前回に引き続き、HR総合調査研究所(HRプロ)が実施した、企業、大学、学生に対する調査結果をもとに、2013年新卒採用を振り返るとともに14年新卒採用へ向けての動向を見てみる。
内定学生の活動継続意向やそれぞれが考えるあるべき採用広報開始時期などについてレポートする。

ばらつく内定ピーク時期

選考の開始時期は2~4月に集中したが、内定出しは集中していない。3年間のデータを比較する。11年卒から12年卒にかけて大きな変化があり、11年卒では文系のピークは4月であり、前半15%、後半28%、合わせて43%だ。ところが2012年卒では、4月前半と後半を合わせても22%と半減した。そして「6月以降」が11年卒の18%から12卒では34%と増えた。13年卒も12卒と同じ長期化傾向が続いている。
理系は文系ほど極端ではないものの、同じ傾向が続いている。

図表1:文系の内定ピーク時期(予定)

「2013年新卒採用 中間総括レポート」【2】

大学クラスで異なる内定取得状況

学生の内定状況は、大学クラスでくっきりと分かれている。旧帝大クラスと早慶クラスでは7割以上が内定を取得している。つづいて上位国公立大クラスと上位私大クラスが5割以上の学生が内定を取得している。
それ以外の大学の学生は苦戦している。その他国公立大クラスと中堅私大クラスの学生の内定取得率は3割台であり、3人に1人が取得。その他私立大学では、内定取得者は4人に1人しかいない。
上位校の学生は、内定取得率だけでなく複数内定取得率も高い。

図表2:内定社数(文系)

※「みんなの就職活動日記」は、比較的就職意識の高い学生の登録比率が高く、学生全般の傾向値よりもやや高めの数値となる。あくまでも大学クラス間の比較として参照。

「2013年新卒採用 中間総括レポート」【2】

内定学生は就活を終了する割合が増大している

内定学生のうち、他の企業への就活を継続する学生はどれくらいいるのだろうか? 13年卒の内定学生で就活を継続する学生は、文系で42%、理系で20%いる。ただし昨年と比べると急減している。昨年の就活継続学生は文系57%もいたし、理系でも29%いた。
減った理由として考えられるのは、12年卒ではまだ選考を開始していない大手企業も数多くあり、5月、6月選考企業へもチャレンジしてみるという学生が多かったことであろう。4月に内定が集中した11年卒と比べれば継続学生は増えており、企業の内定出しが遅れていることがわかる。

図表3:内定学生の就活継続意向

「2013年新卒採用 中間総括レポート」【2】

未内定学生の多くは「卒業して新卒枠の就職活動」

大卒無業者が社会問題になっているが、就職先が決まらなかったらどうするかを、未内定学生に聞いてみた。最も多いのは「卒業して新卒枠での就職活動を継続する」で、文系39%(昨年36%)、理系32%(昨年31%)である。「卒後3年以内は新卒扱い」という厚生労働省の指針を信じてのものであろうが、既卒者の再チャレンジはきわめて厳しいと言わざるを得ない。
就職留年制度を導入している大学も多いが、学生も文系で20%、理系で18%が就職留年を選んでいる。理系の場合は進学が26%と多いが、理系だからできることで、文系では8%と少ない。

図表4:未内定学生の進路意向

「2013年新卒採用 中間総括レポート」【2】

一方、企業が既卒者に内定を出したかどうかを見たのが図表5だ。まだ選考途中の企業もあり、内定者はまだ増える可能性はあるものの、すでに内定者が出た企業は6%しかない。すでに選考結果の出た企業の中で既卒者の内定者がいる企業は1/3もなく、現在選考中の企業での割合も同程度だとすると、内定者に既卒者が含まれる企業は全体の1割に満たない。「卒業して新卒枠で就職活動を継続する」学生にとっては、今年以上の狭き門になることは明白である。卒業までに何としても内定を取得して、とにかく社会人としてのスタートを切ることが大事である。

図表5:既卒者の内定状況

「2013年新卒採用 中間総括レポート」【2】

学生のスマホ利用率は7割前後

これからの採用活動で重要性が増すのがスマートフォン対応だ。学生はスマホを愛用しており、文理ともに7割前後の学生が愛用している。この調査データは昨年12月に行ったものだから、現在の普及率はもっと高くなっているだろう。都市部では9割に達しているとも言われている。
利用目的はメールだけではない。就職ナビや採用ホームページの閲覧や説明会予約などにも使っている。
ところが企業は、そういう学生のスマホ利用に対応しておらず、スマホ対応の採用ホームページを作成している企業はわずか5%に過ぎず、6割の企業は「スマホ対応の採用ホームページを作るつもりはない」と回答しているが、14年卒に向けては再考してもよいだろう。

図表6:スマートフォン利用状況

「2013年新卒採用 中間総括レポート」【2】

SNS利用率とFB採用ページ閲覧企業数

13年新卒採用は「ソー活元年」と言われ、facebook採用ページを作っている企業は1000社とも言われている。実際に学生は就活にSNSを使っているのだろうか?
結論から言えば、誰もが使うほどにはまだ普及していない。文系で47%、理系に至っては64%が使っていない。

図表7:就職活動で使っているSNS

「2013年新卒採用 中間総括レポート」【2】

SNSの利用目的では情報収集が多い。とくに「友人との情報収集」がもっとも多く、文理ともに65%前後に達している。facebookの使い方のひとつに同じ大学や高校の卒業生探しがある。この機能を使えば志望企業の大学OB/OG探しが可能だが、文理ともに10%程度に過ぎない。
企業のfacebook採用サイトはあまり見られていない。文系の44%、理系の65%が見ていない。見たことのある学生もあまり積極的に閲覧しておらず、「1~3社」の学生は、文系の35%、理系の28%だ。
これらの調査データを見る限り、facebook採用ページ開設の必要性はまだ低い。ただしfacebook利用者は増加し続けており、来年は大きく変わっている可能性もある。

図表8:閲覧したfacebookの採用ページ

「2013年新卒採用 中間総括レポート」【2】

採用広報開始日~企業と学生は10月解禁を支持、大学は12月

2カ月遅れの採用広報開始について、企業・学生・大学の意見を聞いてみよう。
12月1日開始に対し企業と学生は否定的だ。12月を支持する学生と企業は、それぞれ15%に過ぎず、3割以上が10月開始を支持している。また3年生の9月以前を支持する学生が14%もいる。総じて学生は早期から活動したがっているように見える。
大学はまったく異なる見解だ。9月以前の開始を希望する大学は皆無に近い。10月支持は19%だが、12月支持はそれを上回る22%だ。また4年生4月開始も17%となっている。3年生2月を望む声も多いが、1月の試験が終わってから採用広報を開始して欲しいという意味だ。大学人として学生の勉学という理念を重視している姿勢が読み取れる。

図表9:あるべき採用広報開始日

「2013年新卒採用 中間総括レポート」【2】

存在感が増す学内企業セミナー、ついに就職ナビを抜く

14年新卒採用の広報活動で注力するものを聞いたところ、これまでずっとトップを守ってきた「就職ナビ」が2位となり、「学内企業セミナー」がついにトップとなった。しかもその差は10ポイント以上の開きがある。就職ナビによる「広く浅い」広報活動から、ターゲット校に対する「狭く深い」コミュニケーションによる広報活動に軸足が大きく動いてきている。

図表10:2014年新卒採用の広報施策で特に力を入れるもの

「2013年新卒採用 中間総括レポート」【2】

【調査概要】

■企業調査
調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:WEBアンケート
調査期間:2012年4月20日~5月2日
有効回答:520社(「300名以下」276社、「301~1000名」157社、「1001名以上」87社)

■学生調査
調査主体:楽天「みんなの就職活動日記」(協力:HR総合調査研究所)
調査対象:就職活動中の大学生・大学院生
調査方法:WEBアンケート
調査期間:2012年4月23日~5月2日
有効回答:3,910名(文系2,301名、理系1,609名)

■大学調査
調査主体:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:全国の国公私立大学キャリアセンター・就職部
調査方法:調査票を郵送してFAXにて回収
調査期間:2012年4月16日~4月26日到着分
有効回答:279校

この先は、会員の方だけがご覧いただけます。会員の方はログインを、会員でない方は無料会員登録をお願いします。

HRプロ会員の方はこちらから

まだ会員でない方はこちらから

登録無料!会員登録された方全員に、特典資料をプレゼント!

HRプロとは

  • 1