法定雇用率2.7%時代、人事は災害時に備えられているか―MS&ADインターリスク総研が「障がい者配慮対応モデル」提供開始

MS&ADインターリスク総研株式会社は2026年9月30日、民間企業向けに提供する「災害時の安全配慮義務対応コンサルティング」を強化し、新たに「障がい者配慮対応モデル」の提供を開始したと発表した。民間企業の障がい者法定雇用率が2026年7月に2.7%へ引き上げられるなど、段階的な制度改正を背景に雇用の受け入れが広がるなか、災害時の情報伝達や避難支援を含む体制整備を後押しする。

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障がい者雇用の拡大、災害時の備えまで考えられているか

民間企業における障がい者法定雇用率は、2024年4月に2.3%から2.5%へ引き上げられ、2026年7月には2.7%へ改定された。加えて2025年4月には、除外率設定業種における除外率も引き下げられた。段階的な制度改正を経て、企業には採用人数の確保だけでなく、受け入れ後に安心して働き続けられる環境をつくることがこれまで以上に求められている。

特に地震などの災害時には、情報の受け取り方、避難指示の理解、移動・避難、安否確認などで個別の支援が必要になる場合がある。通常の防災マニュアルだけで対応できるのか、本人の状況や勤務環境を踏まえた備えになっているのか。人事・総務は、雇用管理とBCPを別々のテーマとせず、横断的に見直す必要があるだろう。

全社方針を、各現場で実行できる形に落とし込めるか

災害時の安全配慮では、本社が全社共通の方針や行動ルールを定めるだけでは十分とはいえない。実際の初動対応を担うのは、事業所、店舗、工場などの現場である。建物の構造や避難経路、勤務者の構成、シフト・時間帯などに応じて、必要な行動は異なるためだ。

同社が提供する「災害時の安全配慮義務対応コンサルティング」は、地震発生時の初動対応に関するToDoを整理し、現場で判断が求められる局面を洗い出したうえで、必要な情報、対応の選択肢、判断プロセスを整えるという。BCPを文書として整備するだけでなく、各拠点で迷わず動ける運用へと落とし込むことを狙いとする。

「誰が、どう支援するか」を平常時から共有できているか

今回の「障がい者配慮対応モデル」は、災害時に支援が必要となる場面を洗い出し、本人の特性や就業環境に応じた対応を整理するものだ。あわせて、社内で支援を担う「サポーター」の役割を明確にし、緊急時に機能する体制を設計する。

例えば、情報取得や避難指示の理解、避難行動に支援が必要な場合、誰が本人に声をかけ、どのように状況を確認し、どの手段で避難を支援するのかを事前に検討しておく必要がある。緊急時だけに対応を委ねるのではなく、平常時から本人と周囲の従業員との関係性や連携方法を整えておくことが、有事の実効性につながる。


【障がい者配慮対応モデルのBCPに組み込みたい3つの確認事項】


●本人が必要とする情報伝達・避難支援の方法を、平常時から確認できているか


●緊急時に誰が支援を担うか、本人・上司・周囲の従業員の間で共有できているか


●拠点ごとの避難経路や連絡・安否確認の手順に、個別の配慮を反映できているか


役割分担を「実際に動く手順」へ落とし込めるか

災害時の支援体制は、担当者や支援者を決めるだけでは機能しにくい。人事・総務は、本人の意向を踏まえながら、緊急時に必要となり得る配慮を確認し、連絡方法、安否確認、情報伝達、避難誘導などの手順を、拠点単位で具体化しておくことが重要となる。

例えば、音声だけでは緊急情報を受け取りにくいケース、階段や停電時の移動に支援を要するケースなどを想定し、代替の伝達手段や避難経路、対応者の不在時の引き継ぎ方法を確認する。これらを防災訓練や定期的な面談、配置転換・異動時の確認に組み込めば、特定の担当者だけに依存しない運用につなげやすい。

同社は、こうした課題への対応として、緊急時のサポーター対応を学ぶ教育動画の提供や、「自然災害時の安全配慮義務対応レベル診断」への関連項目追加を行うとしている。人事・総務は外部の診断・研修を活用する場合も、自社の拠点、就業形態、本人が希望する配慮に照らして、実際の行動手順に変換できているかを確認したい。


【公的資料に見る、職場の災害対応で確認したい視点】


高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)は、障害のある人を雇用する企業において、緊急時・防災時の対策を個々の障害特性に応じて講じる重要性を示している。


●聴覚障害のある従業員にも伝わる、光・文字・複数の連絡手段を含む情報伝達


●避難誘導を確実に行うための役割分担と、担当者が不在の場合の代替手順


●停電や通路の安全性も想定した避難経路・設備面の点検


●防災訓練を通じた、本人・上司・周囲の従業員による手順の確認と見直し


※出所:高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の労働安全衛生対策」




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法定雇用率2.7%時代を迎え、障がい者雇用は採用人数の確保だけでなく、入社後に安心して働き続けられる環境をいかに整えるかが問われる段階に入っている。災害時の安全確保は、BCPや総務だけのテーマではなく、人事が本人との対話を通じて必要な配慮を把握し、現場と連携して運用へ落とし込むべき課題だ。採用・定着支援、防災訓練、拠点ごとの連絡・避難手順を一体で点検することが、非常時にも機能する受け入れ体制につながるだろう。

●出典:民間企業向け「災害時の安全配慮義務対応コンサルティング」を強化~「障がい者配慮対応モデル」の提供で現場実装力を向上

●参考情報:高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の労働安全衛生対策」