前回は、2018年卒採用の現状を報告したが、今回は2019年卒採用、特にインターンシップにスポットをあててみたい。昨年の夏から経団連が「5日間以上」の制約をなくし「1日タイプ」のインターンシップを容認したことから、企業規模を問わず1Dayインターンシップが花盛りとなっている。果たしてその内容はどうなっているのだろうか。

夏から1Dayインターンシップが急増

HR総研:「2018年&2019年新卒採用動向調査」結果報告 vol.2

経団連の「指針の手引き」の改定の影響は大きかった。昨年実施されたインターンシップと、その前年に実施されたインターンシップの内容を比べてみると一目瞭然である。「2~3日タイプ」や「2週間以上」のインターンシップの実施割合はものの見事に変わっていない。これに対して、「半日タイプ」は13%から19%へと6ポイント伸び、「1日タイプ」は25%から40%へと15ポイントもの伸びを見せている。一方の「1週間(5日間)タイプ」は、29%から21%へと8ポイントの減少となっている。

【図表1:サマーインターンシップの実施タイプの前年比較】

「2~3日タイプ」も多い大手企業

HR総研:「2018年&2019年新卒採用動向調査」結果報告 vol.2

次に、昨年夏のインターンシップについて企業規模別の違いを見てみたい。最も際立つ違いは、大企業で「2~3日タイプ」の実施率が突出していることである。中堅、中小企業での実施率が17%、15%なのに対して、大企業では38%にも及ぶ。「1日タイプ」については、規模による差異はそれほどないとはいえ、最も多いのは大企業の43%である。前年の大企業のデータを見てみると、「2~3日タイプ」30%、「1日タイプ」22%だったことを考えると、「1日タイプ」は20ポイント以上の伸びを、「2~3日タイプ」でも8ポイントの伸びを見せている。前年までの「5日間」のプログラムを「1日」に改変するのには無理がある。「5日間」のプログラムを「2~3日」に短縮し、それとは別に「1日タイプ」のプログラムを追加したと考えたほうがよさそうである。

【図表2:サマーインターンシップの実施タイプの企業規模比較】

4段階のインターンシップ実施例も

具体的なインターンシップの内容も見ておこう。
●業界理解のシミュレーションゲーム、当社理解の実習、改善プレゼン(1001名以上、商社・流通)
●各部署に配属されたと仮定した体験型ワークショップ等(1001名以上、商社・流通)
●エンジンの新規開発企画。市場調査を行い、当社がどのようなエンジンの新規開発を行えばよいかを企画(1001名以上、メーカー)
●社内各部署での職場見学、経営課題を与えてのグループディスカッション(1001名以上、メーカー)
●自己分析型のインターン(1001名以上、サービス)
●業界及び会社概要説明、支店での業務全般、電話応対、接客対応(301~1000名、サービス)
●現場実習(約8割)及び座学(約2割)(301~1000名、サービス)
●会社説明、会社見学、グループワーク(仮想経営課題について)、先輩社員との座談会(301~1000名、メーカー)
●研究施設、工場で1週間ずつ、体験実習(301~1000名、メーカー)
●ソフトウェア開発の実務体験(300名以下、情報・通信)
●会社説明、コーディネイト体験、内定者の体験談、自己分析のヒント(300名以下、商社・流通)
●現場見学、業界レクチャー、営業同行、目的目標講座(300名以下、運輸)

複数タイプのインターンシップを組み合わせて実施している例もある。
●半日間の仕事体感インターンシップを行い、そこで興味を持った学生のみを対象に、2週間の本格的な仕事体感インターンシップを募集(300名以下、サービス)
●半日タイプで業界研究(業界紹介と将来性)、ビジネス体験ゲーム、若手社員との座談会を実施し、1週間タイプで工場見学、CAD操作、製品組み立て、若手社員との座談会を実施(301~1000名、商社・流通)

さらには、協働インターンシップと自社単独インターンシップの組み合わせている企業も。
●1.関係グループ会社9社の協働インターンシップ(2日+α) 通年で20回、2.IT企業(グループ外)3社の協働インターンシップ(1日) 8~12月で4回、3.1・2のイベント参加者向けの自社単独インターンシップ(2日) 通年で13回、4.3の参加者向けの自社単独インターンシップ(1日) 通年で6回(1001名以上、情報・通信)

ウィンターインターンシップは1Day一色

HR総研:「2018年&2019年新卒採用動向調査」結果報告 vol.2

次に、今月から来月にかけて実施されるウィンターインターンシップについて、そのプログラムタイプを聞いてみたところ、63%もの企業が「1日タイプ」と回答しており、「半日タイプ」(32%)と合わせればほぼすべての企業が1Dayインターンシップを実施するとしていることになる。「1週間タイプ」は7%、「2週間タイプ」に至ってはわずか2%しかない。サマーでは大企業を中心に多かった「2~3日タイプ」も15%にとどまり、1Dayインターンシップ一色と言っても過言ではない。

【図表3:ウィンターインターンシップの実施タイプ】

中小は「半日」、大企業は「2~3日」も

HR総研:「2018年&2019年新卒採用動向調査」結果報告 vol.2

ウィンターインターンシップの実施タイプを企業規模別に見てみよう。大企業では、「1日タイプ」(59%)の次に「2~3日タイプ」(32%)が多くなっている。経団連の「指針の手引き」では「5日間以上」の制約は外れたものの、「インターンシップ本来の趣旨を踏まえ、教育的効果が乏しく、企業の広報活動や、その後の選考活動につながるような1日限りのプログラムは実施しない」との文言は残っており、抵触しないよう「2~3日タイプ」のプログラムにしている企業も少なくないと思われる。
一方、中小企業では、「1日タイプ」(55%)が最も多いのは他の企業規模と同じであるが、次に多い「半日タイプ」の割合が45%と他の規模と比較すると突出している。採用スタッフが少ない中では「1日」拘束のプログラムではきつい側面もあるだろうが、それよりもインターンシップとは言いながら、これまでの採用セミナーと同じか、ほぼ同内容のプログラムでの実施になっている(次項目参照)。

【図表4:ウィンターインターンシップの実施タイプの企業規模比較】

半数近くが実質的には採用セミナー

HR総研:「2018年&2019年新卒採用動向調査」結果報告 vol.2

1Dayインターンシップを実施する企業にその内容を聞いてみたところ、「採用セミナーとは全く異なる構成にしている」とした企業は56%にとどまり、30%の企業は「採用セミナーをベースに少しアレンジしている」とし、残り14%の企業に至っては「採用セミナーとほとんど同じ」としている。特に中小企業ではこの傾向が強く、「採用セミナーとほとんど同じ」が21%、「採用セミナーをベースに少しアレンジしている」が29%と、合わせるとちょうど半数になる。3月の解禁前からインターンシップを実施しないと出遅れてしまうと言われながらも、独自のインターンシッププログラムを作成する余裕もないといったところだろう。

【図表5:1Dayインターンシップの内容】

グループワーク中心の1Dayインターンシップ

HR総研:「2018年&2019年新卒採用動向調査」結果報告 vol.2

前項では採用セミナーとの違いを聞いてみたが、インターンシップ本来の趣旨である「仕事体験」の要素があるのかを聞いてみた。企業規模による差異はあるものの、圧倒的に多いのは「仕事に関連したテーマのグループワークがある」である。全体で51%、大企業に至っては73%にも上る。「実際の仕事に近いものが含まれている」とする割合が多いのは、大企業よりも中堅企業のほうである。中堅企業では、「実際の仕事に近いものが含まれている」が39%で、「仕事に関連したテーマのグループワークがある」の44%と大差はない。一方の大企業では、50ポイントもの開きがある。「仕事体験的な要素はない」とする回答が最も多かったのは中小企業で、22%にもなる。「採用セミナーとほとんど同じ」とした企業の21%とほぼ一致する。

【図表6:1Dayインターンシップの仕事体験的要素】

意外とフィードバックができていない大企業

HR総研:「2018年&2019年新卒採用動向調査」結果報告 vol.2

インターンシップの本来の目的が「産学連携による人材育成」であるとするならば、教育的効果の点からも企業から学生への“フィードバック”はなくてはならない要素であろう。実際のプログラムに、このフィードバックの要素が入っているかとを聞いたところ、大企業よりも中堅企業で進んでいることが分かった。「全員(フィードバックが)ある」とした企業は、大企業で24%なのに対して、中堅企業では43%にも上る。「(フィードバックは)ない」とする企業も、大企業が17%なのに対して、中堅企業は10%にとどまる。志望度はさておき、学生の立場からすると中堅企業のプログラムのほうが教育的効果は高そうである。

【図表7:インターンシップにおけるフィードバックの有無】

大企業のフォローは採用ホームページへの誘導から

HR総研:「2018年&2019年新卒採用動向調査」結果報告 vol.2

インターンシップに参加した学生へのフォロー内容(今後の予定を含む)を複数選択で回答してもらったところ、全体では「エントリー受付開始を案内」が40%でトップ、次いで「採用ホームページを案内」と「早期選考会を案内」が32%で並ぶ。さらに「会社・工場見学を案内」29%、「別のインターンシップを案内」28%、「OB/OG懇談会を案内」25%と続く。

【図表8:インターンシップ参加者へのフォロー】

大企業は「採用ホームページを案内」、中堅企業は「早期選考会、会社・工場見学を案内」

HR総研:「2018年&2019年新卒採用動向調査」結果報告 vol.2

インターンシップ参加者のフォロー内容を企業規模別で見てみると、規模によって対応が異なる。大企業では「採用ホームページを案内」(44%)が最も多く、次いで「別のインターンシップを案内」が「エントリー受付開始を案内」(38%)と並ぶ。中堅企業では、「早期選考会を案内」と「会社・工場見学を案内」が共に44%で、共に32%の「採用ホームページを案内」と「エントリー受付開始を案内」を大きく上回る。中小企業では、「エントリー受付開始を案内」が48%で、次点の「別のインターンシップを案内」(26%)とは20ポイント以上の差がある。

【図表9:インターンシップ参加者へのフォローの企業規模別比較】

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】2018年&2019年新卒採用動向調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2017年12月18日から12月21日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び非上場企業の新卒採用担当者
有効回答:196件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。
本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。
その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当ページのURL記載、またはリンク設定
3)HR総研へのご連絡
  ・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
  ・引用先名称(URL)
  ・目的
   Eメール:souken@hrpro.co.jp

  • 1