HR総研:「2019年卒学生 就職活動動向調査」(3月調査)結果報告 vol.2AI選考に否定的な学生たち

今回も前回に続いて、3月下旬にHR総研が楽天「みん就」と共同で実施したアンケート調査から、今年の学生の意識を探ってみたい。
2回目の今回は、優秀な学生が内定を取るイメージが強い企業、昨年から徐々に広がりつつあるAIを活用した採用活動に対する学生の思いについて見ていきたい。

断トツでトップの伊藤忠商事

就職情報会社が発表する「就職人気ランキング」は、学生本人が「ここに行きたい」「入社したい」と考える企業を反映したものである。そのため、業績や事業の方向性だけでなく、採用計画数が増えれば、自分の入社可能性も高まると考え、ランキングが上がったりすることもある。それに対して、今回の調査は自分の志望とは関係なく、「優秀な学生」しか入社できないと思う会社を1人1票で投票してもらった。その得票数トップ10の企業を紹介するとともに、理由も見ていきたい。
断トツのトップは、「伊藤忠商事」。2位、3位の企業との得票差は大きく、ダブルスコアに近い。文系だけでなく、理系でもトップの得票数だった。伊藤忠商事を選んだ理由を読むと、「有名」と「優秀」という言葉が目立つ。また、雰囲気の良さなど、好感度があるため競争率が上がり、入るのが難しいと思っている学生もいるようである。
・有名人気企業だから(神戸大学・文系)
・大手商社でも特に有名な気がするから(成城大学・文系)
・総合商社は倍率がかなり高く、中でも伊藤忠商事はトップレベルの優良企業と聞くので、優秀でないと入れないと感じるため。学歴だけでもかなり絞られると思う(学習院大学・文系)
・商社はバリバリ仕事していそうなので、学生時代にやってきたこともすごそう(東京大学・理系)
・総合商社自体のハードルの高さ。そしてその中でも人材の質が高いのが伊藤忠商事(中央大学・文系)
・5大商社の1つであり、人事の方の雰囲気の良さや仕事内容の充実度で学生人気が高く、社会人からの評価も高いため(近畿大学・文系)

[図表1] 優秀な学生が内定を取るイメージが強い企業

同じ総合商社でも伊藤忠商事とはかなり異なる評価の三菱商事

2位には、同じ総合商社の「三菱商事」が入った。就職人気ランキングでは総合商社の人気が高いが、今回のランキングで5大商社の中でトップ10に入ったのは、伊藤忠商事と三菱商事の2社だけである。三菱商事を選んだ理由で目立つのは、「財閥系」と「エリート」という言葉。入社までの道のりが難関だと感じる学生も多い。伊藤忠商事とはかなり異なる評価といえる。
・旧財閥系商社はトップ中のトップが入るという勝手なイメージがある(日本大学・文系)
・総合商社は優秀な人が多いのに加えて、三菱商事はザ・エリートというイメージがある(東京大学・理系)
・総合商社には語学力など高い能力が必要なイメージがあり、三菱商事は総合商社のなかでもトップレベルに位置しているから(北海道大学・文系)
・内定をもらった場合、蹴る人間がいちばん少ないと考えたため(慶應義塾大学・文系)
・SPIでの足切り基準が高いから(慶應義塾大学・文系)

「語学力」が優秀イメージのANA

就職人気ランキングでも人気が高い「全日本空輸(ANA)」が、ここでも3位に入った。それだけ人気があれば、優秀でないと入るのが難しいと考えるのも当然だろう。ANAを選んだ理由で目立つのは「語学力」と「倍率」。「語学ができる」=「優秀」の条件と考えている学生が多いことが分かる。
・女子学生のほとんどが憧れを抱き、就職を希望している企業だと思う(津田塾大学・理系)
・身長、語学力など、求められるものが多い(秋田県立大学・理系)
・多言語を使うイメージ(明治大学・文系)
・語学力等が問われるため(盛岡大学・文系)
・倍率も高いし、しんどい仕事なので、しっかり面接などで見極めて決めていそう(京都女子大学・文系)

過労死事件がイメージをインプットした電通

4位は電通。昨年は1位だった。東大出身の女性新入社員が、2015年12月に長時間労働やパワハラを原因に自殺した事件が大きく報道され、「東大出の女性社員=優秀学生」という図式が強烈にインプットされた電通に対し、票が集まったと推測される。
・過労死した人が東大だったから(お茶の水女子大学・文系)
・東大生が多いイメージです(大妻女子大学・文系)
・東大出身が多いイメージ(実践女子大学・文系)
・東大・京大イメージ(京都橘大学・文系)

東大が多いイメージの任天堂、倍率が高い味の素

5位以下は、社名とその理由をまとめて紹介する。
【5位】アクセンチュア
・外資系のコンサル企業であり、非常に入社難易度が高いとよく聞くため(慶應義塾大学・理系)
・コンサル業界は、学歴が高い人、なかでも頭の回転が速い人、というイメージがあったから(東京工業大学・理系)
・コンサルのトップと言っても過言ではない企業だから(早稲田大学・文系)

【6位】三菱UFJ銀行
・明治時代から3大財閥に入っていて、そのようなところは学歴を重視しそうと感じたから(金沢学院大学・文系)
・メガバンクと言われており、内定者も早慶や東大が多いイメージがあるから(東京農業大学・理系)

【7位】任天堂
・採用されている東大生が多いから(横浜国立大学・理系)
・東大出身の学生ばかり採用すると聞いたことがあるから(中京大学・文系)

【8位】日本航空(JAL)
・語学力から接客的な面まで、全体的にレベルの高い人がいるイメージがあるため(筑波大学・文系)
・語学やあらゆるものができないと入れないイメージなので(関西大学・理系)

【9位】オリエンタルランド
・倍率が高く、募集枠も少ない、と聞いたことがあるから(筑波大学・文系)
・競争率が非常に高く人気だから(新潟大学・文系)

【10位】博報堂
・大手広告会社は最難関の印象があるからです(早稲田大学・文系)
・選考を受ける学生自体、高学歴層の割合が高めな印象。かつ、博報堂で働いているサークルOBは、ずば抜けて優秀なため(東京外国語大学・文系)

【10位】トヨタ自動車
・日本を代表する企業であるため、優秀な学生が集まると感じるため(中京大学・文系)
・日本を代表するメーカーであり、効率的な生産を行うため、学生時代にレベルの高い経験をしたことが求められるので(千葉大学・文系)
・世界のトヨタだから(兵庫県立大学・文系)

【10位】味の素
・非常に倍率が高く、就職偏差値も高い優秀企業であるから(早稲田大学・文系)
・倍率が高いから」(東北大学大学院・理系)

学生はAIをどう見ているのか

ソフトバンクがIBM社のAI「Watson」を活用したエントリーシートの合否判定を導入した結果、それまで合否判定に要していた時間の75%を削減することに成功したとのニュースが駆け巡った2018年卒採用。2019年卒採用では、サッポロホールディングスも別のAI判定システムを導入するなど、AIの活用が加速している。また、いつでも、どこからでも面接を受けることができるという、AIによる面接判定サービスも普及し始めている。企業からすれば、判定に要する時間を削減することで、その浮いた時間を説明会や学生フォロー等に活用することができるだけでなく、選考基準が均一になり、従来あった担当者によるばらつきをなくすことができるなど、メリットはいくつもある。

では、一方の学生はこれらの動きをどうとらえているのだろうか。最初に「AIによるエントリーシートの合否判定」について見てみよう。文系・理系ともに約4割の学生は「どちらともいえない」と態度を保留しているが、「賛成である」と回答した学生は文系で19%、理系で25%にとどまり、いずれも「反対である」とする学生のほうが上回っている。

[図表2] AIによるエントリーシートの合否判定について

時間をかけたエントリーシートを企業も時間をかけて見るべき

それぞれの理由を抜粋して紹介する。
【賛成】
・必ずしも人間がやらなければならない作業ではないと思っているため(埼玉大学、理系)
・ある程度機械的な選抜は機械で行って、その分面接などでお話しする時間が増えるのであれば、そっちの方がいいと思うから(慶應義塾大学、文系)
・人間よりも公平な評価ができる(富山大学、文系)
・採用基準が明確化されるため。ただ会社毎の特色が出にくくなる危険性もある(北海道大学、理系)
・大手企業などは実際、ほとんど読んでいない(物理的に読めない)のだから、AIで判断しても変わらない。むしろ、大学名などで判断されないのならば、人間性を見てくれるチャンスが広がるように感じる(中京大学、文系)
・就活本からのコピペをはじくことができるから(名古屋工業大学、理系)
・エントリーシートは所詮足切りだから(東北大学、理系)
・AIで落とした人について人事担当者が再度ESを確認して合否を決めるという旨をニュースで知った為、落とされるときは結局人事の人に落とされるのであれば結果は変わらないと思ったから(横浜国立大学、文系)
・人間の気分のムラで基準が変化するよりもましかなと思う(神戸市外国語大学、文系)
【反対】
・平等かもしれないが機械には人の心がない(日本大学、理系)
・就活生が時間をかけてエントリーシートを作ったからには、企業側も時間をかけて見るべきである(大阪大学、理系)
・AIがどこまでの判断ができるのかが、不明瞭。文章の洗練さによっても与える印象は変わり、内容以外にも多くの就活生がESを最後まで推敲していると思うので、人に読んで評価してほしい(金沢大学、理系)
・機械的な判断で、測りきれない部分があると思う(大阪工業大学、理系)
・実際のビジネスは人と人で成り立つものなので、そこは人が判断するべきだと思います(慶應義塾大学、文系)
・一緒に働くのは人だから、人に判断してほしい。AIに落とされても納得できない(大阪府立大学、理系)
【どちらともいえない】
・機械的に判断すべきところとそうでないところがあるのではないか(北海道大学、理系)
・効率が良く、企業側にとってはいいだろうが、AIの判定で落ちた学生は納得できないと思う。対策方法が変わりそう(東北大学、理系)
・AIがどの程度の精度で合否を判定できるのかわからないから(北海道大学、理系)
・誤字脱字の判断くらいなら使われてもいいと思うが、機械学習で合否を決められるのならそれは同じような意見しか出せない人たちが通りやすくなり、多様性が失われると考えるため。もちろん、訓練データとして合格者のESを読み込ませるだけという手段を取らないで他の方法を考えるなら良いと思う(北海道大学、理系)
・効率はいいと思うが、受かっても落ちても何となく納得がいかない(早稲田大学、文系)

学生の書いた理由を読むと、それぞれに納得してしまう。「就活生が時間をかけてエントリーシートを作ったからには、企業側も時間をかけて見るべきである」とのコメントには反論しづらい。企業側の論理でものごとを考えがちであるが、学生の「気持ち」にも配慮することも極めて大切だと思わないではいられない。

エントリーシートよりも否定的な面接の合否判定

次に「AIによる面接の合否判定」について見てみよう。こちらも「どちらともいえない」と態度を保留した学生が3割を超えているが、エントリーシートと比較して、「反対である」とした学生が格段に多くなっていることに注目したい。「反対である」は、文系では56%と半数を超え、理系でも48%とほぼ半数に迫る。一方、「賛成である」とする学生は、文系で11%、理系でも16%にとどまる。ただ、エントリーシートにせよ、面接にせよ、「賛成」票を投じているのは文系よりも理系のほうが多く、やはりAIに対する理解や信頼は理系のほうが進んでいるということなのだろうか。

[図表3] AIによる面接の合否判定について

面接の重要な機能をどう担保するのかが課題

こちらもそれぞれの理由の一部を紹介する。
【賛成】
・自宅などから面接が受けられるのであれば、面接に行く経済的負担が少なくなるから(広島大学、文系)
・多数の応募者をさばく上では仕方ないことだと思う(立教大学、理系)
・面接官との相性とかいうくだらないものはなくなるべきだから(名古屋工業大学、理系)
・中立公正に判断してくれると考えるから(早稲田大学、文系)
・地方学生としては、わざわざ本社に行かなくて済みそうだから(京都大学、文系)
・技術開発が進み正確に判定してくれるのなら、人間より公平な選考ができるし、面接官の負担が減るから(北海道大学、理系)
・情に流されず割り切って判断してくれそう(広島市立大学、文系)
【反対】
・情も選考の対象になるべきだと思う(九州大学、理系)
・人格までは分からないと思うから(甲南女子大学、文系)
・人の与える印象もお客様という人間を相手にする上では重要になるから。能力が高いだけが全てではなく、人間らしさも重要視するべきだと考えるから(岡山大学、理系)
・一緒に働くかもしれない人間は人間に判断して欲しいと考えるから(安田女子大学、文系)
・何を基準にして機械に判断されなくてはいけないのか。企業側は採用活動に手抜きをしたいからロボットを使うのかと気になる(お茶の水女子大学、文系)
・面接をAIに任せるくらい余裕がない企業に、今後の成長や新人教育を期待できない(筑波大学、理系)
・AIの設定にもよると思うが、能力以外のところで落とされる人が増えそうだから(都留文科大学、文系)
・人を見ているとどの会社も堂々と宣言している。ならば、AIを導入するのは矛盾していると思う(慶應義塾大学、文系)
・機械に人間の感情をくみ取って理解し、それを反映させることまではまだ技術が進歩しておらず、その企業を受ける側からもあまり良い印象を与えるものではないから(同志社大学、文系)
【どちらともいえない】
・会社の目指す方向によると思う(静岡大学、理系)
・信憑性が定かではない(千葉大学、文系)
・AIの学習レベルによると思う。人間と同じ心を持ち企業基準に照らせられるなら、ありだと思う(大阪薬科大学、理系)
・AIはあくまでもロボットなので、人同士でしか分からない言葉の表現や表情を読み取るのはまだ難しいと思う。人の言葉の意図を読み取る研究が進んでおり、コールセンターへの導入などもされているため、将来的には活用してよいと思う(電気通信大学、理系)
・面接官の人手不足対策にはいいが、以前読んだ記事に1時間以上もAlによる面接が行われたと聞き、導入はまだ先延ばしした方がいいと思った(福島大学、理系)
・性格診断の最終確認などで使うことはいいとは思うが、人間同士でのコミュニケーションで感じることの方が重要だと考えるため(岐阜薬科大学、理系)
・おもしろそうだが、肌で感じる「合う・合わない」を大事にしたい(早稲田大学、文系)

企業側から見た面接の果たす役割は、もちろん自社で活躍してくれそうな人材であるかを見極めることもあるが、それだけではない。自社への応募動機を形成、あるいは強化して志望度をより高めること、これも面接が果たす大きな役割である。スマホやPC等の端末に向かっての無機質なAI面接では、この役割は果たせない。また、面接は企業が学生を見ているだけでなく、学生も同時に企業を見て確認しているわけで、学生は「合う・合わない」の感触をどこで感じればよいのか。AIを活用した選考は、まだまだ改善すべき点がある気がする。

【調査概要】

調査名称:【HR総研】「2019年卒学生 就職活動動向調査」
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査協力:楽天「みん就」
調査対象:2019年卒の大学生・大学院生
調査方法:webアンケート
調査期間:2018年3月19日〜3月26日
有効回答:802名(文系:496名,理系:306名)

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当ページのURL記載、またはリンク設定
3)HR総研へのご連絡
  ・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
  ・引用先名称(URL)
  ・目的
   Eメール:souken@hrpro.co.jp

MENU