうしても受け身に回り、仕事が他人事になりやすいのです。

しかし、ヒエラルキーに縛られた旧来型のピラミッド組織はもう機能しません。上から指示や情報が落ちてくるのを、現場の中堅・若手層がただ待っているだけでは、激化する環境変化に対応できず、ライバルとの競争に勝てないからです。そこで重要になるのが、中堅・若手が自ら動いて、周囲を積極的に巻き込む能力。権威・権限に頼らないこの新しいリーダーシップを、私たちは『巻き込み型リーダーシップ』と呼んでいます。
「他人事な中堅社員」を「巻き込み型リーダー」に変える! ~組織の未来を切り拓く巻き込み型リーダーシップ育成の4つの力~
上司、同僚・後輩、他部署などとの個別の関係性や立場・役割の違いにとらわれることなく、むしろその垣根を自ら積極的に取り払い、一つのワーキングチームとして機能するように働きかける。それが、中堅社員に求められる「巻き込み型リーダーシップ」のイメージです。

とはいえ、ただやみくもに周囲を巻き込み、組織をあらぬ方向に迷走させてしまうわけにはいきません。中堅社員が巻き込み型リーダーシップを発揮する上で大切なことは、『何のために巻き込むのか』という視点を中堅社員に持たせることです。

目指す方向性は、あくまでも会社がかかげるミッションやビジョンの上にあります。その共通の目的・目標を実現するために、自分は『こうしたい』『これをやりたい』という“意思の軸”を明確に打ち出し、周囲に仕事への想いや使命感を伝播させなければなりません。周囲から共感を得ることで、他のメンバーにも当事者意識が生まれ、やる気に火が付いていく。これが“巻き込む”ということなのです。

意思の軸が確立され、共感が得られれば、上司の顔色をうかがう必要もない。むしろ、理念実現のために特定の業務を担う一つのシステムとして、上司や関係部署はもちろん、場合によっては社外の取引先やクライアントまで巻き込んでいくケースも考えられます。

巻き込み型リーダーシップの「コア+4つのドライバー」

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