会社には決められた労働時間のほかに残業や休日労働があるのが一般的だろう。この時に会社が必ずやっておかなければならない手続きが36協定と呼ばれる労使協定の締結と届出だ。従業員代表に届出書面に署名捺印してもらい労働基準監督署に届け出たが、そのあと従業員代表が退職してしまった場合、どうすればよいかといった質問をよくいただく。
 ここではまず、この36協定という労使協定について簡単に説明しておこう。労使協定というのはその名の通り、労働者と使用者の間で締結される書面による協定のことで、労働基準法など法律の定めに対して、労使の合意のもとに締結すると、法律の義務の免除や罰則の適用を免れるといった効果がある。

 労働基準法では労働時間は「休憩を除き、1週40時間、1週間の各日については8時間を超えて労働させてはならない」と決められている。これに違反すると罰金や懲役といった罰則が科せられる。そこで労働時間を延長して働かせたり、休日に労働させても会社が罰せられないためには労使協定の締結が必要になるわけだ。時間外及び休日の労働については労働基準法36条に記載されているのでこの労使協定は通称「36(さぶろく)協定」と呼ばれている。労使協定には従業員代表の署名捺印が必要だが、そもそも従業員代表をどうやって決めたらよいか、表題にあげたように退職したらどうすればよいか、などそのほかにも実務的な質問の多い部分なので以下にまとめる。

◆従業員代表が退職したら?
 労使協定の従業員代表が退職してしまったことによって、協定の効力そのものがなくなるわけではない。36協定は通常1年に1回届出を行うので次回の届出の際に新しい従業員代表を選出して届出れば良い。

◆従業員代表はどうやって決める?
 従業員代表の選出方法は、労働者の話し合いなどで労働者の過半数がその選任を支持していることが明確になる民主的な手続が求められる。選出方法は協定書にも記載するが、挙手が一般的であろう。これは職場の会合などで「私がやります」と手を挙げてもらったという意味になる。事前に立候補や推薦を募り投票を行う方法もある。最近ではこれをメールで投票してもらうというようなケースも多い。これは「ネットによる投票」などと記載することになるだろう。過半数代表者の選出にあたっては、2013年4月に早稲田大学で従業員代表選挙に(就業規則の変更にあたり)に不正があったと告発された例もあるので、注意したい。

◆締結した協定は掲示する
 36協定は、掲示するなどして労働者に周知する必要がある。周知義務違反については30万円以下の罰金が科せられる。大切な書類なので、原本はしっかり保存するべきだが、労働者が閲覧できない金庫に保管し、門外不出とすることなどないようにしたい。


HRプロスクール 講師 富山節子
(株式会社ブレインコンサルティングオフィス 取締役)

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