2013年末に実施した採用担当者を対象とした2016年新卒採用動向予想調査の結果を紹介する。面接選考開始時期では、新スケジュールの8月以降とする企業はわずか1/3にとどまった。

新スケジュールに賛成の企業は14%

「2016年新卒採用動向予測調査」結果報告

2016年新卒採用からの新スケジュール(採用広報開始:3月1日、選考開始:8月1日、内定開始:10月1日)についての意見を聞いたところ、「どちらとも言えない」とする企業が42%もあったものの、「賛成」はわずかに14%にとどまり、「反対」が44%と大幅に上回る結果となった。

図表1:新スケジュールに賛成? 反対?

それぞれの主な理由は以下の通り。

【賛成】
・どんどん前倒しになると、学生が落ち着かない。
・以前にもそのくらいのスケジュールで動いていた時期があるわけだからできないことはないと思うし、今のように3年生のうちから採用活動をはじめるということの方が異常ではないかと思うので賛成です。
・各社がインターンシップによる早期囲い込みを行う事は確実で、そうなれば学生と企業のミスマッチが減る。
・短期決戦でだらだらと採用活動を長期化する必要がなくなる。
・内定から入社までのフォロー期間(コスト)を減らせる。

【反対】
・スケジュールが変わったところで、学業への取り組む姿勢が大きく変わるとはあまり思えない。
・企業側、学生側にも負担がかかる。(企業担当者も他の業務を抱えている。学生も卒業研究で忙しい。)
・外資など時期を守らない企業がある以上、何の意味もない。
・10月→12月に変わった時にもいろいろと問題があったのに、なぜ同じ轍を踏むのか。遅らせる事について、企業側も学生側もメリットはほとんど無いと考えている。
・2か月で選考して、10月1日の内定式に間に合わせることは、物理的に不可能。
・そもそも新卒一括採用という考え方そのものがグローバルに対応できていない。
・メーカーなので、夏休みとぶつかる。理系採用が中心なので、研究多忙時期と重なる。
・ルールを守らない企業との差が広がる。また学生が企業研究を行う時間が減り、大企業がさらに優位化し、中小企業は不利となる。学生の内定率も減ると思う。

大学との関係強化がより重要に

「2016年新卒採用動向予測調査」結果報告

2016年新卒採用でより重要になると思われる施策を聞いたところ、トップは「自社セミナー・説明会」で42%、次いで「学内企業セミナー」40%、「キャリアセンターとの関係強化」が38%と僅差で続く。4位には「インターンシップ」と「就職ナビ」が24%で並ぶが、トップの3つの施策との開きは大きい。「学内企業セミナー」もキャリアセンターとの関係性が求められ、よりキャリアセンターとの連携を重視していることになる。

図表2:2016年新卒採用でより重要になると思われる施策

インターンシップによる囲い込みが激化必至

新スケジュールに関連してどんなことが起こるかを予想してもらった。

・インターンシップという名の早期会社説明会の増加。
・インターンシップが本来の目的と乖離して採用の囲い込み活動になってしまう。
・インターンシップに呼び込むための業者の合同企業説明会が増える。
・コネクションや水面下による青田買いなどが進み、中小企業にはより厳しい環境となる。
・就職活動に対する意欲に個人差がかなり大きく出そう。
・大手が遅れることで、中堅・中小企業で内定辞退が出てしまう。
・OBなどを介した学校への水面下での活動。
・いつまで採用活動を行なうのか、学生・企業双方が止め時で混乱する。
・このまま景気が上向けば、実態としては遅くならないことが想定される。
・スケジュールを遵守しない企業が続出する。
・学生1人が受験する企業数が減少する。そのため短期決戦となる。
・採用活動がより過密になり、選考期間が短くなり学生の獲得競争が激しくなると考える。また、就職活動期間が短くなるため、未内定学生が増える可能性がある。
・時間がないため、面接など人物を見るための時間がさくことが難しく、有名校へのかたよりが進行しそう。
・中小企業の採用が、より厳しくなる。

インターンシップ実施企業の急増

「2016年新卒採用動向予測調査」結果報告

2016年新卒採用向けインターンシップの実施予定を聞いたところ、実施を取りやめる企業は1%にとどまり、新たに実施する企業が10%となった。「実施しない」とする企業は39%。
企業規模別にみると、1001名以上の大手企業では、18%もの企業が新たに実施するとしている。「未定」の企業が24%あるものの、「実施しない」としている企業は20%にとどまり、最大で80%の企業がインターンシップを実施する可能性があることになる。

図表3:2016年卒向けインターンシップの実施予定

インターンシップを選考に活用する企業が増える

「2016年新卒採用動向予測調査」結果報告

インターンシップを選考に活用する予定かどうかを聞いたところ、選考のステップとして「インターンシップ参加者だけを選考対象とする」企業は4%と少数派ではあるものの、「インターンシップ参加者のうち、優秀な学生は考慮する」とする企業が45%にも上る。インターンシップを応募の必須条件にするわけではないが、インターンシップ参加者のうち、気になる学生については3月以前にも何らかの接触を持つなど、通常ルートとは異なるフォローをすることになるであろう。

図表4:インターンシップを選考に活用するか

選考解禁日前に選考開始企業が2/3に

「2016年新卒採用動向予測調査」結果報告

2016年新卒採用の面接選考をいつから始めるかを聞いたところ、新しい解禁日である「8月」とする企業は24%、「9月以降」の10%と合わせても34%と全体の1/3にとどまることがわかった。その他の時期で多かった回答は、これまでと同様の「4月」が18%でトップ、次いで「3月」の10%となった。新スケジュールになろうが、現在と変わらないスケジュールで進めるという企業が多いようである。
企業規模別にみると、1001名以上の大手企業では「8月」とする企業が46%あるものの業態による差は激しく、非メーカーではわずか30%にとどまる。

【調査概要】

調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2013年12月17日~12月26日
有効回答:504社(1001名以上 84社, 301~1000名 1637社, 300名以下 257社)

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