HR総合調査研究所が2012年12月に「中途採用に関するアンケート調査」を実施した。日本の労働市場の流動性は低く、特殊である。日本人の多くが、正しい働き方とは新卒で入社し定年まで勤め上げることだと思っている。企業も人材自前主義であることが多い。その一方で多くの若者が転職するし、定年までの幸せを約束できる企業は少ないだろう。そういう経済環境の変化に見合う職業観は定着しているのかどうか? そのような問題意識を前提にして報告したい。

新卒採用重視が多いが、小規模企業は中途にも軸足

日本には「プロパー」という和製英語がある。本来の意味は「正しい」「適切な」「本来的な」という形容詞だが、日本では「生え抜きの正社員」という意味で使われることが多い。「生え抜き」=新卒採用が重視されていることが「プロパー」という言葉に反映されているように思える。
 さて実態はどうなのだろう。そこで新卒と中途のいずれを人材採用で重視するかを訊いてみた。
 まず規模別のデータを紹介しよう。「1001名以上」と「301名〜1000名」では「新卒採用を重視」が4割を超え、「中途採用を重視」は1割前後と低い。ところが「1〜300名」はかなり違っており、「新卒採用を重視」は33%と低く、「中途採用を重視」は19%である。
 どの企業規模でも新卒採用を重視しているが、小規模の企業は中途採用に軸足を置かざるを得ないと言うことだろう。

図表1:人材採用の方針(企業規模別)

中途採用に見る景気動向

2012年中にどの程度の企業が中途採用で人員を補充したのだろうか?
 全体では78%の企業が中途採用している。最も多いのは「301名〜1000名」の企業であり、「1001名以上」が続く。「300名以下」は72%とやや低く、全体の78%より6ポイントも低い。リーマンショック前以上の人材ニーズと呼ばれる中、中小企業での景気回復感は大手企業よりも遅れていることが原因と考えられる。

図表2:2012年に中途採用を実施したか(企業規模別)

前年よりも増えた2012年の中途採用

今回は2012年に採用した人数を前年比で調査したが、かなり多くの企業が前年以上の中途採用を行ったことがわかる。また「増えた(2倍以上)」「増えた(2倍未満)」から「減った(5割未満)」「減った(5割以上)」を引いてみると、業種、規模を問わずに増えているが、唯一「1001名以上」の非メーカー系だけが純減になっている。しかし全体から見ると雇用意欲は旺盛のようだ。

図表3:2012年の中途採用数(正社員)の前年との比較(メーカー系)
図表4:2012年の中途採用数(正社員)の前年との比較(非メーカー系)

新卒と異なり、本人の意欲と経歴、スキル本位で選考される中途採用

新卒採用の採用基準は人間力、ポテンシャル、コミュニケーション能力など判然としないが、中途採用のモノサシは明確でわかりやすい。最も重視されるのは「職務経歴」と「スキル」、そして「人柄」と「熱意」である。さらに付け加えれば「仕事の成果」と「志望動機」がある。そしてこれらの項目はどの業種、どの企業規模でも同じ順位で並んでいる。
 「学生時代の専攻」は1%とゼロに近い。もっとも新卒でも事務系採用で学部学科は問われない。学生時代に学んだことをこれほど無視する国は世界でもまれだろう。
 「学歴」も4%とほとんどないに等しい。新卒採用では、「ターゲット校」「学歴フィルター」と呼ばれる学歴格差が存在するが、中途採用では関係ない。今回の調査結果を読むと、学生は就活で頑張るよりも身の丈にあった企業に就職し、スキルを身につけてステップアップを狙った方が効率的のように思える。

図表5:中途採用(正社員)の選考で重視すること

業種で異なる「強化したい職種」

中途採用で拡充したい職種はメーカー系では「技術・研究」が45%でトップ。2位は「営業・販売」で41%。この2職種が他職種を大きく引き離している。
 非メーカー系では、「営業・販売」が49%で トップ、2位は「IT・システム」29%。3位は「技術・研究」(16%)だ。業種を問わず、経営、マーケティング、財務・経理、人事・総務などのスタッフ職の拡充意欲は低い。

図表6:中途採用によって強化したい職種(メーカー系)
図表7:中途採用によって強化したい職種(非メーカー系)

中途採用で強化したいのは中堅と若手

中途採用によって強化したい職位は業種、規模を問わず1位は「中堅」の60%、2位は「若手・第二新卒」の46%だ。3位の「係長・主任」は低くなり24%、4位は「次長・課長」の15%だ。
 職位を年齢に当てはめると、20台から30代初めまでは転職しやすいが、40歳に近づくとむずかしくなると読める。

図表8:中途採用によって強化したい職位

業種や有料・無料で異なる中途採用の手段

中途採用の募集メディアについてはメーカー系と非メーカー系で微妙な差がある。利用度が高いのは「転職サイト」「自社ホームページ」「ハローワーク」「人材紹介」の4手段だが順位が異なる。メーカー系の順位は「人材紹介」→「ハローワーク」→「自社ホームページ」→「転職サイト」だが、非メーカー系の順位は「転職サイト」→「人材紹介」→「ハローワーク」→「自社ホームページ」である。
 メーカー系は確実に採用できる「人材紹介」を優先し、次に確実に求職者がいる「ハローワーク」を利用している。非メーカー系は有料だが手軽に利用できる「転職サイト」を利用しているように見える。
 「自社ホームページ」はメーカー系でも非メーカー系でも4割だが、補助的な手段だと思われる。他の手段で求人情報を知った求職者により詳細な情報を伝えるために掲示しているものと考えられる。
 グラフは掲示しないが、有料手段と無料手段の利用は企業規模により大きな違いがある。「転職サイト」「転職情報誌(有料)」などの利用は、大手→中堅→中小の順で低くなっている。
 その一方で無料の「ハローワーク」は中堅・中小企業の利用度は高く、大手企業の利用度は低くなっている。とくにメーカー系で顕著である。

図表9:中途採用(正社員)の採用手段(メーカー系/非メーカー系)

メーカー系の満足度が非メーカー系を上回る

2012年の中途採用の結果に対する満足度を訊いた設問では、企業規模別の違いは少なかったが業種による差異があった。
 メーカー系は「量・質ともに満足できる応募状況だった」が23%だったのに対し、非メーカー系では19%と低い。また「量・質ともに満足できる応募状況ではなかった」はメーカー系では38%だが、非メーカー系では40%だ。その差は小さいが、メーカー系の満足度が高い。

図表10:2012年中途採用募集の応募状況(メーカー系)
図表11:2012年中途採用募集の応募状況(非メーカー系)

85%が課題を感じ、最大の課題は「求めるレベルの応募者が少ない」

中途採用に関する課題について訊いたところ、「とても感じている」と「まあまあ感じている」を合わせると全体の85%になった。ほとんどの採用担当者が課題を感じているということだ。
 もっとも大きな課題は「求めるレベルの応募者が少ない(76%)」ことだ。「応募者の数が少ない(36%)」「ターゲット外からの応募が多い(35%)」「「専門性が高く、対象者自体が少ない(22%)」もかなり多いが、いずれも「求めるレベルの応募者が少ない」と同義だ。
 費用や社内の受け入れ体制も頭痛の種だ。「求人広告、紹介手数料予算がかさむ」は23%ある。「中途採用者向けの研修が確立していない」は13%、「採用後の定着率が悪い」は7%である。育てる体制がないからせっかく採用した人間が辞めていく。解決しにくい問題だ。

図表12:中途採用における課題を感じるか否か
図表13:中途採用の課題

スピード重視でミスマッチ退職を回避する工夫

中途採用での採用担当者はさまざまな工夫を凝らしている。まずはスピード。
●「できるだけ短期間で結果が出るようにしている」(輸送機器・自動車、1001名〜5000名)
●「スピードを重視し、応募から内定出しまでを1週間以内にするようにしている」(教育、1001名〜5000名)
●「スピード。在職者に対しては日程的柔軟性」(その他サービス、101名〜300名)
●「選考スピードを上げるために、普段から現場とその上司の方々に採用の重要性を説いている」(フードサービス、501名〜1000名)。

 次にミスマッチの回避。新卒採用と同種の施策が多い。
●「最終判定の前に、Webでの適性検査を実施している」(その他メーカー、1001名〜5000名)
●「年収や労働条件などの厳しい項目についても正直に伝えて、長期的に就業していく意思があるかどうかを判断していただくように工夫している」(その他サービス、1001名〜5000名)
●「面談を実施し、フォロー研修等もおこなっている」(人材サービス、101名〜300名)
●「全国どこの拠点の中途採用でも、新卒採用と同様、最終選考は社長面接をしている。遠方の拠点より来社してもらう際は、交通費(新幹線or飛行機)を支給している」(情報サービス・インターネット関連、101名〜300名)
●「ミスマッチをなくすように複数回の面接」(商社(専門)、101名〜300名)
●「ミスマッチのないように、新卒と同じ感覚で選考や内定出し後の交流会などを開催しています」(教育、101名〜300名)
●「2次面接実施による意思確認の強化」(保安・警備・清掃、301名〜500名)
●「受験資格の明確化、筆記試験と面接試験、適性検査の実施」(百貨店・ストア・専門店、301名〜500名)
●「ミスマッチを回避するため、補充要請部署の責任者を面接官に加えている」(その他メーカー、501名〜1000名)。
 応募者の質を高めるために「社員の紹介」を重視する企業が多く、退職者を出さないために入社後の教育や福利厚生の充実を上げる声もある。

【調査概要】

調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2012年12月14日〜12月27日
有効回答:511社(1001名以上 84社, 301〜1000名 182社, 300名以下 245社)

この先は、会員の方だけがご覧いただけます。会員の方はログインを、会員でない方は無料会員登録をお願いします。

HRプロ会員の方はこちらから

まだ会員でない方はこちらから

登録無料!会員登録された方全員に 「人材育成マニュアル」をプレゼント!

HRプロとは