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36協定と労働時間管理

HRプロ編集部
2014/04/02

「時間外労働・休日労働に関する協定届」通称36協定をご存じだろうか。時間外や休日労働というのは、就業規則に定めておけば労働させることができるというものではなく、法定の労働時間を超えて労働(法定時間外労働)させる場合、又は、法定の休日に労働(法定休日労働)させる場合には、あらかじめ労使で書面による協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
 36協定と呼ばれているのは、労働基準法第 36 条に規定されているからだ。この協定届は、1度提出すれば自動更新とはいかないため、毎年提出することになる。つい、うっかり届出を忘れるということも実際にある。よって、会社は届出を忘れないように、1月や4月など区切りのよい月を届出時期として年間業務に落とし込んでいる場合が多い。

 就業規則の届出義務が常時10人以上の従業員を使用している事業場であるのに対して、人数に関係なく時間外や休日労働をさせる場合には36協定を締結して届出しなければならない。就業規則より適用される事業場の範囲は広いはずなのだが、36協定を締結している事業場は55.2%にとどまる(「平成25年度労働時間等総合実態調査結果」による)。
 規模別でみれば、大企業が94.0%、中小企業は43.4%で半数に満たない。
 気になることは、36協定には延長することができる時間として1日○時間、1日を超えて3ヶ月以内の間で期間を設定して○時間、1年の期間で○時間、とそれぞれ定める必要があるのだが、1日を超えて3ヶ月以内の期間については、期間を1ヶ月として、1ヶ月○時間と記載として届出している割合が全体の9割強に上る。
 時間数をみると、1ヶ月45時間としている割合が全体の70.0%、1年の期間の欄には360時間としているのが全体の76.5%。この45時間、360時間というのは、時間外労働の限度に関する基準(平成10年労働省告示第154号)による時間外労働の限度時間の上限でもある。

 実際に自社の労働時間を調査した結果が限度時間の上限程度なのであればよいのだが、限度時間の上限をそのまま36協定に書いているのであれば、社内の実態を検証もせずに、届出のために作成しているだけということになる。届出することが目的になってしまったら、はたして、36協定に記載した時間数を超えないように労働時間数を意識して管理している会社はどれほどあるのだろうか。
 これまでは、未払い残業代の問題が取り上げられることが多かったが、それに加えて現在は、過重労働による健康障害、なかでも精神疾患の増加が大きな問題となっている。
 会社には安全配慮義務(労働契約法第5条)の責任がある。この責任を尽くしていない(=安全配慮義務違反)として、労働者から損害賠償請求がなされることもある。
 会社、労働者のどちらか一方だけということではなく、労使がともに労働時間を意識して、仕事に取り組む必要性をそれぞれ自覚する必要がある。意識するきっかけとなるのが36協定でもある。
 自社の労働時間の実態を調査して、36協定には、自社の実態に即した時間外労働時間の時間数を記入したいものである。それから、労使で労働時間の削減に取り組んでいきたい。

 労働時間の削減は次の3つの視点をもって取り組んでいく。

1.法的な時短(ルールの整備)
 就業規則の整備や変形労働時間制等の導入
 適正な定額残業代の導入
 人事評価制度の導入(長時間労働イコール評価が高いの誤解)

2.管理的な時短(意識改革)
 ノー残業デーや残業申告制の導入、取引先等との発注方法、打合せ時間帯の見直し
 時間単価の高い仕事を意識させる取り組み
 仕事に締切りを設定

3.実質労働時間の短縮
  仕事の棚卸し
  主たる作業とそれ以外の従の作業の選別−優先順位の検証
  プロセスの可視化−本当に無駄な残業はないのか

 上記1〜3まで、すべてできれば一番良いのだが、まずは1の項目から取組んでいきたい。成功のカギは、どれだけ経営者主導で会社全体として取り組めるかである。すでにやっているという会社もあるだろうが、それをやりきることが大切だ。
 上記2にあげた意識改革は、あれもこれもと手を出さず、どれかひとつでもよいので、それを1年間続けることが成果につながる。
平成22年4月に施行された改正労働基準法では、1ヶ月60時間を超える時間外労働について、法定割増賃金率が25%から50%に引き上げられた。適用については、現在中小企業は猶予されているのだが、この2月に開催された労働政策審議会労働条件分科会において、その猶予措置の見直しについて議論が始まった。すぐに猶予措置が見直されるとは思わないが、いつ取り除かれてもよいように準備しておくに越したことはない。


鈴木社会保険労務士事務所 鈴木 早苗

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HRプロ編集部

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