2019年副業・兼業はより加速していく(前編)

厚生労働省は昨年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、モデル就業規則においても規定を改定するなど、副業・兼業の普及促進を行っている。2018年は一部の大企業が副業を相次いで解禁したこともあり、副業元年と言われたが、2019年はますます副業・兼業が広がりを見せていきそうだ。

副業・兼業の現状は?

株式会社リクルートキャリアの「兼業・副業に対する企業の意識調査(2018)」によると兼業・副業を容認している企業は全体の28.8%と約4分の1以上にのぼる。この数値は前年の調査結果より5.9ポイントも上昇しており、副業・兼業を認める動きが加速していることがうかがえる。

また、エン転職の2018年のユーザーアンケートによると、32%の人が副業の経験があると回答している。

一般企業に目を転じると、ロート製薬、コニカミノルタ、新生銀行、H.I.S、ソフトバンク、サイボウズなど多くの企業が、何らかの形で副業を積極的に推進するようになった。

推進する理由は企業によりさまざまだが、「社内では実現できないスキルアップやキャリア形成の支援のため」とする企業が多く、副業・兼業を通して社員の成長を促し、本業に活かすことを期待しているようだ。

あらゆる場所にインターネット環境が整備されるとともに、コワーキングスペースやレンタルオフィスなども増加し、リモートワーカーやフリーランスにとって、ますます働きやすい環境になってきている。

副業を支援する会社も増え、ホームページやアプリに、自分の経歴や興味があることや強みなどを登録すれば、簡単に仕事を紹介してもらえるようなサービスも登場している。

4月からの働き方改革による時間外労働の上限規制や有給休暇の5日間取得の義務化に加え、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、政府としても副業・兼業を積極的に推し進めていることから、2019年は、昨年以上に副業を解禁する企業が増えていくのではないかと予想出来る。

就業規則で副業を禁止していれば、従業員が希望しても拒否できるか?

では、ここで就業規則と副業の関係性について考えてみたい。それは、「就業規則で従業員の副業を禁止していれば、従業員が希望しても会社は拒否できるのか」ということだ。

過去の判例を見てみると(いずれも地裁での判決であるが)、就業規則で副業を禁止していても社外で別の業務を行ったことを容認、就業規則違反を理由とする解雇は無効である、とした判決が多い。

マンナ運輸事件(京都地裁H24.7.13判決)では、準社員が4回にわたりアルバイト許可申請をしたが、いずれも不許可とされたことに対し、「労働者は、勤務時間以外は事業場の外で自由に利用することができ、使用者は他の会社で就労するため勤務時間以外の時間を利用することを認めなければならない」として損害賠償請求の一部を容認した。

東京都私立大学教授事件(東京地裁H20.12.5判決)では、教授が無許可で語学学校の講師の業務に従事し、そのせいで講義を休講したことを理由とした懲戒解雇は有効かどうかが争われた。この裁判では、「兼職(2重就職)は使用者の権限が及ばない私生活における行為であって、兼職許可制に違反している場合であっても、職場秩序に影響せず労務提供に格別の支障が生じない程度であれば、兼職を禁止した就業規則の条項には実質的には違反しない」とし、解雇を無効とした。

都タクシー事件(広島地裁S.59.12.8判決)では、タクシー運転手が非番の日に月7〜8回ほどアルバイトをしたことが就業規則違反に当たるとして解雇されたことに対し、「会社の秩序を乱し労務の提供に支障を来たすおそれがあるものと認められず、何らの指導注意もないまま解雇をしたことは解雇権の濫用である」との判決が下った。

これらの判決を見る限り、(これらは地裁での裁判例であって最高裁での判決ではないため拘束力はないものの、)たとえ、就業規則に副業や兼業を禁止していたとしても、勤務時間外をどう利用するかは従業員の自由であって、会社は直ちに懲戒などの手段を取ることは出来ないのではないかと考えられる。

したがって、従業員の多くが副業の解禁を希望した場合は、いつまでも副業を禁止とし続けるのは難しいのではないだろうか。

ただし、それは一概に言えるようなものでもないだろう。たとえば、「毎日6時間にわたるキャバレーでの無断就労を理由とする解雇は、兼業が深夜に及ぶものであり、兼業の内容によっては企業の対外的信用、体面が傷つけられる場合もあり、労務提供上の支障や企業秩序への影響を考慮したうえでの就業規則の定めは不当とは言えない」とし、解雇を有効とした、小川建設事件(東京地裁S57.11.19判決)のような判例もある。

このような風俗業や反社会的勢力に関わるもの、また、深夜長時間に及ぶ労働などは、業務内容や労働時間などを理由として、就業規則で禁止しても問題ないと考えられる。

以上を踏まえると、企業は、従業員が副業をする場合は必ず「届出制」にし、勤務先、業務内容、勤務日数、勤務時間などを把握し、問題が起きないよう事前にしっかりと調べた上で、許可をすることが最善の策である。


スリープロス社会保険労務士事務所
代表者/社会保険労務士
葉名尻英一

著者プロフィール

HRプロ編集部

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