「2014年度新卒採用に関するアンケート調査」結果報告の第2回は、採用活動の実態にフォーカスし、学内セミナー参加大学数の増減、個別企業セミナーの開始予定月、選考面接の開始予定月、ソーシャルメディア対応、ホームページのスマホ対応、そして年明けからの採用課題について報告する。

学内セミナー参加数で鮮明になったキャンパス重視の採用姿勢

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【2】

学内セミナーへの参加校数の増減では、どの企業規模でも「増えている」が「減っている」を大幅に上回っており、全体では「減らす」は5%に過ぎないが「増やす」は31%と6倍である。
 ターゲット校を設定する企業の割合は増えており、その施策の中心が大学対策であることを考えると、それを裏付ける結果となっている。これまでは、大学からの呼び掛けに応じる形で学内セミナーに参加していた企業が、自らターゲット大学に対しては学内セミナーへの参加を打診するケースが増えている。
 2013年卒採用では、学内セミナーへの参加校を「減らす」が9%、「増やす」が26%だったから、2014年卒採用ではさらにキャンパス重視の採用姿勢が鮮明になっている。

図表1:学内企業セミナーに参加する大学数の前年比較(全体)

規模の差が大きい個別企業セミナー開始時期

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【2】

企業の採用活動は、12月1日から就職ナビや自社採用ホームページからのプレエントリー受け付けや合同企業セミナーによる母集団形成から、次段階は個別企業ごとの企業セミナー・説明会へと進み、適性検査やエントリーシートを経て、選考面接へと進んでいく。企業セミナーと選考面接の実施時期は採用戦略の要である。もっともすべての企業にベストの時期があるわけではない。業種、規模や立地、そして知名度などを勘案して総合的に決定する。結果として規模による違いが大きい。今回の調査でも規模の差が顕著である。
 11月以前に企業セミナーを実施する企業はどの規模でもごくわずかだ。しかし採用広報が解禁になる12月になると「1001名以上」では24%が開始する。「301名~1000名」や「1~300名」ではまだ10%にとどまっている。
 1月は後期試験があることから、セミナーの開催可能日が少なく、どの企業規模でも1月から始める企業は2割を切っている。
 そして、2月に入ると企業セミナーの開催は急増する。「1001名以上」では41%、「301名~1000名」で33%が開催し始める。しかし「1~300名」は25%にとどまっている。
 11月以前から2月までの開催を累計すると、「1001名以上」では84%、「301名~1000名」では62%、「1~300名」では53%が実施する。そして3月に入ると、「1001名以上」で6%、「301名~1000名」では19%、「1~300名」では16%の企業がセミナーをスタートさせる。「1~300名」でも7割の企業においてセミナーが開催されることになる。

図表2:自社の個別企業セミナー・説明会の開始時期(企業規模別)

選考面接の開始予定月で「未定」が多い「1~300名」の企業

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【2】

選考面接の開始予定月でも企業セミナー開始予定月と同じような傾向が読み取れる。さすがに採用広報が始まる12月に面接する企業はほとんどないが、1月になると1割を切るとはいえ選考を開始する企業がある。
 選考開始のピークは4月だが、3月以前に選考面接を開始する企業は「1001名以上」で59%、「301名~1000名」で51%、「1~300名」で42%ある。
 4月になると一気に選考は進み、「1001名以上」では92%が選考をスタートしているが、「301名~1000名」では81%にとどまり、「1~300名」になると70%しか選考に入っていない。
 注目したいのは「1~300名」の「未定」の多さだ。さきほどの企業セミナーの開催時期で「1~300名」の「未定」は16%だったが、選考面接の開始についても「未定」は14%と高い。

図表3:選考面接の開始予定月(企業規模別)

現時点では広がりを欠くソーシャルメディアの活用

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【2】

2013年卒採用では、企業側でfacebook採用ページの開設の動きが広がったものの、学生の利用は騒がれたほどの広がりは見せなかった。さて2014年卒採用での2012年12月末段階ではどうどうだろうか? さっそくソーシャルメディアの利用状況を確認してみよう。
 結論から言うと、飛躍的に利用が進んでいるわけではなさそうである。全体の8割が採用活動にソーシャルメディアを活用しないと回答している。活用する企業が使うソーシャルメディアで最も多いのはfacebookの19%で、次いでTwitterと続くがわずか4%に過ぎない。「ソーシャルリクルーティング= facebook」と言ってもよさそうである。YouTubeは2%、LinkedInは1%、mixiを活用している企業はなかった。

図表4:採用活動のために活用するソーシャルメディア(全体)

手放しで喜べるほどの採用効果がないfacebook

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【2】

ソーシャルメディアの中で採用活動で最も使われているのがfacebookだが、では2013年卒採用でfacebookサイトを利用した企業はどのようにソーシャルメディアを評価しているのだろうか?
 ソーシャルメディアについては「双方向コミュニケーションなので素晴らしい」とプラスイメージで語られることが多いし、実際に使っていても楽しいし便利である。しかし、採用活動での利用では、どうやら手放しで喜べるほどの効果はなさそうに見える。
 「効果が認められたので継続する」とする企業は21%に過ぎない。「効果が認められたが、手間等を考えると継続は難しい」は1%。「効果あり」とする企業は2割強しかない。
 「効果は認められないが、継続する」は28%であり、おそらく「時間が経てば効果が出てくるかもしれない」という期待があるのだろう。「効果は認められないので継続は難しい」は6%。合わせて34%が効果なしと判定している。
 「継続するかどうか現時点では分からない」とする企業も多く24%もある。「その他」も20%と多い。いったん導入した採用施策は継続されることが多いが、facebookに関してはどうも尻込みしているように思える。

図表5:2013年新卒採用でfacebookサイト利用企業の今後の方針(全体)

facebookのメディア特性を活かさず、採用効果がないのは当然

前項でfacebookが即効的な採用効果が得られる魔法の杖ではないことがわかった。テレビにしろ新聞にしろ、メディアの形式ではなく、コンテンツによって人は利用し評価する。そこでfacebookサイトで発信している内容や活用法について訊いてみた。
 コメントを読んで感じるのはfacebookというメディア特性を活かした活用をしている企業がとても少ないことだ。
 「学生とのコミュニケーションに有効な内容を投稿する。ナビを止めた当社にとって、リアル以外での重要なコミュニケーションツールとして活用している」(食品、501名~1000名)、「ナビよりもラフな情報(飲み会やクラブ活動、社員の日常)を掲載し、学生に共感しやすいサイトにする。同時に、動画や社員紹介で会社情報を増やし、理解度向上を目指す」(情報処理・ソフトウェア、301名~500名)、「学生に社風を知ってもらう、というコンセプトで運営しているので若手社員に記事を書かせています」(その他メーカー、301名~500名)などと工夫している企業はごくわずか。
 大半は「会社情報、イベント情報、採用担当者のコメント」「リクナビの人事ブログと連動させているだけ」「セミナー案内、拠点紹介、社員紹介」「就職サイトと同内容」「身近な採用情報を提供する」「就職サイトの内容に加え、直近の社内ニュース等を掲載」「ホームページに掲載するほどではない、社員やイベントの紹介、ホームページ更新情報などを発信している」「会社のニュース、トピックス」「基本情報のみ」などホームページのおまけ的な扱いだ。これでは採用効果に結びつかないのは当然だろう。

スマホの対応の採用ホームページは1割

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【2】

スマートフォンは急速に普及しており、今年に全人口を母数にした普及率で過半に達するのは確実である。若者への普及はさらに進んでおり、大学生の大多数がスマホを使っていると考えていい。そして就活でもスマホをメインに採用ホームページにアクセスする学生が多数派である。そこで採用ホームページのスマホ対応が必要になる。とくにiPhoneはFlashコンテンツを視聴できない。
 ところがスマホ対応している企業はいまだに少ない。全体の51%が「スマートフォン向けの採用ホームページを作成するつもりはない」と回答しており、「スマートフォン向けの採用ホームページを作成した」企業は10%に過ぎず、「スマートフォン向けの採用ホームページを作成する予定」の企業も7%しかない。そして「スマートフォン向けの採用ホームページを作成することを検討中」も25%。
 規模別に見ると大企業ほどスマホ対応が進んでおり、小さい企業ほど取り組みが遅れている。

図表6:採用ホームページのスマートフォン対応(全体)

グローバル採用に積極的な大企業

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【2】

外国人や日本人留学生のグローバル採用が進んでいる。今回の調査で「外国人/留学生の採用予定はない」と回答した企業は全体で51%だった。逆に言えば半数の企業はグローバル採用する意欲を持っていることになる。
 ただ小規模ほど採用意欲は低く、「1~300名」で「外国人/留学生の採用予定はない」と回答した企業63%に上っている。
 グローバル採用にはさまざまな形態があり、採用予定の多い順に「日本の大学のいる外国人留学生」→「海外大学にいる日本人留学生」→「短期留学していた日本人学生」→「現地の大学にいる外国人学生」となる。いずれの形態でも最も採用意欲が高いのは「1001名以上」であり、続いて「301名~1000名」「1~300名」と、企業規模に順じている。

図表7:外国人/留学生の採用予定(企業規模別)

年明けからの採用課題は「ターゲット採用関連」が上位

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【2】

「年明けからの採用課題」について訊いたところ、多いのは「ターゲット層の選考への誘導方法」37%、「会社説明会における採用戦術」35%、「ターゲットとしている大学の母集団が不足している」31%の3つだった。他の項目は20%以下なので、この時期の人事の関心が直近の企業セミナーと、ターゲット層の選考へ誘導であることがわかる。
 「年明けからの採用課題」の項目として「リクルーターや面接官のコミュニケーショントレーニング」を入れたが9%と最も低かった。少し残念に思う。
 というのはHR総研の調査で、リクルーターや面接官の印象によって学生の志望度が大きく変わることがわかっているからだ。面接を選考の場としてしか捉えていない企業が多そうである。面接は学生の志望度を上げる場であるとともに、内定受諾へ向けてのクロージングの場でもある。まともにリクルーター教育、面接官教育に取り組む企業が少ないことは、非常に残念である。

図表8:年明けからの採用課題(全体)

企業の3/4が求人票を活用

「2014年度新卒 企業採用動向アンケート調査」結果報告【2】

求人票の提出意向を訊いたところ、「前年と同程度」が49%で最も多いものの、「前年以上の数の大学に提出」が15%、「前年は提出していないが、今年は提出する」が4%と、2割近い企業が求人票をより積極的に活用するとしている。
 一方、「前年より絞った数の大学に提出」は7%、「今年は提出しない」はわずか1%と少ない。学内セミナー同様に、求人票の活用においてもキャンパス重視の採用姿勢がうかがえる結果となった。

図表9:求人票の提出状況(全体)

【調査概要】

調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2012年12月14日~12月27日
有効回答:511社(1001名以上 84社, 301~1000名 182社, 300名以下 245社)

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