事業戦略と人事を「仕組み」までつなげて開示、上場企業ではわずか1.6%――スタンダード・グロース2,140社の有価証券報告書を調査

組織人事総合研究所株式会社は2026年8月25日、「事業戦略と人事の整合性調査2026」の結果を発表した。同調査は、東証スタンダード・グロース市場の上場企業2,161社を母集団とし、除外企業を除く2,140社の直近の有価証券報告書における事業戦略と人事に関する記述を分析したもの。調査結果から、事業戦略と人事の仕組みまでを具体的に結び付けて記述している企業は34社、全体の1.6%にとどまることが明らかになった。

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人的資本開示は「書く」から「戦略とつなげる」段階へ

人的資本開示の取組みが企業に浸透し、人材に関する情報を開示すること自体はすでに一般化している。一方で今後問われるのは、「どのような人材を必要とし、どのような施策を講じているのか」を、事業や経営の方向性と結び付けて説明できるかどうかだろう。

人的資本開示の制度面でも、2026年3月期からは、経営方針・経営戦略等と関連付けた人材戦略や、それを踏まえた従業員給与等の決定方針について開示が求められるようになった。単に「人材が重要である」、「人材育成に取り組んでいる」と記述するだけではなく、事業戦略を実現するためにどのような人材が必要で、そのためにどのような人事施策や制度を設計しているのかまで示すことが重要になっている。

「事業戦略と人事を仕組みまで接続」はわずか1.6%に

今回の調査で組織人事総合研究所は、各社の有価証券報告書における人材関連の記述について、事業戦略との結び付きの深さを5つの型に分類している。

その結果、最も深い「D 仕組み接続型」に該当したのは34社で、全体の1.6%にとどまった。このうち、すでに仕組みとして運用している企業が27社、導入を公表している企業が7社だったという。

一方、「A 独立記述型」は827社(38.6%)、「B 言葉接続型」は460社(21.5%)、「C 取り組み接続型」は819社(38.3%)となった。また、「F 外部参照型」は該当企業がなかった。
事業戦略と人事の整合性に関する5つの型の分布

「取り組み」までは38.3%。しかし「仕組み」で大きな壁

分類結果を見ると、事業戦略と人事の関係を一定程度説明できている企業は少なくないようだ。「C 取り組み接続型」は38.3%を占めており、事業の具体的な内容を示したうえで、それを踏まえた人材の確保・育成などの取り組みを説明している企業は一定数存在する。例えば、事業で必要となる技術や市場への対応を理由として、人材の採用や育成施策を位置付けるような記述が該当するとのことだ。

しかし、そこからさらに進んで、具体的な人事制度や組織の仕組みまで事業戦略と結び付けて説明している企業は1.6%にとどまった。「この事業を進めるために、このような人材が必要である」という説明から、「そのために、この評価・報酬・等級・育成・組織設計の仕組みを採用している」といった内容まで、一貫して記述できている企業はまだ少ないことがうかがえる。

人材施策を実施しているかどうかだけではなく、「事業戦略→必要な人材→人材施策→人事制度・組織の仕組み」というつながりを示せるかが、人的資本開示における一つの課題となっている。

「人材について書く」だけでなく“戦略との接続”が問われる

今回の調査結果からは、人的資本開示をめぐる企業間の違いが、「人材について記述しているかどうか」だけでは捉えにくくなっていることも見てとれる。「A 独立記述型」が38.6%を占める一方、「C 取り組み接続型」も38.3%に達していることから、人材の重要性や人材育成について記述する段階から、事業上の必要性を踏まえて人材施策を説明する段階へと進んでいる企業も少なくないことがわかる。その一方で、最終的に人事制度や組織の仕組みまで接続して説明する企業は1.6%にとどまっている。

調査を実施した組織人事総合研究所はこの数字について、個々の企業の人事の優劣を示すものではなく、「事業戦略と人事のつながりを文書として示すこと自体が、現時点ではまだ一般的ではない」ことを示すものと説明している。

また、今回の調査は有価証券報告書上の記述を対象としているため、記載がないことが「実際にその企業で人事施策が行われていない」ことを意味するわけではない。ただし、投資家など外部のステークホルダーにとっては、文書として示されていない戦略と人事の関係を把握することは難しい。

この点は投資家だけでなく、求職者にとっても同様である。事業戦略と人材戦略、さらに人事制度までのつながりを説明できれば、「なぜこの会社で働くことが事業の実現につながるのか」という企業で働く意味を伝えることにもつながるだろう。人的資本開示は、資本市場だけでなく採用市場における企業の説明力という観点からも、重要性が増していくと考えられる。
人的資本開示の焦点は、「人材について何を書くか」から「事業戦略と人事をどう結び付けて説明するか」へと移りつつある。今回の調査では、東証スタンダード・グロース市場の上場企業2,140社のうち、事業戦略と人事の仕組みまでを具体的に接続して記述していた企業は34社、わずか1.6%だった。今後は、人材施策を個別に紹介するだけでなく、事業戦略から必要な人材を定義し、その人材を生かすための制度や組織までを一貫して説明できるかが、人的資本開示における重要なテーマとなりそうだ。

出典:事業戦略とつながった人事を記述で示せた上場企業は1.6%——東証スタンダード・グロース上場2,140社の有価証券報告書を全数調査|PR TIMES

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