大企業だから内定辞退率が低いわけではない

採用活動では、採用人数が多くなれば、内定を出した学生のすべてが承諾してくれるケースのほうが少なく、ある程度の辞退が出ることを見越して、採用計画数よりも多めの内定を出すことが一般的です。では、その割り増し分はどの程度でしょうか。2025年卒採用において、採用計画数に対して出した内定の割合について聞いたところ、全体では「1.0倍(採用計画数と同じ)」が41%で最も多く、次いで「1.2倍程度」26%、「1.5倍程度」23%と続きます[図表2]

従業員規模別で見ると、大企業では「1.2倍程度」が37%で最も多く、次いで「1.0倍(採用計画数と同じ)」(33%)となっています。中堅企業でも最多は「1.2倍程度」の33%ですが、僅差で「1.5倍程度」(31%)が続き、「1.0倍(採用計画数と同じ)」は28%と3割以下となっています。一方、中小企業では採用人数が少ない企業も多く、「1.0倍(採用計画数と同じ)」が54%と半数を超え、次いで「1.5倍程度」(20%)、「1.2倍程度」(14%)となっています。

採用計画数に対して「2倍以上」(「2.0倍程度」と「2.5倍以上」の合計)の内定出しを行っている企業の割合を見ると、大企業(11%)が中小企業(12%)とほぼ変わらないことに驚きを隠せません。大企業においても新卒採用に苦戦している企業が少なくないことを物語っています。
[図表2]2025年卒採用における採用計画数に対する内定出しの割合
“複数内定を取得した学生が多かったから、内定辞退が増えた”との声をよく耳にしますが、内定辞退率の実態はどうだったのかを確認したところ、全体で見ると、内定辞退が1人も出なかった「0%」が26%と約4分の1、「10%未満」が15%、「10~30%未満」が20%で、これらを合計した「内定辞退率3割未満」(以下同じ)は61%と6割を超えます[図表3]。逆にいえば、「内定辞退率3割以上」が4割近くあるということです。この傾向は、前回調査とほぼ同様の結果となっています。

従業員規模別に見ると、内定辞退率は内定者数の影響が大きいため、「0%」の割合は内定者数の少ない中小企業が最も高く、44%と4割を超えます。ただ、前回調査では、中小企業の「0%」は56%と半数を超えていましたので、大きく減少していることになります。他方、中堅企業では14%(前回比3ポイント減)、大企業は7%(前回と同じ)と1割未満にとどまります。「10%未満」の割合では、大企業30%に対して、中堅企業17%、中小企業6%と従業員規模が大きいほど高い割合となっています。

一方、内定辞退率「100%」を見ると、大企業では0%なのに対して、中堅企業3%、中小企業では10%と1割に達しているなど、従業員規模による差異が見られるものの、「内定辞退率3割未満」で比較すると、大企業63%、中堅企業58%、中小企業62%となっているとともに、「内定辞退率7割以上」(「70~90%未満」~「100%」の合計)で比較しても、大企業7%、中堅企業9%、中小企業10%と、従業員規模による大きな差異は見られません。内定辞退率に限っては、大企業だから低いということは一概には言えなさそうです。大企業同士での熾烈(しれつ)な獲得競争の結果だと推測されます。
[図表3]2025年卒採用における内定辞退率

「より高い志望度の他社から内定を得た」以外の内定辞退...

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