【提供:株式会社セルム】

 多くの企業変革の現場に関わってきたコンサルタントの皆様に、過去に出会った 組織変革(風土改革、業務プロセス改革、M&A後の組織融合etc.)の成功事例、失敗事例の 要因についてのアンケートを行い、コメントをいただきました。
 成功要因も失敗要因も、企業ごと案件ごとに様々な事情がありますが、多くの組織変革の現場を知るコンサルタントが、共通して指摘する要素も存在しました。これらが組織変革に大きく影響を及ぼす要因であると考えられます。

失敗事例では「経営者・役員の本気度の薄さ」に指摘が集中

コンサルタントアンケート「組織変革の成功要因・失敗要因」

成功要因としては、8割を超えるコンサルタントが「経営 者・役員の本気度」を指摘しました。他には、「オープンな コミュニケーション(54.8%)」「現場管理者の変革意識 (52.4%)」「変革リーダーの存在(50.0%)」などが5割を 超えるコンサルタントの指摘を集めました。
 一方、失敗要因として5割以上の指摘が集中したのは「経 営者・役員の本気度の薄さ」のみでした。失敗した案件で は、経営者・役員の本気度の薄さだけがクローズアップされて意識されたようです。組織変革の取り組みの継続のため には、経営者・役員層の理解や意思が最も影響が大きいことがここからもわかります。
 変革の成功のためには「変革のリーダーの存在や管理職 層への働きかけ、一般社員との良好なコミュニケーション 等、重層的な対応が必要(HRラボ 原井新介氏)」というコメン トに象徴されるように、経営の後押しを得た上で、複数の成 功要因を持つことが必要だといえそうです。

フリーコメントで多く指摘された「納得性」と「継続」

フリーコメントの中では、社内に変革への「納得性」を広げる必要性と、取り組みの「継続」についての指摘が多くありました。
 いくら変革の号令をかけても組織が動かない場合、その原因は社員が「上は言葉ではいうが、本当にこの変革を実行するのかどうか、わからない」と疑っているからかもしれません。例えば、過去に変革のプロジェクトの途中で方針を変えてしまったといった出来事があると、それが象徴的な出来事として組織の構成員の意識の中に蓄積されてしまっています。組織の変革とは、組織としての新しい歴史をつくることに等しい取り組みです。短い取り組みでは新しい歴史を作ることはできないということでしょう。
 「納得性」を広げるためには、変革への意思と共に、変革を行わなかった場合のリスクの理解を社内に広げることがポイントといえます。「お客様への貢献が自らの報酬の源である、という基本的な思想の徹底」という切り口も納得性の高いものだといえるでしょう。「変革には恐れや不安といった感情が伴うことにきちんと目をむけるべき」という課題意識から、本音の話し合いの場を提案する指摘も多くありました。
 また、施策やプロジェクトが分断されてしまうことによって成果が出ず、歯がゆい思いを経験したコンサルタントは多いようです。変革の成功のために「重要な変革施策を途中で
やめないこと」「何を評価すれば、どのような影響や波及効果があるかをよく考え見定めて、評価の仕組みをつくり、評価すること」等の指摘があがりました。

「ダイバーシティな環境」を選択する回答はゼロ。今後発生する課題か?

成功事例、失敗事例とも、要因として「ダイバーシティな環境」をあげる回答はありませんでした。
 まだ充分に組織がダイバーシティな環境ではないため、影響が測れないのだと考えられます。性別及び人種や国籍のダイバーシティは、現在でも進んできているはずです。しか し、新しく組織に迎え入れた人材に対して、「早くこの会社のやり方に慣れてください」と声をかけることは一般的なことでしょう。異なるやり方・考え方を、これまでの組織の価値観・やり方に合わせていく力が、まだ強く働いているのかもしれません。
 グローバル先進企業へインタビューをすると、「それぞれの国・企業・人のいいとこ取りをしてきた」という言葉が多く聞かれます。「ダイバーシティな環境」による影響をどのように活かすかは、これからの課題といえそうです。

人事に対しては強い推進力を期待

人事に対しては「担当者に組織変革に関する知見がないと、必要な施策やプロセス・期間等が制約の中で削られていき、結果的にやらないほうがよかった、という中途半端なことに終わることもあります」「抵抗勢力と対立する覚悟をもつことが必要」「経営企画室と人事部門の連携を密にするべき」といった推進力を期待するコメントが目立ちました。また「リベラルアーツ、すなわち基本ができていること。それがないと真に変化に対応できない。」「まず個々が幸せに生きることが最 大目的。」といった人事としての軸をもつ必要性についてのコメントもみられました。
 人事としての自己変革も、経営者・役員と同様、組織変革の鍵であるといえます。

アンケートフリーコメントから一部抜粋

●各領域の整合性と社員への継続的なコミュニケーションが大切です。
●半端が最もいけません。
●トップと担当役員のコミュニケーションがなく、プロジェクトの途中ではしごを外されると上手くいきません。
●問題意識の高いミドルマネジメント層が何人もおり、彼らが自発的に改革の旗振り役になったケースがありましたが、経営層からは保守的な意見が多く出て、非常に煙たがられました。
●ダブルスタンダードがない、あるいは少ないこと。
●一貫した、しかし多様な打ち手を打てていること。
●「いっちょあがり」でなく、傲り高ぶることなく常に学習する姿勢であること。
●制約条件からスタートしてしまうと、全体観や時間軸がズレ、中途半端になります。
●組織の変革には、これまでに醸成されてきた集団規範・組織風土、組織特有の認知構造を変えることが重要である。
●主力事業の開発を1年間ストップして営業機能をreinventした企業があったが、経営の勇気と現場の本気度が試されるものであったと思う。勝っている時にこそ根本をいじる勇気が改革には必要であると教えられた。
●昇進・昇格の基準(特に運用)が新たな改革の実績や取り組みを反映できない場合、改革派が「干される」というメッセージとなり社員に伝播し、改革への意欲・意識が低下してしまう。    
●変革には段階があると考えます。初期段階は、社長から担当までの誰か1人の変革リーダーシップの意識と行動から始まります。それに感化され周囲が動き出します。もちろん最後は経営者の本気が必要です。
●変革が一過性のものでなく、粘り強く継続的に取り組みが実行されている。
●5年目にして、はじめて「変化」を実感したというケースもあります。粘り強さ。
●今後ますますグローバル、多様化する組織においては、ビジョン実現にむけ(ビジョン再考)長期的に取り組む必要があると感じている。
●人事部門はやや専門職能に偏る傾向があるので、経営企画部門やマーケティング部門などと連携して、事業全体の将来を考える部門であるべきだと思います。
●人事の役割は、トップが実現する際の様々な軋轢や制度上の齟齬をいかに収めるかの知恵出し。
●PCに例えますが、OSを変える(アップデート)必要があるのか、新しいアプリケーションを入れればいいのか、を見極めることが肝要です。
●研修や人事施策で形式よりも実質・本質を重視して動くこと。
●変わる必要性の認識を植え付けること、変わるプロセスを示すこと、そのために構成員間の相互理解を深める場・機会を設けること。
●官僚制と戦うこと、自ら管理的な思考パターンとは決別すること、人事が改革の足かせになるケースは枚挙に暇がない。
●トップ、ミドル、ボトム、三層それぞれに同時並行で取り組んでいかないと上手く進まない。号令の言葉だけでなく具体的な仕組みに落としていかないと実行されない。
●リーダー陣にいい人でありたいという意識が強いと、ネガティブな感情、ネガティブな情報から逃げる。これが大きな障害となる。
●人事の役割はイノベーションを起こす価値観と具体的な仕組み、言葉づくり。仕組みとしては「提案制度、失敗コンテスト、チャレンジしたらプラス評価、チャレンジしないとマイナス評価」等があり、言葉としては「やってみなさい、意見を言うときは役職は関係ない、あなたは何を変えたか」等がある。
●立場の弱い変革担当組織メンバーや外部ファシリテーターの前では一転して牙をむくことがある。覚悟が必要。
●変革のコア人材を把握、自ら変革を担う気概の醸成。
●組織開発は、これまで手段が限定的であったために、日本企業では浸透してこなかったと考えられます。職場における継続的な可視化を通した取り組み等が有効性が高いと思われます。  
●仕掛けを考える立場の人が頑張りすぎていることもあり、この辺りのバランスが今後は重要になるような気がします。逆説的ですが、余計な口をあまり挟まない勇気を持つことも大切だと思います。
●人事部門およびコンサルタント側も「なんとなくみんなの意識が変わった」的なイベント的アプローチが多いように思われる。具体的な成果指標を定義し、成果を示しながら、制度などへも着手するなど、システマチックで継続的なアプローチをしっかりサポートして  いく必要があるのではないか。
※ 順不同

【調査概要】

調査主体:株式会社セルム
調査対象:組織開発に一緒に関わらせていただいたパートナーコンサルタント
調査方法:メールで依頼し、Webアンケートフォームで回答
調査期間:2015年12月23日~2016年1月12日
有効回答:43件

  • 1