「フレックスタイム制度」という名前を聞く機会が多くなりました。これには比較的、先進的な働き方というイメージがあり、「自分の会社に導入するにはハードルが高いのでは」と思っていませんか? しかし、フレックスタイム制度を導入することで、仕事の生産性や従業員の方の定着率がアップするのであれば、働き方改革の一環として検討してみる価値はあります。それでは、フレックスタイム制度とは一体どのようなものなのか見ていきましょう。
~働き方改革~今話題のフレックスタイム制を導入すれば、業務生産性と従業員の定着率がアップ?

そもそもフレックスタイム制度とは?

フレックスタイム制度とは、従業員の方が日々の始業時間、終業時間、労働時間を自分で決めることで、仕事と生活のバランスを取りやすくし、効率的に働くことができるようにする制度です。

例えば、忙しい時期は就業時間を多めに取り、比較的ヒマな時期は早く帰ることもできるようにすることで、就業時間にメリハリがつき、業務を効率的に運用できます。

その他、お子さんを保育所へ送ったり、介護の都合などで始業時間を遅くしたり、通勤ラッシュを避けるために早い時間に出社したりなど、さまざまな工夫で従業員の方が働きやすい環境を提供すれば、定着率を上げることにも繋がってきます。

では、こうしたフレックスタイム制度は、どのように導入すればよいのでしょう。

それにはまず、就業規則にフレックスタイム制度を導入する旨を記載します。10人未満の事業所では就業規則の作成義務はありませんが、この機会に作っておくことをお勧めします。就業規則には、始業時間や終業時間を、従業員の方の決定に委ねる旨を定めます。

次に、労使協定を結び、対象となる従業員の方の範囲や、清算期間などの詳細を決めます。

ここで注意したいのは、清算期間が1ヵ月の場合は労働基準監督署への届出が不要なのですが、それを超える場合は届出が必要になることです(最長3ヵ月)。清算期間とは、フレックスタイム制度を運用する際の節目のようなもので、1週間の平均労働時間が40時間以内になっているかを計算するための期間のことです。

この期間が長いと、労働時間の帳尻が合わせやすくなるため便利なのですが、同時に長時間労働の原因にもなりやすいので、清算期間が1ヵ月を超える場合は労働基準監督署に届出が必要となってくるのです。

フレックスタイム制度を運用するにはコツがある!

いざ、フレックスタイム制度を導入しても、そのままでは運用が難しいのが現実です。

その理由として、業務にはチームとしての連携が必要なため、いつも隣にいるメンバーがフレックスタイムでまだ出社していない時などに、コミュニケーションが取りづらいことが挙げられます。

解決するためには、誰がどの仕事を、どの程度進めているのかを、チームで共有する必要があります。上司だけが把握していれば良いのではなく、チーム全員がわかる仕組みを作っておくことが必要でしょう。そうすることで、取引先とのコミュニケーションも円滑に進めやすくなり、フレックスタイム制度の運用がしやすくなります。

また、「この仕事は◯◯さんしかできない」といった業務を減らすことも必要です。せっかくフレックスタイム制度を導入しても、◯◯さんがいないばかりに業務が停滞するようでは本末転倒です。業務を細分化してマニュアルを作成し、その業務をみんなができるようになれば、業務の割り振りもグッと楽になるはずです。

そして最後にお伝えしたいのは、フレックスタイム制度は、いきなり全員でスタートする必要はない、ということです。まずは、フレックスタイム制度を導入しやすそうなメンバーやチームでスタートし、運用が軌道に乗るに従って徐々に範囲を広げていくのがよいでしょう。

フレックスタイム制度は、確かに便利ではありますが、導入の仕方や残業数のカウントの方法など法律の知識が必要ですので、導入が難しい場合には社会保険労務士に一度ご相談されることをお勧めいたします。


社会保険労務士有資格者 山口善広

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