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働き方改革 実現への切り札とは? 〜インセンティブ制度がもたらす企業と社員のWin-Winの関係〜

第1回 働き方改革関連法案いよいよ可決か?

株式会社ITセールスアカデミー 代表取締役 北川裕史
2018/01/30

第二次安倍政権下において第一回「産業競争力会議」が開催されてから早5年が経とうとしている。その間、「未来投資会議」、「働き方改革実現会議」に場を移して議論されてきた労働規制緩和、いわゆる「働き方改革関連法案」も2017年3月に実行計画が作成され、いよいよ大詰めを迎えつつある。しかしながら、野党も独自法案の提出を検討しており、安倍総理も「通常国会は働き方改革国会」と宣言していることから、まだまだ先は長そうだという印象は拭えない。
HRプロをご覧の皆様は既にご存知かと思われるが、労働基準法の改正案は、以下の通り。
(1)労働時間の上限規制
(2)60時間超特別割増の中小企業適用解禁
(3)年次有給休暇時季指定義務
(4)フレックスタイム制改正
(5)企画業務型裁量労働制拡大
(6)高度プロフェッショナル制度

上記法案の施行は、平成31年4月を目指してきたが、一説によると1年程度遅れるとの見通しもあるようだ。
また、現時点の「働き方改革実行計画」の検討テーマは以下の通り。
(1)非正規雇用の処遇改善
(2)賃金引き上げと労働生産性向上
(3)長時間労働の是正
(4)柔軟な働き方がしやすい環境整備
(5)病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障碍者就労の推進
(6)外国人材の受け入れ
(7)女性・若者が活躍しやすい環境整備
(8)雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の充実
(9)高齢者の就業促進

どれも基本的な考え方である「働く人の視点に立った働き方改革」に沿ったテーマであり、これらが実行されると、雇用機会の拡大やワークライフバランスの確保、子育てや介護との両立など、労働者にとって働きやすい環境の実現が期待できそうだ。

しかしながら、企業側にとってのメリットは何なのか?これで社員が本当にやる気に溢れ、企業の競争力が向上するのかと、疑問に思うのは筆者だけだろうか?

そもそも働き方改革が議論され始めたのは、日本の経済再生へ向けた「日本再興戦略」の一環である。
2012年の労働生産性は米国の3分の2の水準にあり、先進7か国中最下位という当時の現状から脱却するために、日本企業に古くから根付いた「多くの時間を働いた人が多くの報酬を得る」といった習慣から、「時間ではなく仕事の成果で賃金を払う“脱時間給制度”」を導入することで労働生産性の向上を目指していたと理解している。

「残業代ゼロ法案」と野党やマスコミに叩かれた「高度プロフェッショナル制度」も、昨年の7月に条件付きではあるものの日本労働組合連合会と合意に至ったと報じられたが、対象となるのは全労働人口の0.5%程度であり、大きなインパクトはない。
むしろ、罰則付きの「残業上限規制」や「同一労働同一賃金」が、重い足かせとなって経営者にのしかかる。
この規制の中で、生産性を向上し、企業ないしは日本の産業競争力を向上させることが本当に実現できるのか?
議論が長くなればなるほど、本来の目的を見失ってしまうことはどんな会議にでもありがちだが、上記実行計画の目的は見失っていないにせよ、目的が反れているような印象を持ってしまう。
今までさんざん議論されてきたテーマは、労働時間や労働環境が中心である。
ご覧になられた方も多いと思うが、2017年12月18日の日本経済新聞では、「働き方改革602社調査」が1面および第二部にて特集が組まれていた。
「スマートワーク経営」と定義された調査は、法案は可決されずとも経営者の意識が高い企業は、既に対策を講じて多くの成果を上げているということを物語っている。
対策のほとんどは、労働時間や労働環境を改善しているもので、仕事を減らしたり目標管理を明確にすることで生産性を向上させようという試みも見られるが、給与体系を見直している例は見当たらない。
人はなんのなめに働くのか?もちろん報酬を得るためである。労働時間を短縮し、生産性を向上させた結果、それがどのような報酬で還元すべきかという議論が全くなされていないが故に、そういった対策を講じている企業もほぼ皆無であるといった状況だ。

いくら余暇の時間が増えようとも、収入が減ってしまうと、余暇を充実させる金銭的な余裕もなくなってしまうのではないか?
筆者が属するIT業界においては、IT技術者約500人に行ったアンケートでは、休暇の取りやすさ、労働時間に対して不満があるのはそれぞれ全体の33.4%にとどまっているが、給与に対する不満は過半数の53.6%となっている(「IT人材白書2017」より)。これは仕事にやりがいさえ感じていれば、多少の長時間労働は覚悟の上だということだろうか?私の知りうる限り、ほとんどのIT企業は残業手当をきっちり払っている。それでも給与に対する不満が多いのは、そもそも時間に対して支払われていること自体への不満の表れではないかと考える。
報酬は、個人の業績に応じて適正に支払われるべきものだ。そう言われると2000年代初頭に失敗した「成果主義」連想される方もいらっしゃるかもしれないが、失敗には必ず理由がある。現に多くの外資系企業では「成果主義」が普通に運営され、日本企業と比較しても多くの業種で高い収益性を示している。
米国並みの労働生産性を目指すのであれば給与体系も欧米並みに充実させないと、業績が高い社員ほど給与に不満を持って去っていくことになりかねない。

今こそ、2000年代に「成果主義」は何故失敗したのかをしっかりと振り返り、日本に合った形での給与体系の変革を検討すべき時期ではないかと考える。

次回は、かつての「成果主義」の失敗の原因を探り、今後あるべき給与体系とはどのようなものであるかをお話ししたい。
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プロフィール

株式会社ITセールスアカデミー 代表取締役 北川裕史

1985年日本アイ・ビー・エム(株)入社。保険、銀行、エネルギーなど大手企業の担当営業を歴任。また、ガースナー政権下のBPR推進スタッフとして、営業プロセス改革、スペシャリスト制度、組織編制、キャリア・パス、給与体系など、ありとあらゆる営業系の新制度導入や改善の企画を担当。
2000年から(株)独立系ITサービス企業に転職、システム開発、ソフトウェア販売、コンサルティング、BPOなどの新規事業立ち上げを担当。2004年から営業人財育成事業を立ち上げ、数多くの大手IT企業の営業力強化に尽力。
2016年にIT業界に特化した営業人財育成企業として、株式会社ITセールスアカデミーを設立。営業研修をはじめ、プロフェッショナル制度の導入、裁量労働制とインセンティブの導入による新しい働き方と給与体系の在り方をIT企業に提案。年間の登壇日数は100日を超える。

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